15 / 18
15.夢魔アイドルは支配されたい①
しおりを挟む結局満月が起きるギリギリまで精気と夢をいただいたおかげか、能力を使った反動もなく、トーク番組の収録に臨むことができている。
(やっとソロ出演にも慣れてきたってのに...)
やたら零斗に飲ませたがる例のお偉いさんがプロデューサーの現場だった。
彼女から浴びせられる痛いくらいの視線に気づいていないふりをして、収録をこなしたのだが、逃げられなかった。
終わったと同時に楽屋へ滑り込み、着替えようと上を脱いだのを見計らったかのように、プロデューサーは入ってきた。
「あの、ノックくらいはしてもらいたいんですけど」
「聞こえなかったんじゃない?」
確実にしていない。
零斗は頬を引き攣らせるが、女は露わになった零斗の肩へ指を滑らせる。強請るような上目遣いは薄寒く、鳥肌が立つ。
「今から暇よね?ご飯奢ってあげる」
耳元への囁きに吐き気がする。それをグッと抑え込んで、零斗はにっこりと笑顔を貼り付けた。
半ば無理矢理に乗せられたタクシーはあきらかに飲食店を目指していない。止まったのは高層マンションの前だった。
気づかれないように舌打ちして、キャップをより深く被る。
「俺、アイドルなんですよ。スキャンダルは」
「わかってるわよ。大丈夫、つけられてなんかないわ」
女は心の底から楽しげに、零斗の腕に絡みつく。
零斗は足が重くて仕方なかった。
値段も度数も高そうなワインが目の前に並べられる。
(また酒か...)
もういい加減にしてくれと、内心頭を抱えた。
「零斗くん、お酒弱いみたいだけど...ここ私の家だし、倒れちゃっても大丈夫よ」
それが目的だと隠そうともせず、しなだれかかってくる女。香水の匂いが嫌で気づかなかったが、精気は可もなく不可もなくだ。
それなら、と。
(好きにさせて精気貰って帰るのが得策か...)
気持ちを切り替えて、彼女の頬を撫でる。
「お酒なんてなくても、あなたの望むままに」
早く終わらせて帰りたい一心で、嫣然とした微笑みと低い声色を演じる。
(俺は夢魔でアイドルだ)
そう自分に言い聞かせながら、腰が抜けた女をゆったりと床へ寝かせた。
味はそんなにだったが、短時間で満腹になり解放されたのは零斗にとって上々だった。
自宅マンションの廊下を歩いていると、満月も今帰ったところだったのか、でくわした。
あの女とは違う極上な香りに、零斗は彼女へ擦り寄るように手を取る。
「おかえり、満月ちゃん」
ジッと見上げてくる満月の瞳からは感情が読み取れず、狼狽える。
「えっと...満月ちゃん?」
「臭い」
グサっと心に矢が刺さった感覚に、全身を硬直させた。
満月に胸倉を掴まれ、引きずられながら彼女の浴室へと投げ込まれた。
「零斗くんちの鍵ちょうだい。着替えとってきてあげるから」
今まで聞いたことのない凍てついた声色に、恐る恐る鍵を差し出すと、奪い取られる。
バタンっ!と、閉じられるドア。
零斗は何が何だかわからないまま、冷や汗をダラダラと流していた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
蛮族の王子様 ~指先王子、女族長に婿入りする~
南野海風
恋愛
聖国フロンサードの第四王子レインティエ・クスノ・フロンサード。十七歳。
とある理由から国に居づらくなった彼は、西に広がる霊海の森の先に住む|白蛇《エ・ラジャ》族の女族長に婿入りすることを決意する。
一方、森を隔てた向こうの|白蛇《エ・ラジャ》族。
女族長アーレ・エ・ラジャは、一年前に「我が夫にするための最高の男」を所望したことを思い出し、婿を迎えに行くべく動き出す。
こうして、本来なら出会うことのない、生まれも育ちもまったく違う一組の男女が出会う。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
お手つき禁止!~機織り娘の後宮奮闘記~
織原深雪
恋愛
李 春麗(リー・チュンリー)は田舎で機織りを生業にする家の娘で、自身も器用さを生かし機織りや針仕事で家を助ける孝行娘。
しかし、チュンリーも年頃になり嫁に行かねばそろそろ不味いお年頃。
父はせめて良き出会いに恵まれるようにと、ツテをたよって後宮の女中のお仕事を取ってきてしまった。
実家でこのままでもいいやとのんびりしていたチュンリーに、強制的な環境の変化が訪れる。
さて、器用だけが取り柄の機織り娘の行先はどうなる?
どこに行っても変わらず手先を動かすチュンリーに春は訪れるのでしょうか?
「別にこのまま女中で働くのも悪くないよね」
あっさりでこだわりのないチュンリーに唐突に現れる、恋のお相手とは?
中華風ラブファンタジーです
中華風です。
ざっくりとしていますので、これはファンタジーと思ってお読みいただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる