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3章
罪の記憶4
しおりを挟む《白雪真代視点》
予鈴が鳴ると同時に教室に透が入ってくる。真っ直ぐ自分の席に向かい、透は自分の席に座る。
透に話を聞かなくちゃっ! 私は即座に噂の真相を聞こうと透の元へと行こうとする。しかし、横から割り込んだ複数のクラスメートによって阻まれる。全員女子であった。
「ッ!」
もう、邪魔しないでッ!
透を囲って離れないクラスメートを見て、苛立ちが募る。そんな事を思っている間に、クラスメート達は透と距離を詰める。そして、クラスメート達は透に一斉に口を開き、言葉を浴びせかける。
「女川君、凛ちゃんに酷いことしたって本当?」
「女川君サイテー」
「そんな人だったんだね……」
やはり、その内容は初瀬凛に関するものであった。クラスメート達は自分の言葉がどれだけ人を傷付けるかなど、これっぽっちも考えずに容赦なく透に言葉を重ねていく。
当の透はポケ~ッとして、浴びせられる罵詈雑言を素直に受けていた。どうやら、まったく事態を理解出来ていないようだ。
散々、クラスメート達に好き勝手言われた後、やっと不思議そうな顔をしながら、透は口を開く。
「なぁ、お前ら何言ってるんだ? なんで、俺が初瀬を傷付けなきゃいけないんだ?」
「しらばっくれないでッ! 昨日、凛から全部聞いたんだから!」
透の言葉もクラスメート達には届かない。当然である。そもそも、透の言葉を聞く気など無いのだから。透はというと、反論された女子の言葉にますます混乱しているようだった。
「初瀬から……?」
あまり表情に出ていないから分かりづらいが、間違いなく透は今回の噂に関してまったく身に覚えが無いようだった。しかし、私のように普段から透を見ている訳ではないクラスメート達からは、透の表情の変化など分かるはずもなく……。
透への罵詈雑言は時が経つごとに次第に増幅していった。最初は女子生徒、5、6人くらいだったのに、今では周りで傍観していた生徒も加わり、十数人にまで膨れ上がっていた。
十数人の罵声に透は無防備に晒される。
私は声をかけるタイミングを完全に見逃し、ただただ目の前で透に突き刺さる正義感という名の刃を見守るしかなかった。もはや、私にも何が正しいのか分からなくなっていた。
沢山の人間が一体となって人を責める事の恐怖を私はこの時、初めて知った。人は集団で意思を持った時が一番怖いのだと。そして、過去に私も透に同じ事をしてしまったのかもしれないと後悔した。
罵声が一生続くのかと思っていた時、ある人物の登場でクラスの罵詈雑言が止まる。その人物とは、何日か前に私に告白してきた男子であった。男子は、透とクラスメートの間に立ち、喋り始める。
「おい、みんな辞めようッ! 本当に女川君が乱暴をしたのか、証拠があるわけでも無い。頭ごなしに否定するんじゃなく、しっかり話し合おう!」
男子の発言で透への罵詈雑言が止まる。初めに透を責めた女子達も閉口し、男子の話に耳を傾ける。しかし、一人のクラスメートが止めた男子に向かって反論する。
「でも、片桐~。本当に乱暴してたとしても、女川が素直に言うとは思えないんだけど……」
「確かに! でもだからって、何も女川君の意見を聞かずに決めつけるのも駄目じゃないか?」
「う~ん」
クラスメート達は片桐という名の男子の言葉に渋々だが、納得したようだった。事態は収束しつつあった。とどめに、チャイムの音と共に担任が出現したことによって、とりあえず事態は落ち着くのだった。
片桐君……だっけ? もしかして、あの男子は良い人なのかもしれない。クラスメートを一旦落ち着かせてくれたし、彼になら透の事を相談できるかもしれない。
よし、次の休み時間に思い切って話してみよう!
私は先程透を助けてくれた片桐君に透の事を相談しようと決意する。本当の黒幕が彼である事など知らずに……。
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