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二章 崩れゆく背後
10 お誘い
しおりを挟む「とりあえず街には…着いたぞ」
あれから数日後。私達は村の生き残った人達と共にアルドの街に辿り着いた。誰も彼もが暗い顔をしており、特にエディアさんはこの数日間で一度も笑わなかった。
「とりあえずアタシは事件の後処理とかを騎士団に頼みに行くわ。きっと国がなんとかしてくれるはずだから」
生き残った人達はこれから保護されどこか別の場所で暮らすことになるだろうが、きっとしばらく笑顔はないだろう。
「お嬢ちゃん達は体に気をつけてな」
「はい…ありがとうございます」
お姉ちゃん達は彼らを連れて私達とは別方向に行く。ここでお別れだ。お姉ちゃんは処理を済ませてから別の国に居る仲間の元に会いに行くらしい。
「エディアさんはどうするんですか?」
「俺は…しばらく一人になりたい…ごめん」
エディアさんもどこかへ行ってしまい、街の真ん中で私達二人は取り残される。
「とりあえずあたし達はガペーラに会いに行こ」
「そうだね…私達は私達のことを…」
私達まで笑顔を失うわけにはいかない。本来の目的を思い出しガペーラさんが居るという場所まで向かう。
「この噴水のあたりだよね?」
「うん。日付も時間も合ってるはずだけど…」
しかし一向にガペーラさんは現れない。ティミスちゃんは不安そうに辺りを見渡すがどこにも居ないようだ。
「おかしいなぁ…ガペーラがあたしとの約束に忘れたり遅れたことなんてないのに」
「もしかして何か事件とかに巻き込まれたんじゃ…」
深刻そうな彼女の様子に引っ張られ、つい考えが悪い方へと流されてしまう。それから数時間経っても現れないので私達はこの場を離れてガペーラさんを探しに行く。
「とりあえず別れて探そう。二時間後に噴水近く集合で良い?」
「うん。そっちはお願いね」
別れて効率良く探すことにして、私は街を歩きつつ彼女から聞いたガペーラさんの特徴と合致する人を見てないから尋ねる。
「うーんいや、知らないなぁ」
「特に見てないわね」
「ここら辺は通らなかったけど?」
しかし彼女の目撃情報はなく見つかる兆しがない。一時間ほどして諦めかけていた時ある建物が目に入る。
「冒険者ギルド…」
この世界には冒険者という職業がある。依頼をこなし報酬を貰う、エディアさんがやっている職業だ。それに職業柄情報が集まりやすい。
私はここだと確信し中に入りそこで聞き込みを始める。
「あのーちょっと良いかな?」
そんな時黒髪の長身の男性が話しかけてくる。顔立ちはかなり良く白馬に乗っていたとしても違和感ないだろう。
「は、はい!」
彼の美貌につい緊張してしまい声が上擦る。
「あははそんな畏まらなくても。それで俺を探してるって?」
「あなたがガペーラさんですか?」
「そうだよ。君は?」
「あっ、はい! 手紙で書いてあったフェートです!」
「あぁあのね…よろしくね」
「この後ティミスちゃんと合流する予定ですから…」
私は彼から何か探るような視線を感じピタッと言葉を止めてしまう。
「ガペーラさん?」
「ん? あぁティミスね。実はもう会ってて君を探してたんだ」
「そうだったんですか! お手数かけてすみません」
「いやいや…それで彼女は今俺の借りている家で休んでるんだ」
「そうなんですか?」
ティミスちゃんにしては珍しい行動だ。彼女なら見つけてたら噴水でずっと待ってそうだと思ったのだが。
「うん。だからついて来て」
「はい!」
とはいえ解釈違いなんてよく起きることだ。私は特に気にせず彼の後ろについていく。
「ところで二人でこの街に来たのかい?」
「あーいえ色々あってお姉ちゃんとかと来たんですけど、別れて今は二人です」
「ふーん…」
ある程度歩き私は人気のない倉庫のような場所に連れてこられる。
「あの…ここが家でしょうか?」
「うん中はちゃんと綺麗にしてるし案外住みやすいよ」
「へーそうなんですね」
私は無警戒に扉を開ける彼についていき、そして手首を掴まれ無理やり中に引き込まれる。
「きゃっ…! 痛っ…え?」
次の瞬間背後から筋骨隆々とした腕が私の首元に回される。
「うぐっ…がっ!!」
その腕に首を絞められ私の意識は朦朧としていく。
「はな…せっ!!」
私はなんとか魔法を放ち背後にいる男の顔を焼く。
「あっつ!!」
男はたまらず拘束を解き、私はその腕から解放され前に転がる。
「ゲホッ、ゲホッ!!」
辺りを見渡してみれば何人か悪そうな男がおり、全員嫌な目で私のことを見てくる。
「ガペーラさん…これは一体!?」
ガペーラさんは扉の鍵を閉め悪そうな笑みを浮かべる。
「中々の上玉が捕まえられた。これは売れば中々値が張るな。反応的にも初物だろうし」
背筋に嫌なものを感じ私は全身を震わせる。複数人から同時にそういう目で見られ不快感で胸がいっぱいになる。
「おら! 抵抗するんじゃねぇ!!」
離れた場所に居た男が魔法で圧縮させた水を弓のように放ってくる。私もそれに対抗して火を圧縮したものを飛ばして水を蒸発させる。
「こいつ強えぇ…」
「お前らはいい。あとは俺に任せろ」
ガペーラを騙っていた男性が裂けそうなほど口角を上げ、肌を灰色に変色させる。
「まさか…!!」
「ほう。アグノスを知ってるのか。都市伝説程度の認識だから田舎娘は知らないと思ったんだけどな」
奴は大きな耳に腕に翼を生やした、蝙蝠型のアグノスへと変貌する。
「だが知っていたとしても無駄だ!」
奴は腕を羽撃かせこの前のバッタよりも速く突っ込んでくる。紙一重のところで振るってきた爪を躱しそれが頬の真横を通る。
「ならこっちも!!」
私は武器を取り出し烈火の剣を創り出す。奴はピタッと動きを止めこれの危険性を感じ取る。
「ふん…すぅぅぅ」
奴は気合いを入れ大きく息を吸い込む。私は下手に踏み込まず武器を構え迎撃体勢を取る。
だがそれが間違いだった。周りの取り巻き達はスッと耳に手を当てる。
「キィィィィィィ!!」
奴の口から甲高い振動音が放たれる。私は咄嗟に耳を塞ぐものの間に合わず鼓膜に直接衝撃を受け視界がグラリと揺れる。
「しまっ…」
「傷なく気を失わせる。俺の仕事に最適な能力だ」
「まだっ…!!」
私は武器の持ち手で頭を殴りなんとか意識を留めるが既にフラフラで力が入らない。
まずいこのままじゃ…私は何されるか…
フェートちゃんに行き場所は伝えていない。お姉ちゃんだって今はこっちに来れないだろう。ならここで気を失ったら私の運命は…
考えたくもなかった。必死に悪寒を振り払い敵をこの目で捉える。
「この世は賢く生きた者が勝つ。気合いじゃどうにもならん」
そして近づいて来た奴に首を絞められ私の意識は闇に落ちていくのだった。
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