中卒の俺が偶然出会った有名配信者とコラボしたらトップランカー入りしてしました。学がなくても大バズりできる裏技でランキング一位を取ります。

ニゲル

文字の大きさ
38 / 57
二章 天才探偵

37話 命が尽きるまで

しおりを挟む
「所長。掃除洗濯が終わりました。それと紅茶です」

 日も沈み仕事が終わった後、シャーロットは事務所の机で優雅に紅茶を啜る。
 今はこの空間には二人だけ。お互い幼い頃からの仲だ。遠慮なく全てを曝け出し合える。

「やっぱりベラドンナ君の紅茶は格別だよ。死ぬ直前もこれを飲んでいたいものだね」

 半分ほどまで飲んだところで一旦カップを置く。味の余韻に浸り香りを楽しむ。

「ところで夜道さんのことですが……本当にこのまま雇うおつもりですか? あの人は所長の一番嫌いなタイプの人間だと思うのですが?」

「あぁそうだね。嫌いなタイプだしあぁいう考えは本当に不愉快だよ。でも契約は契約だし仕事は仕事。わたしの感情一つでどうこうするのはそれこそわたしのポリシーに反している」

 シャーロットはパティシーに手を伸ばし、オーブを嵌め込む箇所を指でなぞる。

「それに彼は数少ない配信者だ。情報も入ってきやすいしいざという時戦力にもなる。嫌いだからといってこの利益を手放すのは惜しい。
 それに家事も中々できるしね」

 また再び紅茶に手を伸ばしカップを口へ近づける。しかし突然手が震え出し、あろうことか何も起こっていないのにカップを机に落としてしまい紅茶を服に溢す。
 カップは粉々に割れてしまい辺りに破片が散らばる。これからの彼女の未来を暗示するかのように。

「所長! すぐに拭きます!」

「い、いやいい。自分で拭けるさ……これくらい」

 そうは言うものの手の震えはまだ残っていて上手くタオルを持てない。最終的にベラドンナが代わりに机や彼女の衣服についた紅茶を拭き取る。

「はぁ……はぁ……今日はちょっと運動しすぎちゃったみたいだね」

 手の震えだけでない。息も荒くなり始める。咳が止まらなくなりやがて手が自然と口に回る。

「はぁ……時間はあとどれくらいか……」

 手にはべっとりと血液がこびりついていた。肺が痛みゆっくり呼吸しても痛覚が刺激され落ち着かない。口の中には紅茶の味が残っていたのに台無しにされ鉄臭い匂いが顔周りに充満する。
 赤黒く染まる手を見てシャーロットは表情を暗くし、やっと震えが収まった体でティッシュを取り血液を拭き取る。

「ねぇベラドンナ君……もしわたしがいなくなったら……ここの物やお金全部使っていいから、わたしのことは忘れて……」

「そんなことできません!!」

 力強く着いた手により割れたカップの破片が揺れ何個か地面に落ちる。

「……そうは言ってもその時は来る」

 シャーロットは椅子に深くもたれかかり、諦めたように深く息を吐く。しかしその瞳には不退転の覚悟が宿っておりいくら血を吐こうが寿命が縮まろうが消えることはないだろう。

「そうだ……君と夜道君が交際するっていうのはどうかな?」

「えっ!? な、何を言ってるんですか!?」

 ベラドンナはいつもの冷静な態度を崩し顔を真っ赤にさせる。

「かれこれ二十年近く一緒にいる仲なのに気づかないと思ったのかい? 君が夜道君に良い印象を抱いていることくらいお見通しさ」

「そ、そんなことは……」

 弱く否定するものの紅潮した顔は隠せない。

「まぁとは言っても、少なくとも目的を果たすまでは死ぬつもりは毛頭ないけどね」

 シャーロットはやっと安定するようになった体を動かし、水蒸気が付いている窓に人差し指を置く。
 ツーっとなぞっていきやがてそれは楕円となり一つの顔に、男性の特徴を捉えたものとなる。

「あと一年ないかもしれない。それまでに……この男を……」

 自然と手に力が籠り、シャーロットは小さな手で窓を叩き男の顔を潰す。ズリズリと手を下へと引き摺り恨みを晴らすように手にベットリと水を付ける。
 
「だから……手段なんて選んでいられないんだよ」

 窓が割れてしまいそうなほど手に力を込め、過去と復讐を背負った背中をベラドンナは見るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...