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先生、好きです。
第3話
しおりを挟む卒業式から約ニ週間後──。
翌日の土曜日。
私は莉奈と駅で待ち合わせてから、通い慣れた通学路を歩いて学校へと向かっていた。
今日は約束の合格発表の日で、私たちはそれぞれ結果を確認してから今この道を歩いている。
「この道も久しぶりだねー」
「そうね、少し懐かしい気がするわ」
懐かしいと思うのは、時間の経過以外に制服じゃないからと言う理由もあるんだと思う。
高校生だった頃は、休日でもちゃんと制服で通っていて、私服で来たことは一度もない。
毎日、学校がない日常に卒業したんだと実感はしてきたけれど、こうして私服で学校に向かう瞬間も高校生には戻れないんだ云うことを痛感する。
少し寂しいな……。
だけど一歩大人になったって云うことだし、きっと良いことなんだよね。
お喋りをしながら数十分と掛かる道のりを歩き、学校に辿り着くと来客用の玄関に向かった。
受付けで名札を貰うと、私と莉奈は校舎へ入り職員室へと直行する。
これが来客用の名札か……!
職員室に来ると扉の窓から中を覗き込み、担任の姿を見つけた。
「先生いたよ!」
「そう、なら入るわよ」
姿を見つけた私がボソリと隣りにいる莉奈に伝えると、莉奈は普通に職員室の扉を開けて中に入った。
物怖じしない莉奈さまさすが!
私なんか、何て言って入ろうか迷ってたのに。
「先生、久しぶりぃ!」
「おぉ、筒見と梅原か! 久しぶりだなぁ! 元気か?」
「見ての通り元気だよ!」
「元気ですよ」
「良かった、良かった」
しばらく見なかった担任の顔に、私は暖かい気持ちになる。
先生ってやっぱり癒やしキャラだよね。
改めて良い先生に巡り会えてたんだなぁなんて思う。
──それはさて置いて。
先生に早速、報告しないとね!
「それでね、先生。大学の結果なんだけど……」
少し声を落として単刀直入に話しをすると、肩を落とした私の様子に先生は慌てたように顔を変えた。
「ま、まさか不合格だったのか……!?」
「それが……」
私はもじもじして時間を稼ぐと、莉奈の溜め息が悪い方へと伝わり、先生は慌てて目の前の書類に手を掛けた。
「ちょっと待ってろよ!
それなら予定通り専門学校の──」
「……合格してたよ!!」
「そうか、落ち……。 ──合格!?」
急に明るい顔で言った私に、先生は勢いよく振り返った。
狙い通りの反応に「あはは」と声を上げて笑う。
「ごめんね、先生! 一度やってみたかったんだ!」
「お前は全く……。 驚かせないでくれよ……」
脱力して呟く先生の様子に、莉奈は呆れたように溜め息をこぼした。
「先生のおかげだよ。本当にありがとうね!」
「全く筒見はイタズラが大好きだなぁ。
でも嬉しいことを言ってくれたから許す!
そんで僕からもありがとう。合格おめでとう!」
「ありがとう!
この先も先生が親身になって励ましてくれたこと忘れないからね」
「うぉぉ、筒見ぃ……!
本当にいい子に育ったなぁ……!!」
泣き叫ぶ先生に私は大げさだなぁと笑った。
感度しているとこへ、黙っていた莉奈が口を挟む。
「水をさすようですが、私も合格してました」
「そうなのかぁ、梅原も良かったなぁ……!」
ありゃりゃ。
もっと泣いちゃった。
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