26 / 26
三章 星に願いを
24 空から来たる者
しおりを挟む「この化け物め!!」
ガペーラさんは既存の魔物ともアグノスとも思えない異形の怪物に臆することなく斧を振り下ろす。それは奴の体を一刀両断し致命傷を与える。
「ぎぃぃぃぃ!!」
奴は大気を震わせるほどの雄叫びを上げ私達は、ガペーラさんすら耐えられず体を硬直させてしまう。
「体が…まずい…!!」
あの触手で掴まれたらお終いだ。奴の巨大なそれがガペーラさんに触れる。
「……」
しかし触手は何もしてこない。こちらを舐め回すように見た後煙を出しその姿を隠す。
「はぁはぁ…あ、風よ!!」
硬直が解けたので不意打ちがされないよう彼女が咄嗟に風を吹かせ煙を掻き消す。
「よくも…って、男の子?」
ガペーラさんが素っ頓狂な声を上げる。それも仕方ない。煙が晴れた場所に居たのは先程の化物ではなく、可愛らしい男の子だったのだから。
「⚪︎△φφ∬?」
ガペーラさんやティミスちゃんと全く同じ人間にしか見えないが、服は見たこともない材質とデザインであり、更に発する言葉は聞いたことのないものだ。
「やっぱりこいつあの芋虫か。なら!!」
ガペーラさんは状況を把握するなり迷うことなく素早く斧を振り下ろす。だが奴はふわりと体を浮かせるように立ち上がりながら後ろへ跳びそれを躱す。
「ちっ、ちょこまかと…!!」
「待ってくださいガペーラさん!」
私は追撃して確実に命を奪おうとする彼女の腕を掴み止めさせる。
「離すんだここで倒しておかないと…」
「彼…手を上げて首を振ってますよ?」
男の子は敵意がないことを示すように両手を上げ首をぶんぶんと横に振る。その眼差しからはこちらと友好的な関係を築きたいという意図が汲み取れる。
「油断はしない方がいい。念の為ティミスはそこの木の裏まで下がってて」
武器を構えたガペーラさんが先頭に徐々に彼に近づいていく。
「安全のためとりあえず両腕を縛らせてもらうぞ」
「…?」
「言葉が通じていないのか?」
「…! コトバ…ツウジテナイ…デス?」
無抵抗の彼の腕を後ろで縛っている最中。彼は何か閃いたような顔をし、カタコトだが文脈を繋げて発してみせる。
「こいつもう言葉が…一体なんなんだ…?」
ガペーラさんの向ける嫌疑の視線がより一層強くなる。例え彼が違う言語圏から来た人だと仮定してもこの速度で言語を上達するのは明らかに異常だ。
「でも…よく見ると可愛いねこの子」
ティミスちゃんが覗き込むようにして彼の顔をじっと見つめる。確かに彼の顔立ちは幼いながらも整っており、美しさと可愛らしさを両立した芸術品のようだ。
「あまり近づくなよ。縛ったとはいえまだ何するか分からない。それにこいつはフェートを押し潰そうとしたんだ」
「うーん…でも、どちらかというと倒れた拍子にって感じな気も…」
「冒険者は警戒しすぎの方がいいんだ。ほいお前はここに座ってろ」
ガペーラさんは木の側に彼を座らせ更にそこに縛り付けて動けなくさせる。警戒しすぎだと思ってしまうが、先程のあの異形っぷりを見るとこれくらいじゃないと安心はできない。
「スワッテル…ミカタ…」
「あ! また喋った!」
ティミスちゃんは彼に興味津々のようで目を輝かせて彼の前に屈む。まるで可愛い弟かペットができたようで、物を持ってはその言葉を教えている。
「ヤクソウ…ブキ…」
「そうそう! 頭良いんだね!」
それにしても彼の言語習得能力には目を見張るものがあり、一度教えたものは大体理解している。
「とりあえず交代で見張りながら寝るぞ。一応二人はボクの後ろで寝るように」
「はぁい」
とはいえ起き続けるわけにもいかない。ガペーラさん、ティミスちゃん。そして私の順番で見張ることにして一旦私は長い眠りに着くのだった。
⭐︎
「フェートちゃん? 交代の時間だよ」
「ふわぁぁ」
四、五時間程寝ただろうか? 私はティミスちゃんに揺さぶられ目を覚ます。水を軽く顔にかけ、見張り番を交代する。
「…君は寝ないの?」
男の子は眠った様子はなく、辺りをキョロキョロと見渡している。
「あっ、ごめんね…少しでも情報が欲しくて」
「っ!?」
彼は既に流暢に喋れるようになっており、それに明らかにこちらの発言の意図を汲み取っている。
「いつから喋れるように?」
「さっきの…ティミスさんに教えてもらって。見張りは暇だからって」
「あぁ…」
妙に納得してしまう。ティミスちゃんなら警戒心より好奇心の方が勝ってしまうだろう。
「それより君は一体何者なの? あの触手の怪物…なんだよね?」
「あれはごめんね…急いで外に出て様子を確認しようとしたら転んじゃって」
「あっ…やっぱり敵意はなかったんだ」
彼の表情は完全に無垢な子供のそれである。こちらへの害意などは一切ない。
「じゃあ君は魔物…なの?」
「えーと、当たらずも遠からずかな。ボクはこの星の外から来た…いわゆる宇宙人なんだ」
「えっ!? 宇宙人!?」
二人が寝ているというのについ大声を出してしまう。
そりゃ人間じゃないとは思ってたけど…宇宙人って…えぇ…
「本当に?」
「うーん…あ、そこの箱取って。その中宇宙船になってるから」
「え? この箱が?」
空から落ちてきたあの箱。確かにあの速度で落ちてきたというのに外面に傷は見られない。見たこともない材質だ。
「それに触れれば宇宙船の中に…あれ? 起動しない」
彼は何度も足先で箱を突くが何も起こらない。
「ちょっと調べるね」
彼は指先だけを触手に変え箱の中に入れる。調べるようにうねうねと動かし彼の表情が段々と暗くなる。
「まずい…部品がいくつかなくなってる」
「えっ!? それってまずいの…?」
「うん。ほとんどはこの星でも調達できると思うけど、一つだけ絶対に無理なものがある。多分ここに墜落した時にどこかに…」
この箱、つまり宇宙船は隕石のように墜落してきた。恐らく何かしらの原因で本体から離れていったのだろう。
「多分だけど、経年劣化で外れてどこかに落ちちゃったみたい…これじゃあ他の星に行けない…」
「まずいの?」
「うん。他の惑星にいる友達が病気で、治療薬の素材を採取して届ける途中だったんだ」
「じゃあ宇宙船を治さないと…」
「時間がないわけじゃないけど、このままじゃまずいかも…」
触手を人間の手に戻し、箱を手に持ったま
ま落ち込んだ様子を見せる。
「なら私がなんとかするよ!」
「えっ…?」
「無くなった部品は私が探すし…それに作れるなら錬金するから。こう見えても私錬金術師なんだ!」
「錬金…あぁそうだね…ほとんどの部品は作れると思うけど…一つだけは見つけないと」
「じゃあ明日から探そ?」
私はしゃがみ彼の眼を見て話す。
「ありがとう…どうして初対面の僕にそこまで?」
「私ね。少しでも誰かの役に立ちたくて。せめてもの…」
そこまで言いかけたところで一度口を紡ぐ。こんな暗い話この子にするべきではないと。
「とにかく困ったことがあれば私が助けるから。あ、そういえば君の名前は? 私はフェート・アゲイン」
「僕はイクト。よろしくねフェート」
「うん、よろしく!」
夜明け前の暗い中、私達は正反対に明るい表情を浮かべるのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない
よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。
魔力があっても普通の魔法が使えない俺。
そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ!
因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる