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二章 崩れゆく背後
12 脱出劇
しおりを挟む「ん…?」
私は暗がりの中唯一光る灯りに照らされ目を覚ます。
「よう目が覚めたか」
籠型の檻の前には私の首を絞めたあの男が座っておりこちらを見てニヤニヤする。
「んっー!!!」
私は激昂し飛び掛かろうとするが言葉を発せず、その場に倒れ頭を檻にぶつける。
「ぷっ! お前飛び掛かる前にちっとは自分の状況を見ろよ」
奴は私の滑稽な様子を見て嘲笑う。重りがついた足枷が付き、両手は後ろで組まされ手錠のようなものを付けられている。
こんなもの…!!
私はそれを引き千切ろうとしたものの身体強化魔法が上手く使えない。
「首見ろ首」
私は視線を自分の首元に落とす。そこには薄紫色の首輪があった。
魔封じの首輪…これを付けられたら…
犯罪者を拘束しておくために使う首輪、魔封じの首輪。これを付けられると体内の魔力を乱され魔法がほとんど使えなくなる。つまり今の私は完全に無力化されてしまっているというわけだ。
それに見てみればアイテムボックスは取られ対アグノス用の武器もない。
「まぁそう睨むなって。奴隷市場で良い人に買われればまだ普通に生きれるかもな。まぁせいぜい祈りな」
「んー!!」
私は懲りずに牢屋に体当たりをし必死に抵抗する。
「おい!」
男は檻を蹴りこちらを威圧する。
「傷つけるなとは言われてるが、あんまうるせぇと…そうだな。後ろのそいつに犠牲になってもらう」
男は私の背後に居た小さな女の子を指差す。さっきからずっと黙り怯えている子だ。
「っ…」
私は怯える彼女を前にこれ以上暴れることはできず静かに腰を落とす。
「ふん。まぁいい。これでゆっくりできるぜ」
男はコップに飲み物を注ぎそれを飲みつつ軽食を取り始める。
「はひほほふはほ」
私は怯える女の子の頭を後ろに回された手で撫でてあげる。その子は寒いのか怖いのか震えており体を丸め目を瞑る。
私は彼女に寄り添うようにし体をくっつけて体温を分けてあげる。魔法も脱出するのに必要なほどは無理だが、ほんの些細な熱を発生させることはできる。
私は金属に伝わった熱を服に擦り付けそれを彼女に分けてあげる。
「はっははひ…」
少しは精神的に楽になったのか、表情が緩み私の方に身を寄せてくれる。
とはいえどうしよう…現状脱出する手段もないし、この首輪がついてる以上最終手段も使えないし…
とにかく辺りを観察し脱出の糸口がないか観察する。窓は一つあるが高くて届かないだろう。それに監視は今は一人だが、きっと違う部屋にまだ居るのだろう。気を失う前に見ただけで五人は居た。
ダメだ…全く活路が見つからない。
どれだけ見ようともこの状況を突破できる道筋はなく、現状私は待つことしかできない。そのうち私達は奴隷市場等に運ばれるはずだ。チャンスはその時だ。
「ん?」
そんな時私は視界の端で動くものを捉える。窓の縁にティミスちゃんが立っている。口の前に指を立て静かにするようコンタクトを取る。
石を魔法で浮かせ、風で飛ばし見張りの人の頭部に直撃させ気を失わせる。
「大丈夫?」
風で着地音と衝撃を殺し降り檻の前まで来る。
「今開けるから」
ティミスちゃんは指の上で風のカッターを創り出し、それを回転させ檻の施錠を無理やり突破しようとする。
「キィィィィィィ!!」
しかし次の瞬間あの時の怪音波が私達の方に飛ばされる。
「んんっ!?」
私達三人はその音にやられ脳を激しく揺らされる。ティミスちゃんは膝を突き耳を塞ぐが、もうダメージは受けてしまっており意識が朦朧としてしまっている。
「うっ…!!」
窓からコウモリのアグノスが飛び込んできてティミスちゃんの首元に手刀を入れ、彼女は檻にもたれるようにし気を失ってしまう。
「ふん。気づかれないと思ったか」
奴はその大きな耳を揺らす。こいつは音を操る力がある。耳が良く反響による探知能力に優れているのだろう。
「んぅ…」
私も限界が来て意識が遠のきまた気を失ってしまうのだった。
⭐︎
「むぅ…」
私は誰かに背中を突かれ目を覚ます。ティミスちゃんだ。私と同じように拘束され喋れなくされている。
そうだ二人なら…怪我はするかもしれないけど…
私はある脱出経路を見つけ出す。二人で協力すれば可能だ。だが問題はどうやって伝えるかだ。
「んっ…!!」
私はティミスちゃんに背を向け彼女の手のひらに指で文字を書いていく。
『でる ほうほう ある』
『なに』
『れんきん はもの つくる』
『まりょくで?』
私は小さく頷くがティミスちゃんはイマイチ作戦が理解できていないようだ。
『かまは?』
『わたしのて』
「!?」
ティミスちゃんは声を押し殺しながらも驚き唸る。
『けが あぶない』
『いいから やる いきるため』
私は覚悟を決めほんの少し使える魔力で手を熱して釜の容器に見立てる。
「んっ…!!」
最悪火傷くらいなら後でポーションで治せる。私は構わず手を熱して肌を爛れさせる。そこにティミスちゃんが魔力を注ぎ込み簡易的な錬金を始める。素材は純粋な魔力だけだ。
見張りの人は居るものの、拘束され静かにしているこちらに注意は向けないし手は体で隠れて死角になっている。
「んんっ…」
かなり痛かったが尖った金属片を錬金することができた。後はこれで手錠を壊し、眠ったふりをしながら首輪を破壊すればいい。
私は音を立てないよう慎重に手錠の脆い部分を擦り少しずつ削っていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
だが突然外から男性の絶叫が響いてきて空気を揺らす。一瞬驚いたもののその声に見張りの意識がいったおかげで私達は順調に作業を進められる。
「なんだ今の声…」
男は気になり外の様子を伺おうとするが見張りがあるのでその板挟みでのらりくらりする。
それから数十分後、手錠は外れ今度はティミスちゃんに金属片を渡す。同じようにして彼女も手錠を外しそれから寝るふりをして死角で首輪も破壊する。
もう朝…脱出しようにもあのアグノスが来たら武器なしじゃ勝てないし…
「おいマズいぞ」
その時あの場にいた一人の男性が部屋に入ってくる。
「昨日の夜この近くで殺人事件があったらしい。騎士団が調べにくる。もしかしたらここも入られるかも…」
「おいやばくねーか? 流石に兄貴も数には勝てねぇぞ」
「だからこいつら袋に詰めて急いで逃げるぞ。最悪別の場所はある。居心地は悪いがな。早朝のうちにやるぞ急げ」
「ちっ…分かった」
男達は大きな袋を持って檻の前までくる。
くっ…まだ女の子の手錠を外せてないのに!!
移動させるのには1日はあると思っていたが状況は悪転してしまう。ここでやるしかない。
私はティミスちゃんとアイコンタクトを取りタイミングを合わせる。手は焼け武器もない。不利な状況だがやるしかない。
「おいお前ら痛い目に会いたくなかったら大人しく…」
「行くよティミスちゃん!!」
「うん!!」
私は彼女と同時に口の拘束具を外し男二人にタックルをかまし脱出劇を始めるのだった。
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