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二章 矛盾
39話 姉妹の絆
しおりを挟む「お、お姉ちゃん……勝手に出ても大丈夫だったんですか?」
「まぁ夕飯までに戻ればいいんでしょ? 時間はあるし大丈夫だって」
あたしは部屋に案内された後、お姉ちゃんに探検すると言われ連れ出されていた。外は相変わらず霧が濃く、数十メートル先はもう見えない。なのであたし達は互いに手を繋ぎ逸れないようにする。
「何かこうしてると小さい頃を思い出すよな」
「えぇそうですね。探検と称してあたしを連れ出して、結果遠くに行きすぎて族長に怒られたこともありましたね」
「うっ……で、でもあの時はパティも乗り気だったろ!?」
「そうでしたね……いつもは見なかった景色。二人だけで色んな所を探検して……楽しかったです。今みたいに」
なんだかんだ言ってもあたしはお姉ちゃんとこうやってどこかに行くのは好きだ。二人だけが共有する視界で、より密接に接していられる気がするから。お姉ちゃんは基本的に雑で荒っぽいが、根は優しいし特にあたしが困っている時は自分のことを放っておいてまで一緒に悩んでくれる。この前の件だって、あたしのために自分だけでなんとかしようと錯綜していた。
「なぁパティ。もしお前がメイヤとその……付き合うとしてさ、そうなってもまたこうやって一緒に歩いてくれるか?」
「もちろんですよ。あたし達はずっと一緒ですよ」
メイヤさんが守ってくれた、あたしの唯一の家族。もうこれ以上失わない。そのためにあたしは勇気を出してこの旅について来た。二度と姉妹の仲が引き裂かれないように。
「……って、待ってください!! 何であたしとメイヤさんが付き合う前提なんですか!!」
「え……てっきりもう決まってるもんだと……パティもスルーしたじゃん」
正直言ってあたしはメイヤさんのことが好きだ。異性として。あの件からずっと心は彼に釘付けだ。
「まぁそれはいいとして……うわっ!!」
霧が濃くなり視界が悪くなったせいか、あたし達は農家の女性にぶつかってしまう。
「あっ、すみません!!」
あたし達二人いたせいか、体格の割に向こうの女性が倒れてしまう。すぐに謝るが女性からの反応はない。
怒らせちゃったかな……?
「あぁごめんごめん……気をつけてね……」
起伏のないな喋り。メイドさん達は仕事の都合なんだと納得していたが、ただの農家があのメイド達と全く同じトーンで話すのであたしは不気味さを覚え一歩退いてしまう。
「あっ、怪我してる! 大丈夫……か……っ!?」
彼女の手にできてしまった傷の手当てをしようとしたのだろう。お姉ちゃんはその時あたしより一手早くその異常に気づいた。手の傷から出血していない。傷を見た感じ擦りむいたにしてはそこそこ皮膚が地面に持ってかれており、本来なら血が垂れていてもおかしくない。
「あぁごめんなさいねぇ。わたし貧血気味で……あぁ寒い寒い。家に帰らないと……」
女性は虚な瞳でこちらに焦点を合わせず、まるで独り言のように呟き家の中に帰っていく。
「ねぇお姉ちゃん今の人……」
「い、いやもしかしたら本当に貧血とか体質かもしれないし……」
「ルディ様。パティ様」
「「ひゃぁぁぁ!!」」
あたし達は気配もなく後ろから声をかけられ同時に甲高い悲鳴を上げる。しかし話しかけてきたのはあのメイドだ。
「そちらには何もありません。進み過ぎると村の外に出てしまいますので屋敷にお戻りください」
「なぁメイド……あんたどうやってアタシ達を見つけたんだ? この霧の中で?」
確かにここから屋敷までは数百メートルはある。屋敷からはとてもじゃないが見つけるなんて無理だ。探知系の魔法やスキルも考えたが小さい村にいるいちメイドが使えるとも思えない。
「……直感に頼ったまでです」
それだけ言うと無言で屋敷の方へ歩き出す。ついて来いということだろう。
「パティ……気をつけて」
「うん……お姉ちゃんこそね」
あたしでもここは何かヤバいと察知する。しかしまだ何も分からない以上アクションは起こせない。あたし達は黙ってメイドさんについて行く。その先は体休めるオアシスか、それとも悪魔の口の中か……
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