28 / 57
一章 女神様と異世界と
26話 答え
しおりを挟む「うっ……あれ……なんともない?」
奴の近くの地面が抉れ草木が焼かれる。しかし奴は無事だ。その炎によって命を絶たれることはない。
「もう二度と……二度とっ……誰も襲うな……」
「え?」
「妖精族も、人間も、もう誰も襲わないと誓えるなら見逃す……」
もし誰かこの場に居れば間違いなくボクのことを殴り飛ばすだろう。それがボク自身だとしてもそうするはずだ。それくらい今自分がしていることが分からない。殺すべき相手を逃がそうとしてしまう自分へ感情の整理ができない。
「でも……姉さん……」
「いいから早く誓ってボクの前からもう消えろよ!!」
ボクは地面を強く殴りつける。言葉を上手く作れず地団駄を踏む子供のように。情けなく怒りをそこにぶつける。
「わ、分かりました!! も、もう二度とこんなことしません……!!」
嘘かどうかなんて確認する余裕なんてない。ボクは武器を取りそれを短剣へ変えて奴の衣服の一部と髪を切り取りそこら辺に撒く。
「早く行け!!」
奴は恐怖を顔に貼り付け、姉の死体を置き去りにして去っていく。
「くそ……どうして……」
ずっと悩みやはり追いかけようかと何度も思った。しかし答えは出ず体も動かない。ボクは里に戻ることすらできずその場に蹲るのだった。
「メイヤさん? 無事のようですね。それにこの死体……」
しばらくしてリリィが駆けつける。きっと里の方はもう魔物がいないことが確かめられたのだろう。
「セリシアさんに言われて駆けつけましたが杞憂だったようですね。それでもう片方は?」
「そこ……消し炭になったよ。死体すら残って……ない」
後ろめたい気持ちに包まれる。リリィの顔を見れない。
「へぇ……そうですか。なら里に戻りましょう。セリシアさんが心労で倒れてしまう前に」
疑われ質問が来ると思ったが案外呆気なくこちらの話を信じてくれる。それが余計に辛かった。
「冥矢君!!」
里に戻るなりセリシアが抱きついてくる。温かく柔らかい抱擁を与えられ、ボクの心も暖められる。
「く、苦しいよ……それよりルディやパティに他のみんなは?」
「あっ、そうだね。二人は命に別状はなかったんだけど……羽はもう……ないものを治すことはできないから……」
「そう……」
「で、でも飛べなくなるだけで今まで通り暮らせるし魔法も問題なく使えるから……ってこんな言い方良くないよね」
暗くなるボクを見て必死に励まそうと言葉を探すが、それにも限界がある。こんな状況では。
「他の方は犠牲者こそ出ましたが、魔物の数の割に被害は最小限で済んでいます。間違いなくあなた方のおかげです。そう落ち込まないでください」
「うん……そうだけど……」
今になってあの魔族はやはり見逃すべきではなかったのではという後悔が心の中に生まれ蠢く。気持ちがコントロールできなくなりそれに呼応するかのように視界が歪み出す。
「あ……れ……?」
体温が急激に下がり疲労が一気に襲ってくる。
あぁそうか……スキルが切れて……反動で……
強い衝撃を一回受けた後ボクの意識は暗闇へと引き摺り込まれるのだった。
☆☆☆
「はっ!?」
次に意識を覚醒させたのは日が照らす家の中だった。族長に貸してもらった空き家の中だ。
「おう起きたか坊主!」
すぐ側にはベルタさんが道具を弄っており、恐らく罠に使った物を整理しているのだろう。
「姉ちゃんなら今は怪我人の手当てに駆り出されてるぜ。緊急の人達は終わったが軽傷の人達のはまだ済んでないからな。それで俺は何かあったら呼べと言われてここに居るわけだ」
「なるほど……ベルタさんも無事で良かったです」
「フード被った嬢ちゃんに助けられてなんとかなったよ。随分悪運が強かったみたいだ。お礼を言いたかったんだが坊主が気を失ってすぐに里を出ちまって言えなかったんだよな」
リリィが……間に合ってて良かった。
「それよりお前さんいつここを出るつもりだ?」
「ここを出る……?」
「おぉそうだ。俺はここの復興をちょっと手伝って、ある程度したら……まぁ一週間後くらいには出ようと思ってるんだがそれで大丈夫か?」
「ボクはそれで良いです。助けられなかった分ここで役に立たないと……」
それだけではない。ボクはこの里を襲った犯人を一人独断で見逃してしまった。その罪は重い。だからそれを償わなくてはいけない。
「ちょっとお姉ちゃん流石に安静にさせてあげた方が……」
「いやいつ出ていくか分からないんだし早めに言い出さないと……」
ボクが一人思い詰めていると何やら扉の向こうが騒がしくなる。
「はぁ……何やってるんだ二人とも。ちょっと開けてくるから待ってろ」
ベルタさんが腰を上げ扉を開く。そこにはルディとパティが居た。元気そうでありつい昨日血を流していたとは思えない。
「あっ、ベルタさん……おはようございます」
二人はペコリと礼儀正しくお辞儀する。
「坊主は別に大丈夫そうだから遠慮する必要はないぞ。話があるなら中に入れ」
「あ、ありがとうございます……」
「うんありがとう!!」
二人は以前は見せなかった明るい表情を見せて家の中に入ってくるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる