10 / 20
武闘派たーくん
翌日、朝方出ていた濃い霧が晴れると、前日の雨で埃が洗い流されたのか、山の空気は一段と澄み渡っているかのようだった。
朝の陽射しに輝く緑が俺の荒んだ心を癒してくれるようだ。
「おはよー、初号機」
「二日酔いは大丈夫?初号機」
「今朝は暴走してないの?」
昨夜の宴会以降、すっかり皆んなに初号機として親しまれてしまっていた。
果たしてこれは、吉と出るのか凶と出るのか?どっちなのだろう。最後の砦、真矢君にはいったいどんな印象を与えたのだろうか。変な奴だと烙印を押されていなければいいのだが。
「おはよー、エヴァ初号機!」
真矢君が開口一番、大きな声で挨拶してきた。
恥ずかしい。あんな失態を見られてしまって、俺はどう対応したらいいのだろうか。
「や…やぁ、おはよう」
「どうしたの?元気無いね?」
そりゃあもう、あんな姿を晒してしまったら、ブラジルまで穴を掘って入りたいくらいだよ。
「あのさ、俺は普段はあんな風じゃなくて」
「分かってるって。同室なんだからそれくらい分かってるって」
「それならいいんだけど」
真矢君には、どちらの俺が良かったのだろうか?
シラフの大人しめな俺と、酔った時のハイテンションな俺と、どちらをお求めなのでしょうか?
「だいたい、普段からあんなだったら、本人も周りも疲れるでしょ?自分らしくでいいんだよ」
良かった、どうやら普段どおりでいていいらしい。
「ところでさ、今は彼氏いるの?」
「いや、いないけど」
「そしたらさ、あとで話があるんだけどいいかな?」
「え?何?今でもいいけど」
「いや、少し心の準備が必要だから、やっぱり後がいい」
何だろう?心の準備が必要な話って。まさか、これって告白されるってことだったりして。
「分かった、じゃあまた後でね」
「よろしくねー」
真矢君は、時折俺の方を振り返りながら、大きく手を振って仲間の輪の中へ行ってしまった。
『これって、恋の始まり?なのかな?』
「これって恋の始まりなのかな?とか、思ってる?」
「うわー!なんだよ、たーくんかよ。ビックリさせるなよ」
俺はいつの間にか後ろにいたたーくんに、耳元で内心思っていたことを言い当てられて、思わず大きな声を出してしまった。
「真也君、いい人そうだよね。明るいし、面白いし」
「お似合いだと思うよ。もし付き合えたら、全力で応援するからね」
「あ…ありがとう」
何だか、俺よりたーくんの方が盛り上がっているように見える。たーくんは、友だち想いの優しい子だから、俺の幸せを我が身のように喜んでくれているのだろう。
奥多摩のさらに奥の山の中とはいえ、この日の陽射しはすでに夏を思わせるような強さだった。
俺は、特にやる気の無いテニスを適当に切り上げて、コートから少し離れた東屋で陽射しをやり過ごすことにした。
すると、そこに真矢君がやって来た。
「休憩?」
「あっ、うん。暑いなかのテニスはしんどいね」
嘘つけー!やる気が無いだけのくせに!
「今、さっきの話の続きしてもいい?」
来た!これはやはり告白か?なんか真矢君がシリアスな表情をしている。
「実は俺、君の事が気になってるんだ。いきなり付き合ってくれとは言わないから、良かったら彼氏前提で仲良くなってほしい」
来たーーー!本当に告白、来たーーー!
「えっ、俺なんかでいいの?」
と、言いながら、内心では既にOKなんだけどね。
「勿論だよ。よろしくお願いします」
真也君は、腰を直角に曲げて右腕を差し出して来た。これを断る理由などあるものか。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺は、少し躊躇いがちに差し出された手を握った。
すると、真也君の表情がこれまでに無いほどに明るく輝いた。
そして俺は、力いっぱい抱きしめられた。真也君って、明るいおちゃらけキャラなのかと思ったら、案外情熱的な一面もあるんだなぁ。
「おめでとー!」
その時、東屋の柱の陰から、たーくんが飛び出して来た。
「な、何?何でたーくんがここにいるの?」
「実はトイレの帰りに2人の姿を見かけて、これはもしやと思って隠れてたんだ」
もー、たーくんたら、まるで市原悦子みたいだな。
「本当に良かったー!おめでとう!」
たーくんは、全身で喜びを爆発させながら、俺の体に抱きついて来た。
その時。
「おい!テメェー、俺の彼氏に何してんだ!?」
さっきまでの笑顔は消え失せ、そこには大魔神の鬼の形相のような真矢君がいた。
「えっ?何って…」
固まる俺とたーくん。
すると真矢君は、俺からたーくんを力いっぱい引き剥がし、たーくんはそのせいで尻餅をついた。
「お前もお前だ!俺という存在がありながら、別の男に色目なんか使うから隙だらけじゃないか!」
「べ、別にそんなつもりは。それに、たーくんはただの友だち…」
次の瞬間、俺の頬に激痛が走り、俺は吹っ飛ばされて地面にもんどり打って倒れた。
えっー!?何が起きたの?
真矢君は、何が起きたか理解できずに動けない俺の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
その時!
「待てテメェ!」
普段はいつもニコニコ、温厚なたーくんが、真矢君に負けない鬼の形相で真矢君に回し蹴りを喰らわせた。
「な、何するんだよ!」
いつもとイメージの違うたーくんに、真矢君も面食らったようで狼狽えている。
「問答無用!彼氏に手を挙げるような奴は許さん!」
そうだった。たーくんは意外にもキックボクシングの元チャンピオンだった。
そこから先はもうたーくんが圧倒。
気がつくと、真矢君は額から地面に崩れ落ちて動かなくなっていた。
こうして俺は、たーくんのおかげで辛うじてDV男から逃れる事ができた。
朝の陽射しに輝く緑が俺の荒んだ心を癒してくれるようだ。
「おはよー、初号機」
「二日酔いは大丈夫?初号機」
「今朝は暴走してないの?」
昨夜の宴会以降、すっかり皆んなに初号機として親しまれてしまっていた。
果たしてこれは、吉と出るのか凶と出るのか?どっちなのだろう。最後の砦、真矢君にはいったいどんな印象を与えたのだろうか。変な奴だと烙印を押されていなければいいのだが。
「おはよー、エヴァ初号機!」
真矢君が開口一番、大きな声で挨拶してきた。
恥ずかしい。あんな失態を見られてしまって、俺はどう対応したらいいのだろうか。
「や…やぁ、おはよう」
「どうしたの?元気無いね?」
そりゃあもう、あんな姿を晒してしまったら、ブラジルまで穴を掘って入りたいくらいだよ。
「あのさ、俺は普段はあんな風じゃなくて」
「分かってるって。同室なんだからそれくらい分かってるって」
「それならいいんだけど」
真矢君には、どちらの俺が良かったのだろうか?
シラフの大人しめな俺と、酔った時のハイテンションな俺と、どちらをお求めなのでしょうか?
「だいたい、普段からあんなだったら、本人も周りも疲れるでしょ?自分らしくでいいんだよ」
良かった、どうやら普段どおりでいていいらしい。
「ところでさ、今は彼氏いるの?」
「いや、いないけど」
「そしたらさ、あとで話があるんだけどいいかな?」
「え?何?今でもいいけど」
「いや、少し心の準備が必要だから、やっぱり後がいい」
何だろう?心の準備が必要な話って。まさか、これって告白されるってことだったりして。
「分かった、じゃあまた後でね」
「よろしくねー」
真矢君は、時折俺の方を振り返りながら、大きく手を振って仲間の輪の中へ行ってしまった。
『これって、恋の始まり?なのかな?』
「これって恋の始まりなのかな?とか、思ってる?」
「うわー!なんだよ、たーくんかよ。ビックリさせるなよ」
俺はいつの間にか後ろにいたたーくんに、耳元で内心思っていたことを言い当てられて、思わず大きな声を出してしまった。
「真也君、いい人そうだよね。明るいし、面白いし」
「お似合いだと思うよ。もし付き合えたら、全力で応援するからね」
「あ…ありがとう」
何だか、俺よりたーくんの方が盛り上がっているように見える。たーくんは、友だち想いの優しい子だから、俺の幸せを我が身のように喜んでくれているのだろう。
奥多摩のさらに奥の山の中とはいえ、この日の陽射しはすでに夏を思わせるような強さだった。
俺は、特にやる気の無いテニスを適当に切り上げて、コートから少し離れた東屋で陽射しをやり過ごすことにした。
すると、そこに真矢君がやって来た。
「休憩?」
「あっ、うん。暑いなかのテニスはしんどいね」
嘘つけー!やる気が無いだけのくせに!
「今、さっきの話の続きしてもいい?」
来た!これはやはり告白か?なんか真矢君がシリアスな表情をしている。
「実は俺、君の事が気になってるんだ。いきなり付き合ってくれとは言わないから、良かったら彼氏前提で仲良くなってほしい」
来たーーー!本当に告白、来たーーー!
「えっ、俺なんかでいいの?」
と、言いながら、内心では既にOKなんだけどね。
「勿論だよ。よろしくお願いします」
真也君は、腰を直角に曲げて右腕を差し出して来た。これを断る理由などあるものか。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺は、少し躊躇いがちに差し出された手を握った。
すると、真也君の表情がこれまでに無いほどに明るく輝いた。
そして俺は、力いっぱい抱きしめられた。真也君って、明るいおちゃらけキャラなのかと思ったら、案外情熱的な一面もあるんだなぁ。
「おめでとー!」
その時、東屋の柱の陰から、たーくんが飛び出して来た。
「な、何?何でたーくんがここにいるの?」
「実はトイレの帰りに2人の姿を見かけて、これはもしやと思って隠れてたんだ」
もー、たーくんたら、まるで市原悦子みたいだな。
「本当に良かったー!おめでとう!」
たーくんは、全身で喜びを爆発させながら、俺の体に抱きついて来た。
その時。
「おい!テメェー、俺の彼氏に何してんだ!?」
さっきまでの笑顔は消え失せ、そこには大魔神の鬼の形相のような真矢君がいた。
「えっ?何って…」
固まる俺とたーくん。
すると真矢君は、俺からたーくんを力いっぱい引き剥がし、たーくんはそのせいで尻餅をついた。
「お前もお前だ!俺という存在がありながら、別の男に色目なんか使うから隙だらけじゃないか!」
「べ、別にそんなつもりは。それに、たーくんはただの友だち…」
次の瞬間、俺の頬に激痛が走り、俺は吹っ飛ばされて地面にもんどり打って倒れた。
えっー!?何が起きたの?
真矢君は、何が起きたか理解できずに動けない俺の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
その時!
「待てテメェ!」
普段はいつもニコニコ、温厚なたーくんが、真矢君に負けない鬼の形相で真矢君に回し蹴りを喰らわせた。
「な、何するんだよ!」
いつもとイメージの違うたーくんに、真矢君も面食らったようで狼狽えている。
「問答無用!彼氏に手を挙げるような奴は許さん!」
そうだった。たーくんは意外にもキックボクシングの元チャンピオンだった。
そこから先はもうたーくんが圧倒。
気がつくと、真矢君は額から地面に崩れ落ちて動かなくなっていた。
こうして俺は、たーくんのおかげで辛うじてDV男から逃れる事ができた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。