公爵家令嬢と婚約者の憂鬱なる往復書簡

西藤島 みや

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7通目 パルマローザより

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親愛なるグリードさま

  先日は優しいお手紙をありがとうございました。あの日は私も友人も、公爵家の馬車で近くの湧水池へゆき、ジェンダル伯爵さまの別荘に招待をうけて、4日ほど留守をしておりましたので、帰りつきましてからその話をうかがい、驚いている次第でございます。

離宮の馬車には離宮の侍女が三人乗っていたそうで、ジェンキンスがそれはもう楽しげに捜査しています。結婚早々、また何人も愛妾が増えて帰ったら新妻はどうおもうのかしら?ちょっと悪いことをした気がします。皇族でない場合、愛妾の数に上限をもうけたほうがいいのではないかしら?

お尋ねになった、こちらでの待遇ですが、特段宮殿とかわったところはありません。私は確かに婚約者ですが、そのうちべつのかたに代わるため、たいして厚待遇にならないのはグリード様も折り込み済みかと思っておりました。

ただ、友人達の手前もあり食事などはきちんとでておりますし、私は公爵家の使用人も数人つれておりますからそう不便はありませんでした。グリード様の顔に泥を塗るような不届き者はおりませんから、どうか寛大にとりはからってさしあげてくださいませね。

パンゲアにはそんな法律があるとははじめてしりました。だから公姫が大公の宮殿で60歳のお誕生日をお祝いすることになるのですね。幼いころ、パンゲア視察に同行なさったグリード様が、おもどりになって私にお掛けになった言葉を覚えておいでですか?

「私はパンゲアの妖精シュミューラと結婚することにした、婚約を破棄しろ」
です。そのような法律があったとは存じ上げず、すっかりお忘れなのかと思っておりました。
なるほど、愛し合うふたりはそんな風にして引き裂かれたのでございますね。心中お察しいたします。


四阿はうちの庭にある特異な現象のせいで、一年もたないのです。グリード様とジェンキンスに関連して私はたしかに女性の友人がだいぶへってしまいましたが、それは四阿には無関係ですのでご心配にはおよびません。

父とフィーメール伯爵が心配しておいでなので、少し早めですが都へもどる予定でおります。ですので、お会いするのはエルバンテス子爵の夏の夜会になるかと存じます。今年はひときわ珍しい催しになるそうですので、いまから皆わくわくしております。


                                 パルマローザ


追伸  いまジェンキンスが、賊を捕まえたと飛び出してゆきました。帰るまでに事件は解決しそうです。

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