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一章 女神様と異世界と
10話 ハーフ
しおりを挟む体を包み込む温かい感触。腹部に伝わるヒンヤリとした冷気。その感覚がボクの意識をゆっくりと覚醒させる。
「あら、傷にしては案外早い目覚めですね」
どうやらボクは布の上に寝かされていたようで、天井を見上げていた。そしてボクを覗き込むように青空色のショートの髪を携えた可愛らしく幼い顔が眼前にあった。
「あ、お、おはよう……ございます?」
知らないその子に、まだ頭が起きておらず対して歳も離れていないだろう彼女に敬語を使う。
「えっ!? その角……魔族!?」
先程の戦闘がひと段落したのかと胸を撫で下ろそうとしたが、それは彼女の額にある魔族特有の角に妨害される。しかし同時に違和感がボクの頭の片隅を支配する。角が先程交戦した魔族より小さい。ちょこんと申し訳程度に生えているだけ。それに皮膚も人間のものに近い。
「魔族……半分正解といったところですね」
「半分? まさか君って……!?」
人間と魔族は仲が悪く戦争状態。聞いた話からそういう認識だった。だから人間と魔族のハーフ。つまり人間と魔族で恋愛をした者達が居たということに驚きを隠せない。
「おっ、起きたか坊主!」
このボロ小屋の入り口を荒く開け放ち、ボク達を助けてくれたあの男性が押し入ってくる。手には何かの焼けた肉を持っており匂いがこちらに届く。
「食うか坊主?」
ボクがお肉に視線を奪われてしまっていることはすぐにバレ、男は骨の部分を強く握り肉を裂いて片方をボクに渡してくれる。
「あ、ありがとうございます……」
「それで坊主名前は?」
「冥矢です……」
「冥矢ね……オレはトールって言うんだ。こっちの子はリリィ。見て分かると思うが人間と魔族のハーフだ」
「ハーフ……それって珍しいん……ですよね?」
「何だお前おかしいこと言うな。珍しいに決まってんだろ」
やはりボクの今の認識は間違っていなかったらしく、この子のようなハーフはそうそう居ないらしい。
「あ、お連れの二人も無事ですのでご安心を。あちらで寝かせています。怪我や治癒魔法の連発による疲労でしばらく動けませんが」
二人は少し離れところで寝かされている。セリシアの方はあの後怪我を治すために全員に治癒魔法を連発してMPとかいうのを消耗しすぎたせいか、顔色が悪くしばらく起きそうにない。
「三人とも無事で良かったよ。じゃ、オレはあの魔族を殺しに行くからお前ら帰り道に気をつけろよ~」
「えっ!? あいつの居場所が分かったんですか!?」
「おう。オレの水魔法は探知機の効果もあってな。奴の腹を貫けなかった時点で念の為服に付着させておいたんだ。乾く前にさっさと行かねぇと」
トールは肉を飲み物のように流し込んで小屋から出て行こうとする。
「ちょっ、ちょっと待ってください!! ボクも行きます……!!」
「あ? いやいいよオレ一人で十分だし。どうしてもって言うなら別に止めねぇけど」
「ならどうしてもついてきます」
ボクも肉を貪り飲み込んで彼についていく。正直この人だけでも十分奴には勝てるだろう。だが何か心の奥底で引っ掛かりがある。このまま彼一人にしてはいけないような気がするのだ。
「ま、敵の数は一人だし見学も兼ねて好きにすれば」
そうして二人のことはリリィに任せてボク達は小屋を出て魔族が居るという場所まで歩いて向かう。
「あいつはどこら辺に?」
「そう遠くはない……あと五分もすれば出会すな。いくら魔族とはいえあの傷なら自己再生しようにも時間がかかるしどこかで休んでるんだろ」
空を見た感じ先程の戦いからあまり時間は経っていなさそうだ。今ここで奴の元に行けば確実に倒せる。
でも……倒した後はどうするんだろう?
この人はあの魔族を殺すと明確に言い実際容赦がなかった。こっちを殺そうとしてくるのだからそれが間違っているとは言えない。しかしそれでも問答無用で、反省の機会を与えず殺してしまうことに言葉にできない引っ掛かりを覚える。
「おい、もうすぐだぞ。一応いつでも動けるようにしておけ。お前の方にも攻撃が飛んでくるかもしれないからな」
「はい……」
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