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1.異世界へ

第3話 始業式

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走り続けてようやく、大きな建物がみえてきた。
高さは、東京タワーより少し小さいくらいのど迫力で、
入り口であろう扉に刻まれている龍とその横に片手に剣を持った剣士?のような文様が刻まれている。
「ついた!!」
安堵して、入り口前に息を切らしながら倒れそうになる。
「大丈夫?」
すぐに、誰かが栄神を支えてくれる。
「ありがとう。」
その瞬間、栄神の顔は困惑に変わる。
「は?」
「どうしたの?」
栄神を助け、親切に接してくれたのは
赤髪に少し銀髪がかった少女だった。
「校門の時の!?、あんたなんで俺に魔術なんかかけたんだよ!?」
なぜか、キョトンとした少女はこう言い放つ。


「誰かと勘違いをしているんじゃないかな?
初対面のはずだけど?」

「え?」

確かに、忘れるはずがない特徴的な髪に
日本人離れした顔。
間違いは無いはずだが、少女に嘘をついているような素振りはない。
栄神が、呆気あっけにとられていると、
5分前を告げるチャイムが鳴り出した。

「いけない!
もうこんな時間とりあえず座らないと!
えっと、名前は?
私はアンジェリカ・リゼットマルク。」

「栄神航生」

「サカガミコウキ?、航生でいいよね?」

ロイとは、違い馴れ馴れしく接してくる少女にかなりのギャップを感じて、
笑ってしまう。

「笑ってる場合じゃない!
いくよ!航生!」

「わかってるよ。アンジェリカ」

中に入るともう席は、ほぼとられていて
隅のあたりにしか空いてなかった。
仕方がないので、隅に歩き出そうとするとなぜかアンジェリカが叫ぼうとする。
しかし、遅れて遅刻しまいと駆け込んできた集団に声が遮られる。
栄神はそうとも知らずに、歩き出している。
程なくして、隅のあたりに着くと後ろを振り返り栄神は、言う。
「あちゃー、あの大群は通れねぇな。
席ぐらい確保してやるか。」
隅の席へ腰を降ろそうとすると、一斉に何故か辺りの生徒が顔を背ける。

「何をしている無礼者、汚い体でわらわの領域に踏み込むでない」

真後ろから、
聞こえた声に振り向いた瞬間、
四方から稲妻が押し寄せてくる。

「勘弁してくれよ!?、
今度はなんだ!」

栄神の半径1m範囲で、その稲妻は消え去る。

「ほう、やるではないか貴様名前は?」

「栄神航生だけど、なんで消えたんだ?」

「無意識、クククッこれは見事。興味が湧いたぞ航生とやら!」

続けざまに 愉快愉快!! と連呼しながらご機嫌な様子の少女。
よく見ると、背は小さく金髪で2つ結び、透き通るような肌に学生服の紋章にはⅠと刻まれている人形に近い美少女がいた。

(はっはぁーん、なるほどつまりはこう言うわけだ。
一年だから友達が欲しいだから、第一印象が大事。
始業式というこの場ならではの
コンタクト!!。
読めましたよ、ロリガール。
ここは、その策略に乗ってやろう!!)

「そうか、よかったな。
金髪ロリちゃん、あんたの名前は?」

何故か、顔を笑顔から血が煮えたぎるように真っ赤に染まっていく。

これまた何故か、口を開けていらっしゃるアンジェリカが隣に立っている。

そして、周りにいる一同は
避けるかのように離れ
ガード系の呪文?を完成させ始める。

「どうかしたのか?えっ?」
栄神は、こんなはずではなかったかと
頭の中で繰り返しながら、
挙動不審になる。
「妾の名前も知らず、そしてこの侮辱」

「あっ、ロリで怒ってんのかスマンスマン」

「やめなさいって!!」

焦り始めるアンジェリカさん。

「妾には、誇り高きルドミエ・バランダルという名前がある!!!!」

その刹那降り注ぐ流星群を栄神は、一生忘れない。

                 
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