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一章 卵達は何を目指すのか
01 類稀なる才
しおりを挟む「やった……やったぁ!!」
ケミス王国の錬金術師育成学校。そこに貼られた試験結果を見て私ことフェート・アゲインは歓喜の声を上げる。
錬金術師としての資格を得るための試験。この三年間必死に頑張ってきた成果を示すゴールであり、錬金術師としてのスタート地点になるものだ。
「やったねフェートちゃん! あたしも合格してたよ!」
すぐ側には親友のティミスちゃんも居て、難関試験の筆記を一発で通過できた喜びを共に分かち合う。
「合格者は次の試験の説明をする! 番号を確認し次第指定の教室に移動しろ!」
喜びと悲しみの声が入り乱れるこの場に先生の指示が降り注ぐ。合格した私達は番号が書かれた板に群がる他の生徒達の間を潜り抜けていく。
周りの騒ぐ声が自分達への歓声に聞こえ、道が英雄の凱旋パレードのように思えてくる。
って、いけないけない! まだ筆記試験が終わっただけなんだから…ここで油断して落ちたら元も子もなくなっちゃう!
「ティミスちゃん! 次の試験も絶対に合格しようね! 二人で!」
「うんもちろんだよ!」
ティミスちゃんは同い年ながらも私より一年早くここに入学した先輩で、私が来たばかりの頃は色々と学校について教えてもらった。三年間毎日を共にした親友だ。
「合格者は51人……よし全員居るな。事前に言っていた通り二次試験は錬金術の腕を見させてもらう。3人17グループに分けて行う」
先生は穴の開いた箱を持ってきて私達全員に中身を引かせる。中には数字が書かれた紙が入っており私が引いたものには"1"とある。
「フェートちゃんは何番だった?」
「1番だったよ。ティミスちゃんは?」
「あたしは16番。結構後ろの方だね」
先生の説明によると番号順に試験を行うので私は一番手となる。だが順番なんて関係ない。全力で試験を受けて合格するだけだ。
「じゃあ早速行ってくるね。最終試験でまた!」
「うん…頑張ってね」
私は顔だけは知っていた他二名の生徒達と共に試験会場の教室へと向かう。
あまり使われない狭めの教室。そこには五人の教員がペンを持って座っており、その前に三つの机が置かれていてその上には錬金釜と複数の素材がある。
うっ…すごい威圧。でも気圧されちゃだめ! 絶対合格しなきゃ…あの日誓ったんだから…
十年前のある日、私は燃え盛る村の中である錬金術師の女性に、お姉ちゃんに命を救われた。彼女に育てられ側に居たこともあって私は錬金術師に強い憧れを抱くようになった。
「では三人はそれぞれ机の前まで来てください」
机の前に行き一度深呼吸し集中力を高める。試験開始前に置かれた素材をパッと確認し出される問題を予測する。
良品質な薬草に魔力水…かな? だとすると作るのはハイポー…いや、もしかしてその上のウルトラポーション!?
ポーションにはノーマル、スーパー、ハイパー、ウルトラと区分されている。品質が良くなる程回復能力は高くなるがその分素材もお高くつく。
素材的には不可能じゃない…けど、いや弱気になっちゃダメだ! 私は絶対錬金術師になってこの手を人のために役立てるんだ!
「試験はその素材である物を作ってください。では始め!」
圧倒的に情報が少ない。その中でやらなければ資格は与えられない。作る物は検討がついている。問題は作れるかどうかだけだ。
最上位のウルトラポーション…作ったことはないけどやり方だけなら知ってる。道は一つしかないんだ。なら!!
私は三人の中で一番早く素材に手をつける。目にも留まらぬ速さで素材を適量入れ混ぜて、そこに己の魔力も投入する。手から魔力の粒子を正確に釜の中に入れ、ある程度進んだところで釜を加熱する準備をする。
他の子達は…やっぱり苦戦してる。ウルトラポーションを作るだなんてそりゃね。でも私はやってみせる…!!
火打石等もあるが、生憎火属性魔法は私の十八番だ。こっちの方が手早く、魔力もそこまで消費しないのでパッと火を点け釜を加熱し混ぜる棒を強く握る。
些細なミスで品質は著しく落ちる。混ぜる速度や色の変化、それに流す魔力の質と量。何一つ間違えられない。
「…………」
一言も発さず全神経を目の前の釜に集中させる。ここで学んだこと全てを活かし、他の子達を置いていき作業を進める。
「できたっ!!」
神経をすり減らしながらもなんとかミスなく作業を終える。実物は見たことないが、この色と含有魔力量的にウルトラポーションなのは間違いないはずだ。
「フェートさんは終わったようですね。ではそれを提出して指定の教室まで戻ってください」
私は他の生徒の邪魔にならないよう静かに退出し、先生一人しか居ない別の教室に行って椅子に座り脈打つ心臓の音を聞くのだった。
「あっ! フェートちゃん!」
そこそこの人数が教室に来たところでティミスちゃんも試験終えてくる。
「どうだった?」
「難しかったけど…多分大丈夫だと思う! それにフェートちゃんならあれくらいできるでしょ?」
「あはは…買い被りすぎだよ」
フェートちゃんの四年で試験を受けられるのも凄いが、三年で挑める私も間違いなく才能がある。小さい頃からお姉ちゃんの側で積み重ねたものもあった。
「では結果を発表します!」
全員が揃ってある程度時間が経った頃、先生が名前の書かれているであろう紙を持ってくる。
「合格者は十二名でした。では発表していきます」
十二人か。全体の四分の一程度…聞いてた通り凄い厳しい試験。でもウルトラポーションなら作れただろうし絶対に合格してるはず…
次々と名前が呼ばれていきティミスちゃんの名前も呼ばれる。しかし私のは一向に呼ばれず不安が募っていく。
もしかしてダメだったのかな…ティミスちゃんと一緒に合格するって約束したのに…
十一人目の名前が呼ばれる。私の表情は段々と曇っていき、ティミスちゃんは気まずそうにそれを見つめる。
「最後に、フェート・アゲイン」
「えっ…!?」
試験を受けた順から呼ばれていたので半ば落ちたと決めつけていた。だが最後に呼ばれたのは最初に試験を受けた私の名前だった。
「最終試験は明日行いますので合格した者は帰って体を休めるように」
合格に喜んだり次の機会こそと意気込む者だったり。その中私は呆気に取られており二次試験を通過したという実感が湧かなかった。
「やったねフェートちゃん!」
「え…あ、うん!」
彼女に抱きつかれ合格したという実感が、憧れのお姉ちゃんに近づいたということを感じられ嬉しさに頬が緩むのだった。
⭐︎
「ふぅ…二次試験も問題なく終わったわね」
生徒達の頑張りをこの目に焼き付け、職員室で一緒に試験の監督をした二人と共に紅茶を飲み疲れを癒す。
「問題…ねぇ。でも最初に受けたあの娘、フェートさんだっけ? 問題って訳じゃないけど驚かされわねぇ」
「そうですね…まさかウルトラポーションを作ってくるなんて…」
試験内容的には低~中程度のハイパーポーションを作れられれば合格だった。実際才能のある者が集まっているとはいえ学生の身分ではそれくらいが限度だ。
ウルトラなんてあの状況下では私達でも10回やっても2、3回成功するかどうか。そのせいで驚きが隠せず合格者の欄に書くのが最後になってしまった。
「彼女かなりの魔力を持っているね。それにコントロールも下手したらあたしら以上。長年の勘から言うけどあれは化けるね。もしかしたらあの伝説の錬金術師を超えるかも」
「サファイアを…それは楽しみですね。彼女の成長が」
日が落ち暮れる中、才ある生徒の未来に想いを馳せるのであった。
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