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先生、好きです。
第2話
しおりを挟むその後、“高校生最後の登校”と云う瞬間まで数カ月間。
私と莉奈と啓太は、徹先生を揶揄いながら学校生活を謳歌していた。
もちろん大好きアピールも欠かさずしていたけれど、前よりも大袈裟にするようなことはせず、さり気ないアプローチを重ねて行った。
そして、あっと言う間に時は経ち──。
最後の高校生活を迎えていた。
「莉奈ー! またあとでね!」
「えぇ、また!」
卒業式が終わり、最後のホームルームが終わると、私はお母さんと一緒に教室から出た。
またあとでと莉奈に言ったのは、午後から遊ぶ約束をしてるからだ。
啓太たちを含めた男女6人が集まって、一週間後に予定している卒業旅行の打ち合わせをすることになっている。
教室から出た私はお母さんと一緒に保健室へ立ち寄った。
「徹先生! 挨拶しに来たよ!」
「おぉ」
部屋には日向先生は居らず、徹先生の姿しかいなかった。
でも、日向先生ならきっと外の玄関にいるはずだよね。
あとでちゃんと会えるはず……。
そう判断して、私は気にせず徹先生と話しをした。
徹先生は私のお母さんのことに気づき挨拶をする。
「──こんにちは、養護教諭の月城 徹です」
「あぁ、貴方が徹先生なんですね。
どうも、すみません。娘が大変お世話になりました」
私の横で深々と頭を下げるお母さんに徹先生は慌てたように言った。
「頭を上げて下さい。
筒見さんには毎日来てもらって楽しませてもらいましたよ」
「へぇ、先生楽しかったんだぁー?」
「筒見は調子にのるな」
「あはは!」
「娘はホントに先生のことが好きみたいで、色々迷惑かけたと思いますが、受験では力になってくれたと聞いてます。
本当にありがとうございました」
「いえいえ、受験勉強は筒見さんの力ですから。
それに筒見さんは節度をちゃんと守ってくれたので、わたしもですが他の先生も良い子だと思ってます」
徹先生の言葉にドキッとした。
他の先生がどう思っているかなんて知らなかったから。
今までの行動は間違ってなかったんだ……。
莉奈の言うことちゃんと聞いておいて良かった。
「筒見、卒業おめでとう」
「……ありがとう、徹先生」
私は涙が出そうになったのを瞬きをして何とか堪えた。
徹先生に言われただけだこんなに嬉しいんだ。
涙をこらえるのって難しいんだな。
「××日は合否発表で報告しに来るからよろしくね!」
「あぁ、俺も保健室にいるからな。 楽しみにしてるぞ」
「いつもは来るの嫌がるくせにー!」
「これは別だ。
一応、教えてた側としては気になるんだよ」
「あぁ。それもそっか!」
「柚乃、そろそろ行くわよ」
「はーい!」
なんだろう。
何か名残り惜しいな……。
「先生、絶対に忘れないでね!」
「分かったから、ほら帰れ。 午後はみんなと遊ぶんだろ?」
「うん! えっと……、先生バイバイ!」
何て言って別れようか分からなくてありきたりな言葉を言うと、徹先生は表情を強張らせた。
「本当にバイバイで良いのか?」
「──やっぱり違う!徹先生、またね!」
そうだった。
また会えるんだから“またね”で良かったんだ。
私が言い直すと、徹先生は笑って「またな」と言ってくれた。
それが嬉しくて私は笑みを向ける。
廊下からまたお母さんに名前を呼ばれて、先生に手を振りながら慌てて保健室から出た。
しばらく廊下を歩いていると、お母さんが話し掛けて来る。
「良かったわね」
「ん……?なにが?」
「あら……」
首を傾げるとお母さんは唖然として固まって、その後直ぐに笑う。
「ふふ、またねって言ってもらえて良かったわね」
「うん!」
その日_
私は高校を卒業した──。
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