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濡れ衣と母
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酷い目に遭った。
あたしはこのできごとをどのように隠そうかと考えた。恥ずかしかったし、そもそも、どう語ればよいのか悩ましかった。
「初対面の男に付いて行ったあなたにも落ち度があるんじゃないの」
語ったところで、こんな批判をされまいかと、恐れもした。
普通なら親に泣き付くのだろう。しかし、あたしの場合、母に言うことは考えられなかった。
母はあたしの粗探しばかりしていた。そして、粗を見つけると、とにかく小馬鹿にした。
あたしが涙を見せると、唇の端をゆがめ、泣き虫だと言った。弱虫だと冷たく笑った。
「あたしはお母さんの子どもじゃないの? 何で優しくしてくれないの」
幼いころ、あたしは泣きながら言ったことがある。
すると母は、あたしの泣きまねをして、あたしと同じ口調で、あたしの言ったことを復唱した。そうして、
「言ってて恥ずかしくないの? 甘えてからに」
「だって、ゆきちゃんには……」
あたしの言葉は涙で詰まった。
「甘えるなっ、お姉ちゃんのくせに」
母は大声をあげて、あたしの頬を打った。
「だって……」
「だっても、へちまもあるかっ」
母はあたしの髪をつかみ、押さえ付けるようにして横へと引っ張った。
「痛いっ」
髪がごっそり抜けるのではないかと思えた。あたしはバランスを崩しながらも、頭を母の手の動きに合わせた。
「いいかい、二度と言うんじゃないよ」
あたしは動揺して、言葉が出ない。
「返事っ」
母はまた声を大きくする。
「……はい」
あたしは声を絞り出した。
このときの母の目は敵意に満ちていた。たまたま虫の居所が悪かっただけとは思えなかった。猛獣を見て、理屈抜きに感じる恐ろしさを、あたしは母に感じとっていた。
けれども、優しく接してくれるときもある。その違いがどこからくるのか分からなかった。だから、あたしは地雷源を歩くような気持ちで日々を過ごしていた。
あたしはこのできごとをどのように隠そうかと考えた。恥ずかしかったし、そもそも、どう語ればよいのか悩ましかった。
「初対面の男に付いて行ったあなたにも落ち度があるんじゃないの」
語ったところで、こんな批判をされまいかと、恐れもした。
普通なら親に泣き付くのだろう。しかし、あたしの場合、母に言うことは考えられなかった。
母はあたしの粗探しばかりしていた。そして、粗を見つけると、とにかく小馬鹿にした。
あたしが涙を見せると、唇の端をゆがめ、泣き虫だと言った。弱虫だと冷たく笑った。
「あたしはお母さんの子どもじゃないの? 何で優しくしてくれないの」
幼いころ、あたしは泣きながら言ったことがある。
すると母は、あたしの泣きまねをして、あたしと同じ口調で、あたしの言ったことを復唱した。そうして、
「言ってて恥ずかしくないの? 甘えてからに」
「だって、ゆきちゃんには……」
あたしの言葉は涙で詰まった。
「甘えるなっ、お姉ちゃんのくせに」
母は大声をあげて、あたしの頬を打った。
「だって……」
「だっても、へちまもあるかっ」
母はあたしの髪をつかみ、押さえ付けるようにして横へと引っ張った。
「痛いっ」
髪がごっそり抜けるのではないかと思えた。あたしはバランスを崩しながらも、頭を母の手の動きに合わせた。
「いいかい、二度と言うんじゃないよ」
あたしは動揺して、言葉が出ない。
「返事っ」
母はまた声を大きくする。
「……はい」
あたしは声を絞り出した。
このときの母の目は敵意に満ちていた。たまたま虫の居所が悪かっただけとは思えなかった。猛獣を見て、理屈抜きに感じる恐ろしさを、あたしは母に感じとっていた。
けれども、優しく接してくれるときもある。その違いがどこからくるのか分からなかった。だから、あたしは地雷源を歩くような気持ちで日々を過ごしていた。
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