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2章
ネコ型ロボットを呼ぶ小学五年生
しおりを挟む「おいおい、それで昨日は高嶺先輩とあれからどうだったんだよ~? 」
「だから特に何も無かったって」
「本当か~?」
今、俺に絶妙にうざい顔をしながら、昨日の高嶺さんとの事を聞いてくるのは、愛想だけは良い男、有馬翔斗であった。さっきから昨日の事についてしつこく聞かれ、俺はウンザリしていた。
おい、あんまり聞いてくるなら、鼓膜潰して一生、音を聞けなくしてやろうか(過激思想)。無音の世界は、それはそれは詰まらない世界だろう。差し入れに毎日、本だけは持っていってやるよ。
「本当の事を教えておくれよ~、透く~ん」
そんな未来から来たネコ型ロボットを呼ぶ小学五年生みたいな言い方をしても特に答える事は無い。コイツを相手にしたって良いことなんて一つもねぇな。
俺は有馬の相手をする事に疲れ、教室から出る。今は、昼休みの時間である。学生たちは皆、家から持参したお弁当や購買に食料を買い求めるものなど、様々である。有馬から逃げ切った俺はというと、朝、自分で作ったお弁当を手に持ち、人気の少ない場所を探している。
意外かもしれないが、お弁当は俺の自作である。我輩は料理男子なのである。しかし、料理男子はモテると聞いていたのだが、俺がモテる気配は一向にない。まったく……こうなったらそんなデマを流したマスコミに絶えずクレーム電話を入れてーー
閑話休題。
どこかに人気が少なくて、絶妙にジメジメしたボッチに相応しい場所がないだろうか……。
お弁当を食べる場所を求めて、さながらゾンビの様に彷徨っていると、手にお弁当が入っているであろう巾着袋を持った高嶺さんにばったりと会う。花柄の可愛い巾着袋である。クールな印象とは違い、意外とカワイイもの好きなのだろうか。
一応、挨拶しておくか……。
「こんにちは、高嶺さん」
「こんにちは、女川君。女川君は何をしているの?」
高嶺さんが澄ました顔を不思議そうな表情に変え、俺に訊ねる。
「いや~、どこかに人気が少なくてお弁当を食べられる場所を探していたんですけど、見つからなくて」
「それなら私、良い場所知ってるわよ。私に着いてきて」
俺は高嶺さんが促すままに高嶺さんの後ろをついて行く。どこに連れていく気なんだろ? まさか、人気の無い場所に誘ってお金を強請るつもりなんじゃ……。
キャーッ! 辞めて、俺の所持金は550よ。
数分後、学校の廊下を歩いていると、とある部屋の前で高嶺さんが立ち止まる。それに遅れるように俺も足を止める。部屋のドアには紙が貼られており、文字が書かれている。
なになに、歴史研究部? この学校そんな部活があったんだなぁ。俺は最初から帰宅部一択だったから知らなかったぜ。
俺がボーッと部屋の前で立っている間に、高嶺さんはスカートのポケットから取り出した鍵でドアを開ける。そして、中に入ると俺を手招きし、入室するように促す。
「さぁ、入ってちょうだい。あんまり広くは無いけど、人気は少ないし、静かにお弁当を食べるには丁度いいと思うわよ」
「はぁ、じゃあお言葉に甘えて」
促されるまま入室すると、中には難しそうな本がいっぱい並んでおり、俺なんかが読めば一瞬で頭にクエスチョンマークが浮かぶだろう事が予想される。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。元々、いつも私はここでお弁当を食べているの。歴史研究部の部員としての特権ね。でも、この部自体、活動するのは文化祭の時だけで、それ以外はあまり使われない部室だから……」
「へぇー、そんな場所に俺を誘って良かったんですか?」
「女川君だから誘ったのよ。私が今までこの部屋に誘ったのは女川君だけよ」
「はぁ、それは貴重な第一号の人間にしてもらって光栄です。これで高嶺さんの初めてを貰うのは2回目ですね」
「ちょっ……」
俺の言葉を聞いて、高嶺さんの顔が急に赤く染まる。あれ、俺なんか変なこと言っちゃった?
「どうかしましたか、高嶺さん?」
「いっ、いえ……ちょ、ちょっと言い方が気になっただけよ! さぁ、早く食べましょう!」
「そうですね」
高嶺さんの反応に何か不思議なものを感じながらも、俺は持ってきていたお弁当を開ける。箸を取り出し、お弁当に手を付ける直前で、俺はふと、気になっていた事を高嶺さんに訊ねる。
「そういえば、万引きの証言の方はどうなりましたか? 昨日は結局出来ませんでしたけど……」
「万引きの証言? ……ああ、万引きの証言ね! アレならなんとか解決したわ」
「へー、それは良かったです」
万引きの冤罪が解決できたという事を知り、俺は少し安堵する。安堵する俺を見ながら、柔らかい表情で高嶺さんは言葉を続ける。
「女川君には本当に感謝しているのよ。どうやらあの万引きの冤罪、計画的だったみたいでね。店の店員とグルで私に罪を被せようとしていたみたいで、犯行の現場も監視カメラの死角だったみたいだし、本当に女川君がいなかったら私は一体どうなっていた事か……」
「助けになれたなら良かったです。まぁ、僕がした事と言えば、見たことをそのまま言っただけですから大したことはしてませんけど」
「そんな事ないわ! みんなが私を犯人扱いする中、女川君だけは私の味方になってくれたんだもの! あの時の私にとって、女川君はヒーローよッ!」
高嶺さんは俺の目と鼻の先ほどの距離まで体を近付け、熱心に俺に話す。しかし、俺との距離が近い事に気付くと、すぐに恥ずかしそうに距離を取る。高嶺さん、結構大胆な行動を取る人なんだなぁ。人は見かけによらないなぁ。
「そう言ってもらえて嬉しいですよ。助けた甲斐があります」
俺の言葉に高嶺さんは少しの間、恥ずかしそうにしていたが、やがてゴホンッと咳払いをし、いつもの澄ました表情に顔を戻す。
「それじゃ、お弁当食べましょうか?」
「ええ」
俺の言葉に俺と高嶺さんはお弁当を食べ始める。その後、俺と高嶺さんは他愛のない話をしながら、昼休みが終えるまで話し続けるのだった。
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