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【10】第一王子、マルス・モルドーラン
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十八歳になったわたしには、婚約者がいる。
この国の第一王子、マルス・モルドーラン様だ。
本当は第二王子のエリック様と婚約を結んでいたのだけれど、国王夫妻に招かれて王城へと挨拶に伺った際、マルス様と目を合わせてしまった。
エリック様とは犬猿の仲らしく、おかげで今の今まで挨拶の機会もなかった。でも、その日はマルス様からわたしの前に姿を現し、そして……エリック様との婚約を強引に破棄させた。
そしてあろうことか、マルス様は「メル・メロール。お前は今日から俺の女だ」とわたしに宣言した。
エリック様から、訳の分からない婚約破棄を申し付けられたときは、頭が混乱した。
けれどもその実態を理解すれば、なるほどと頷いてしまう。
元々、エリック様との婚約も、王家主催のお茶会で目を合わせたのが切っ掛けだった。
こう言っては申し訳ないけれど、エリック様を対象とした恋愛的な感情は欠片もない。
だから婚約を破棄すると言われても全く問題なかったわけだが、その裏ではマルス様がかかわっていた。
その結果、マルス様が率いる第一王子派と、エリック様が率いる第二王子派が、真っ向から対立する形が出来上がってしまった。
それもこれも全てはわたしの『溺愛』が招いたものだ。
ここ最近、よく噂を耳にする。
エリック様が、マルス様の手からわたしを奪い返すために、王国を相手に革命を起こすかもしれないと。
わたしには、それ自体を止める権利はない。
でも一つだけ言いたい。わたしを戦争の種にしないでほしい。原因はわたしだと思われてしまうのは困る。
できることなら、お二人には血の繋がった兄弟らしく仲良くしていただきたいものだけど、わたしがいる限り、実現することはなさそうなのが残念でならない。
悩みの種が尽きることなく、日は跨いでいく。
そして明日、わたしは遂にそのときを迎えることになる。
城下町にある大広場を舞台に、マルス様との婚約を正式に発表するときが来たのだ。
それが終われば、わたしは終わる。
今後一生、籠の中の鳥として生きる人生を強いられる。
「……全部、『溺愛』のせい」
ぽつりと、本音が漏れる。
わたしの十八年間は、『溺愛』に振り回されっ放しだった。
そして残りの人生も同じく……。
その夜、わたしは最後に一人で城下町をぶらつくことにした。
悪い人たちがいたとしても、わたしには『溺愛』がある。だから心配するようなことは起こらない。
でも、いざこれが最後だと思うと、無駄に時間だけが過ぎていく。
何をしたところでマルス様との婚約を解消することはできないし、鳥籠の外に出ることは叶わない。
「……ギルド」
そろそろ帰ろう。
そう思ったとき、たまたま通りかかったのは冒険者ギルドだった。
あの日、彼に家まで送り届けてもらった。
それ以来、この建物には一度も近づかなかった。興味を示すことがないように、両親がそれを禁じたからだ。
「元気にしているかしら……」
隣国に渡って以降、彼の話を耳にすることはなくなった。
今頃、彼はどこで何をしているのだろうか。
ギルドの前で立っていると、まるで昨日のことのように思い出すことができる。
だからだろうか、わたしは懐かしさからギルドに足を近づけ、その扉を開けていた。
「あ」
つい、声が漏れる。
ギルドの中に入ると、片隅のソファにだらしない格好で腰掛け眠る人物に目が留まった。
どうして、ここにいるのか。
あのとき、隣国に行ったはずなのに。
一歩、近づく。
更にもっと距離を詰めていく。そして、
「……ロック」
気付いたとき、わたしは彼の名を呼んでいた。
この国の第一王子、マルス・モルドーラン様だ。
本当は第二王子のエリック様と婚約を結んでいたのだけれど、国王夫妻に招かれて王城へと挨拶に伺った際、マルス様と目を合わせてしまった。
エリック様とは犬猿の仲らしく、おかげで今の今まで挨拶の機会もなかった。でも、その日はマルス様からわたしの前に姿を現し、そして……エリック様との婚約を強引に破棄させた。
そしてあろうことか、マルス様は「メル・メロール。お前は今日から俺の女だ」とわたしに宣言した。
エリック様から、訳の分からない婚約破棄を申し付けられたときは、頭が混乱した。
けれどもその実態を理解すれば、なるほどと頷いてしまう。
元々、エリック様との婚約も、王家主催のお茶会で目を合わせたのが切っ掛けだった。
こう言っては申し訳ないけれど、エリック様を対象とした恋愛的な感情は欠片もない。
だから婚約を破棄すると言われても全く問題なかったわけだが、その裏ではマルス様がかかわっていた。
その結果、マルス様が率いる第一王子派と、エリック様が率いる第二王子派が、真っ向から対立する形が出来上がってしまった。
それもこれも全てはわたしの『溺愛』が招いたものだ。
ここ最近、よく噂を耳にする。
エリック様が、マルス様の手からわたしを奪い返すために、王国を相手に革命を起こすかもしれないと。
わたしには、それ自体を止める権利はない。
でも一つだけ言いたい。わたしを戦争の種にしないでほしい。原因はわたしだと思われてしまうのは困る。
できることなら、お二人には血の繋がった兄弟らしく仲良くしていただきたいものだけど、わたしがいる限り、実現することはなさそうなのが残念でならない。
悩みの種が尽きることなく、日は跨いでいく。
そして明日、わたしは遂にそのときを迎えることになる。
城下町にある大広場を舞台に、マルス様との婚約を正式に発表するときが来たのだ。
それが終われば、わたしは終わる。
今後一生、籠の中の鳥として生きる人生を強いられる。
「……全部、『溺愛』のせい」
ぽつりと、本音が漏れる。
わたしの十八年間は、『溺愛』に振り回されっ放しだった。
そして残りの人生も同じく……。
その夜、わたしは最後に一人で城下町をぶらつくことにした。
悪い人たちがいたとしても、わたしには『溺愛』がある。だから心配するようなことは起こらない。
でも、いざこれが最後だと思うと、無駄に時間だけが過ぎていく。
何をしたところでマルス様との婚約を解消することはできないし、鳥籠の外に出ることは叶わない。
「……ギルド」
そろそろ帰ろう。
そう思ったとき、たまたま通りかかったのは冒険者ギルドだった。
あの日、彼に家まで送り届けてもらった。
それ以来、この建物には一度も近づかなかった。興味を示すことがないように、両親がそれを禁じたからだ。
「元気にしているかしら……」
隣国に渡って以降、彼の話を耳にすることはなくなった。
今頃、彼はどこで何をしているのだろうか。
ギルドの前で立っていると、まるで昨日のことのように思い出すことができる。
だからだろうか、わたしは懐かしさからギルドに足を近づけ、その扉を開けていた。
「あ」
つい、声が漏れる。
ギルドの中に入ると、片隅のソファにだらしない格好で腰掛け眠る人物に目が留まった。
どうして、ここにいるのか。
あのとき、隣国に行ったはずなのに。
一歩、近づく。
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「……ロック」
気付いたとき、わたしは彼の名を呼んでいた。
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