71 / 130
六章 文化祭
67話 レベル20
しおりを挟む
周りが騒がしい。よく知っているみんなの声が辺りを飛び交う。
「生人ちゃんが起きたぞ!」
薄っすら目を開けるとすぐに田所さんの声が耳に入ってきて僕の脳を大きく揺らす。
頭痛に揉まれながらもなんとか僕は目を覚まし辺りを見渡す。
DO本部の会議室で父さん含めみんながいた。他の人は包帯なり絆創膏などをつけてはいたが元気そうだ。
「あれ? ここは……確かキュリアと……」
「生人。お前の頑張りのおかげでキュリアは逮捕された。ありがとうな」
段々と記憶が鮮明になっていき、僕があのキュリアを倒したのだということを思い出す。
時計を見てみれば僕達が戦ったであろう時間から数時間ほどしか経っておらず、みんなの怪我が治っていないのも納得だ。
「生人も起きたことだし会議を始めるぞ。まずキュリアの件だがみんな本当にありがとう。おかげであいつを捕まえることができた。あいつについてはこれから順次調べていくつもりだ」
父さんはこの話を流れ作業のように流して、数回咳払いした後本題に入る。
「でだ。次に生人についてだ」
みんなの視線が僕に集まる。そんな凝視されると何もしていないというのに不安な気持ちになってくる。
「田所から聞いた話では生人から光が漏れ出たらしいが、それは本当か生人?」
「うん。ランストのせいなのかキュリアのせいなのかは分かんないけど」
「そうか……それとこれは生人は知らないと思うが、みんなのアーマーカードの内容が変わっていたんだ」
父さんがモニターに一枚の写真を表示させる。映し出されたのは僕以外の四人のアーマーカードだ。
いやよく見れば細部に違いがある。例えば田所さんのには紫色の装飾が増えている。
「生人が寝ている間に美咲に頼んで確かめたんだが、全員これを使えばレベル20の力を引き出せることが分かった」
「レベル20!? 何でそんな力を……」
レベルは1上がるだけでも相当に違ってくる。それが10以上も変わるとなればそれは天変地異並みだ。
「現状は分からないがもしかしたら……生人。お前が何か関係しているかもしれない」
「ぼ、僕が?」
「まだ詳しくは分からないがな。それについては美咲の所に定期的に行ってもらって検査して確かめる」
また検査か……必要なのは分かってるんだけど、ずっとじっとしてるだけで暇なんだよな……
「とりあえず、もうエックスことキュリアが活動することはない。
よってこれからのDOの方針は以前と同じように資源の回収、そして制圧を主にやっていく。ただし……特に生人だが、今回の件で体に不調を感じたりしたらすぐに報告するように」
この言葉を最後に会議は終わり、僕達は解散する。
他のみんなはそれぞれ休みに部屋に戻ったり病院に行ったりしたが、僕はスマホで呼び出され早速美咲さんの元に向かうこととなる。
「とりあえずデッキケースからアーマーカードを出してくれるかな? 君のも確認したいんだ」
「うん! えーっと……」
僕はランストを装備してデッキケースの中を探りアーマーカードを取り出す。
案の定と言うべきかホッパーのカードに変化があり、カードにあるイラストに濃い青色の装飾品が追加されている。
名前もドラゴンホッパーとなっていた。
「少し解析してみるね」
電子レンジのようにも見える謎の装置にカードを入れ、そこにパソコンから伸びるコードを接続する。
数分の操作の後、コピー機から書類が出てきてそれと共にカードを返却される。
「やはり君のもレベル20相当の力を秘めていたよ」
「アーマーのレベルが上がったのは嬉しいけど、何でこうなったのかな……美咲さんは何か分かる?」
この質問に対して美咲さんは困り顔を浮かべ返答に時間がかかってしまう。
やはりこの異常事態の真相を誰も把握していない。この事態が好意的なものであったことがせめてもの救いだ。
「私でも分からない。まぁでも分からないことを確かめていくのが研究者だからね。これから調べていくよ。付き合ってくれるかい?」
「もちろん!」
断る理由などなかった。そんな言葉ほんの少しでも思い浮かぶことはなかった。
それだけ僕は彼女のことを信用しているし、一人の人間として尊敬している。
「ふふっ……ありがとう。本当に」
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、僕はそれから実験に付き合い夜になってから帰されるのだった。
「生人ちゃんが起きたぞ!」
薄っすら目を開けるとすぐに田所さんの声が耳に入ってきて僕の脳を大きく揺らす。
頭痛に揉まれながらもなんとか僕は目を覚まし辺りを見渡す。
DO本部の会議室で父さん含めみんながいた。他の人は包帯なり絆創膏などをつけてはいたが元気そうだ。
「あれ? ここは……確かキュリアと……」
「生人。お前の頑張りのおかげでキュリアは逮捕された。ありがとうな」
段々と記憶が鮮明になっていき、僕があのキュリアを倒したのだということを思い出す。
時計を見てみれば僕達が戦ったであろう時間から数時間ほどしか経っておらず、みんなの怪我が治っていないのも納得だ。
「生人も起きたことだし会議を始めるぞ。まずキュリアの件だがみんな本当にありがとう。おかげであいつを捕まえることができた。あいつについてはこれから順次調べていくつもりだ」
父さんはこの話を流れ作業のように流して、数回咳払いした後本題に入る。
「でだ。次に生人についてだ」
みんなの視線が僕に集まる。そんな凝視されると何もしていないというのに不安な気持ちになってくる。
「田所から聞いた話では生人から光が漏れ出たらしいが、それは本当か生人?」
「うん。ランストのせいなのかキュリアのせいなのかは分かんないけど」
「そうか……それとこれは生人は知らないと思うが、みんなのアーマーカードの内容が変わっていたんだ」
父さんがモニターに一枚の写真を表示させる。映し出されたのは僕以外の四人のアーマーカードだ。
いやよく見れば細部に違いがある。例えば田所さんのには紫色の装飾が増えている。
「生人が寝ている間に美咲に頼んで確かめたんだが、全員これを使えばレベル20の力を引き出せることが分かった」
「レベル20!? 何でそんな力を……」
レベルは1上がるだけでも相当に違ってくる。それが10以上も変わるとなればそれは天変地異並みだ。
「現状は分からないがもしかしたら……生人。お前が何か関係しているかもしれない」
「ぼ、僕が?」
「まだ詳しくは分からないがな。それについては美咲の所に定期的に行ってもらって検査して確かめる」
また検査か……必要なのは分かってるんだけど、ずっとじっとしてるだけで暇なんだよな……
「とりあえず、もうエックスことキュリアが活動することはない。
よってこれからのDOの方針は以前と同じように資源の回収、そして制圧を主にやっていく。ただし……特に生人だが、今回の件で体に不調を感じたりしたらすぐに報告するように」
この言葉を最後に会議は終わり、僕達は解散する。
他のみんなはそれぞれ休みに部屋に戻ったり病院に行ったりしたが、僕はスマホで呼び出され早速美咲さんの元に向かうこととなる。
「とりあえずデッキケースからアーマーカードを出してくれるかな? 君のも確認したいんだ」
「うん! えーっと……」
僕はランストを装備してデッキケースの中を探りアーマーカードを取り出す。
案の定と言うべきかホッパーのカードに変化があり、カードにあるイラストに濃い青色の装飾品が追加されている。
名前もドラゴンホッパーとなっていた。
「少し解析してみるね」
電子レンジのようにも見える謎の装置にカードを入れ、そこにパソコンから伸びるコードを接続する。
数分の操作の後、コピー機から書類が出てきてそれと共にカードを返却される。
「やはり君のもレベル20相当の力を秘めていたよ」
「アーマーのレベルが上がったのは嬉しいけど、何でこうなったのかな……美咲さんは何か分かる?」
この質問に対して美咲さんは困り顔を浮かべ返答に時間がかかってしまう。
やはりこの異常事態の真相を誰も把握していない。この事態が好意的なものであったことがせめてもの救いだ。
「私でも分からない。まぁでも分からないことを確かめていくのが研究者だからね。これから調べていくよ。付き合ってくれるかい?」
「もちろん!」
断る理由などなかった。そんな言葉ほんの少しでも思い浮かぶことはなかった。
それだけ僕は彼女のことを信用しているし、一人の人間として尊敬している。
「ふふっ……ありがとう。本当に」
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、僕はそれから実験に付き合い夜になってから帰されるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません
紫楼
ファンタジー
母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。
なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。
さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。
そこから俺の不思議な日々が始まる。
姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。
なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。
十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる