公爵家令嬢と婚約者の憂鬱なる往復書簡

西藤島 みや

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2通目 グリード第二皇子から

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パルマローザへ

天候が不安定な日がつづいているが、御母堂の具合はどうだろうか?両陛下も兄も、そのことについては私になにも説明しないので少々心配している。
春とはいえ冷える日もある。とりあえず、東洋の妙薬だという茶を贈るので、試してはどうだろうか?
君もあまり心配しすぎないように。

さて、本題だ。

まず、先日の書類にどんな不備があったというのか、私には皆目検討がつかないのだが、君はつまり契約の破棄のサインをくれれば良いのだ。
せっかく忙しい時間を割いて書いた書類の、僅かな違いをあげつらうような真似はやめてくれ。捨てるな。

それと、何なんだ四阿あずまやが一年持たない庭って?普通の庭を作る際には四阿のひとつやふたつ設えるはずだろう?そんな、毎年麦を踏むようないい方で、今年も四阿の季節……とか書かれてもピンとこない。お前の家では象でも飼っているのか?

ところで、私が覚えている限り、君は、お互いに愛しあう伴侶が別に現れた際には身を引くこと、と契約書に書いていただろう?覚えているか?

つまり、いまは彼女たちは僕の元を去ったけれど、一時は互いに燃え上がるような愛をかんじていた。だから、婚約は破棄できるはずだ。そのことを国務大臣に話したところ、前向きに検討をしておくといわれたので、ほっと胸を撫で下ろしたところだ。
いまに完璧な書類を国務大臣が持っていくから、首を洗って待っていろ。

ドレスの仕立については、①のデザインを強く勧める。私は皇太子ではないので、刺繍は徴であるハクモクレンが良いだろう。
というか、③のどこが君に似合いそうなんだ。クレイジーな見た目になることは請け合いだ。鏡をみろ鏡を、10人いたら9人はお前と似たような顔をした女だぞ、田舎の芽キャベツ農家の娘みたいな容姿だ。
芽キャベツがセクシーな大胆花嫁になったところで、誰が喜ぶんだ。自重してくれ、芽キャベツ。

それから、靴屋が私のところへ確実に男物の靴の請求書をまわしてきたが、購入した覚えがない。勝手に私の名で予算をつかうな。誰なんだ、ラセル伯爵って。

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