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第四話
しおりを挟む「2人の力がぶつかり合ったと同時に天候が変わったんだ...これは試してみる価値がある」
綿雪の提案に、上官たちは渋い顔をしていた。
「炎の国と協力でもしろというのか」
「艶葉と舜の力で国境が救われるなら、全て解決じゃないですか。馬鹿げたこの戦争も終わる」
普段見ない彼の険しい表情を、艶葉はじっと見つめている。
「艶葉も、気候の安定の為、力を貸してくれるかい?」
そう振られ、姿勢を正し、真っ直ぐ視線を受け止める。
「私は命令に従うだけです」
(だけど...この戦争が終わったら、どう生きていけばいいんだろう)
艶葉は僅かに俯いた。そんなことは誰も気にも止めず、話は進んでいく。
「それでは、まずは休戦を願い出ましょう」
渋々といった様子で、書状をしたため、炎の国へと送られた。すぐに返事は届き、国境の上に建つ砦での話し合いの場が設けられるのだった。
両国の前戦を仕切る面々が、集まっている。
艶葉は廊下で、ぼうっとその扉を見つめていた。
「何してんだ?入らないのか」
舜が驚いたように声をかけてきた。
艶葉の力を初めて抑え込んだ憎らしい存在に、背を向ける。
「私がいなくても、この会議は大丈夫でしょう」
「お前と俺の力が重要になる話だろ」
早足でその場を離れるのに、舜はついてきた。
「私は決定されたことに従うだけ」
目的もなく歩を進めていると、屋上のようなところへ出た。
太陽がジリジリと、白い肌を焼く。
「最終的にはそうかもしれないが、意見を言うことはできるだろ」
「意見をすることなんて、許されてない」
そう言うと、舜はポカンとした顔を向けてくる。
「雪の国は、そんなに上下関係が厳しいのか?功績をあげているのに?」
「上官たちは意見はないかと聞いてくれるけど...私にはそんなものないから」
「自分の意思がないってことか」
小さな呟きは聞こえなくて、艶葉は眉間に皺を寄せる。
「あなたはさっさと戻ったらいいでしょう。私はここにいるから」
壁の近くの僅かな影に座り込む。それでも、じわりと汗が滲んだ。
地面に触れ、綿雪の作った氷城を思い出しながら、雪の力を込めた。相変わらず歪んでいる。
艶葉は小さく息を吐いた。
その横へ、舜が壁に背を預けるように立つ。影が、少し大きくなった。
「どういうつもり」
「別に。...お前こそ、その氷の塊はなんだよ」
「お城だけど」
赤味の強い茶色の瞳が、パチリと瞬いた。
「それが?」
「何、文句でもあるの」
舜がプッと吹き出し、笑いを堪えるようにそっぽを向く。肩がブルブルと震えている。
(馬鹿にされてる?)
そう察した艶葉は、思い切り雪玉をぶつけてやる。
「意思もなけりゃ、想像力もないのかよ」
怒りマークが増えていく彼女へお構いなしに、ゲラゲラ笑う。頭上から雪の塊を落としてやっても、彼は全く堪えた様子はなかった。
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