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1章
イケメンは何をやらせてもイケメン
しおりを挟む「それじゃあ、今からAチームとBチームの試合を開始します。両者、礼!」
堕天使ちゃんへと(俺が勝手に)改名した日野さんの宣言で、俺を含めたクラスメート同士の試合が始まる。あっ、ちなみに俺はAチームです。陽キャの空気に今にも吐きそうだ……。
AチームとBチームが互いに握手を終えると、各々が事前に決めていたポジションについていく。ちなみに俺のポジションは後衛のレフトである。
ピーッという笛が鳴り、Bチームのサーブから試合が始まる。
前回の有馬との一件から薄々、気付いている読者の方もいるかもしれないが、実は俺はバレーボール経験者である。といっても、やっていたのは小学4年と5年生までだったし、5年生の夏の大会が終わったらすぐ辞めたので、実際にやっていたのは1年半である。
バレーボールは経験者な俺なのだが、こういう時にやるべきことは一つ、目立たないプレーをすることである。大きなミスをしてもいけないし、もちろん活躍してもいけない。
高校でボッチを目指している俺にとって、するべきプレーは1つ、コートの真ん中にボールを上げることである。
コートの真ん中にさえ上げていれば、まぁ、上手くもないが、下手でもないと思われて終わりである。間違ってもセッターに向かって上げてはいけない。素人目に見ても《コイツ上手いな》と思われてしまうからである。
つまり、今俺に向かってバックスピンがかかりながら、飛んできているバレーボールのレシーブする場所は真ん中なのである。
ポーン。
俺がレシーブしたボールは軽い回転がかかりながら、有馬のいる真ん中へと俺の狙い通りに飛んでいく。この時、もう一つポイントがある。間違っても回転を殺すなんて真似をしてはいけない。
回転を殺すなんて真似は経験者以外には通常、狙ってできない芸当だからである。学校でぼっちを目指している人は、しっかり覚えておこう(役に立たないライフハック)!
真ん中にレシーブしたボールは有馬によってトスされ、前衛のレフトにいた池谷君がスパイクを打つ。
しかし、池谷君がスパイクをしたボールは無情にも相手チームの大柄の男子にブロックされ、Aチームのコートに落ちる。
さっきブロックしたBチームの男の子、経験者かな? ブロックした時に見事に肩が入っていたし、そう考えて間違いなさそうだな。
それより、ホントにヤバいのは池谷君である。ステップも出鱈目なのに、無理矢理歩幅を合わせて、見事にトスされたボールを強打していた。明らかに未経験者なのに、咄嗟にボールとの距離を合わせて飛ぶ身体能力には脱帽である。
身体能力までイケメンとか、もう手がつけられない! イケメンは何をやらせてもイケメンなのか……。
「ごめん! ブロックされちゃった。次は決める!」
ブロックされた池谷君は真剣な顔でみんなにイケメン発言をしていた。かくゆう俺はというと、池谷君がいるなら目立たなくて済むかなぁ、とどうでも良い事を考えているのだった。
ーーーーーーーーーー
その後は、特に波乱が起きるわけもなく、両チーム少しずつ点を重ね、拮抗した勝負を演出している。しかし、経験者の存在は大きいのか、Bチームが先にマッチポイントを迎えるのだった。現在の得点は23-24である。
「ハァ……ハァ……次落としたら試合に負けるぞ! みんな、気合い入れていこうぜ!」
「うん!」「おう!」「ああ!」
マッチポイントということもあって、有馬がAチームのみんなを鼓舞し、それにみんなも応える。
俺? 俺はただ、ボーっと、今日終わったらコンビニでプリンでも買っていこうかなぁ、と終わった後のことを思案している。よし、セブ○イレ○ンのイタリアンプリン、君に決めた!
「よし、集中!」
有馬の声を聞き、Aチーム全体に緊張感が広がる。まぁ、ただ一人俺だけは弛緩しているんだけど……。
パーン。
Bチームの打ったサーブは後衛のライトにいた平野君の方に向かっていく。平野君は体勢を崩しながらも、なんとかボールをレシーブしたが、ボールは強くレシーブしすぎたのか、俺の頭上を越えながら相手チームのコートまで飛んでいく。
しかし、フワッと浮いたボールをスパイクしようと敵チームの後衛のセンターにいた経験者君が、アタックラインを踏み切り、勢いよく飛ぶ。
バシーンッ!
経験者君がスパイクしたボールは、俺の上をまっすぐ飛んでいこうとする。
しかし、ボーっと試合が終わった後のことを考えていた俺は……無意識にスパイクされたボールをブロックしてしまった。
手に強い感触が伝わり、俺はやっと意識がハッキリと戻る。そして、自分が今しがたやってしまったことを思い出す。
やっ、やってしまったぁぁぁぁぁ!昔取った杵柄か、無意識にブロックしちまったぁぁぁ! いかん、このままでは思い切り目立って……!
「ナイスプレー、透! お前、あんな球をブロックしちまうなんて、バレーうまかったんだな!」
俺の内心の動揺も知らず、有馬は俺に対して称賛の声を浴びせる。
「い、いいいいいいや、ぐ、ぐぐぐぐぐぐ偶然だろ!?」
「偶然でもすげぇって!」
こうして、当初の思惑通りにはいかず、思いがけず、俺は目立ってしまった。
「よし、この流れで逆転しようぜ!」
有馬がなんかみんなを鼓舞しているみたいだが、半ば放心状態の俺の耳には届かない。なんでこんなことに……。自分の軽率な行動に後悔するのだった。
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