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後悔なんてしない(シリアスレベルMAX)
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「どうしたの?聞いてる?」
「あっ…うん、聞いてる」
いったい今頃どういう用件なのだろう? ていうか、この声は本物のコウセイなの?
誰かがコウセイの名前を騙って、俺の事を揶揄っているのでは?
「一年ぶり、だね」
「本当にコウセイなの?」
「そうだよ、信じられない?」
信じろって方が無理じゃない?本人が言っているだけで、他に何も証明のしようが無いのだから。
「実は、今シンガポールにいるんだ」
「そう」
「仕事でね」
「そう」
「日本を発つ前に電話したんだけど、繋がらなくって」
「そう」
「それで今日、ダメもとで電話してみたら出てくれて」
「うん」
別にコウセイからの電話だと知ってて出たわけじゃないんだけどね。
「近いうちに一時帰国するから会えないかな?」
「一つ聞いていい?」
「何?」
俺には、どうしてもコウセイに聞きたい事があった。
いったい自分の何が悪くて別れることになったのか、それをハッキリさせたい。
「どうして俺はフラれたの?」
「あー、それは」
ドキドキ。今、1年間悩み続けてきた謎が解明される。
「それは、お前がたーくんとかいう奴と仲が良すぎたことに嫉妬したのと、その頃にちょうど海外の長期出張が重なって、面倒臭くなってしまったんだ。ごめん」
そんな理由で?本当にそんな理由で?
この1年間、俺は何を思い悩んできたのだろう?
「それで、さっきの話なんだけど、近々一時帰国することになったから会わない?それでもし良かったら、またやり直せないかな?」
なんつー虫のいい話。でも、正直言ってまだ未練が残りまくり。もし、もう一度本当にやり直せるなら、あの頃の続きを感じてみたい。
「分かった、考えてみる」
「ありがとう。来月の連休に帰国する予定だから、また連絡する」
こうして俺は、普通の人なら許せないであろう理由を水に流し、コウセイとやり直す決意をする。
それから毎日、お互いにメールを交換したりして、再び関係を深めていった。
しかし、再会を再来週に控えた頃、コウセイからの連絡はまた突然途絶えた。
メールを送っても返事は無く、電話をしても繋がらず、約束の日が来たら連絡をくれるかと願っていたが、ついに当日になっても音沙汰無しだった。
何か悪いことしたかな?何か怒らせることしたかな?
送ったメールを何度も見返してはみたけど、そんな心当たりは見つからず、さすがの俺も今回ばかりはブロックするに至ったというのが経緯だった。
それから十数年。こうして店子と客という立場で再会するまで、コウセイのことは俺の記憶の奥底に封印してきた。
「あの時は、本当にごめん。悪かった」
「それで、2回目の音信不通は何が原因だったんですか?」
それまで黙って俺の話に耳を傾けていたユータさんが口火を切った。
「それなんですけど、実は本命の彼氏がいまして」
え?何ですと!?
「日本に帰っちゃヤダとごねられてしまって、帰るに帰れなくなっちゃいまして」
コウセイは悪びれる様子も無く、ただヘラヘラしながら頭を掻いている。
「つまり、シンガポールで彼氏ができたうえで、帰国したらまたやり直そうとしていたと?」
「まぁ、そうですね。だって遠距離なんて大変だし、かといって帰国して彼氏がいないのも寂しいし、やり直すというのも有り寄りの有りかなぁ、と思ったんですよ」
最低の最悪だ。こんな奴のそんな理由の為に、俺は心を病んでいたのか。
しかもコウセイには反省の色が微塵も感じられない。
もう、怒ったらいいのか、笑ったらいいのか、泣いたらいいのか、俺の感情は自分のことなのに訳のわからないカオスになっていた。
「それは最低ですね」
黙って聞いていたジュンヤさんが、嫌悪感も露わに一言口にした。
「いいじゃないですか、もう10年以上も前の話なんですから時効ですよ」
「時効かどうかはあなただけの一存で決めていいものでは無い」
「あなた、いったい何なんですか?2人の話に口を挟まないでください」
ジュンヤさんとコウセイは、文字どおり一触即発の雰囲気になってきた。
「もういいですよ、ジュンヤさん。ありがとうございます」
俺は、ジュンヤさんが自分のために本気で怒ってくれていることが嬉しかった。
「気分悪いわ、もう帰る!」
コウセイは完全に店全員を敵に回して旗色が悪くなったことを察して、万札を叩きつけて、こちらからの声を無視して立ち去って行った。
俺が長い間抱えていた1つの謎が解明し、俺はそれだけでも支えていた小骨が取れたかのように晴々とした気持ちになった。
さて、俺の過去のトラウマの1つも解決したので、また次回から飛ばしていこうかな。
本当は他にも90万円貢いだ話とか、二股かけられた話とか、トラウマレベルのエピソードはあるんだけど、それらはまたそのうちに話す機会があったり無かったりしたら、ということで。
「あっ…うん、聞いてる」
いったい今頃どういう用件なのだろう? ていうか、この声は本物のコウセイなの?
誰かがコウセイの名前を騙って、俺の事を揶揄っているのでは?
「一年ぶり、だね」
「本当にコウセイなの?」
「そうだよ、信じられない?」
信じろって方が無理じゃない?本人が言っているだけで、他に何も証明のしようが無いのだから。
「実は、今シンガポールにいるんだ」
「そう」
「仕事でね」
「そう」
「日本を発つ前に電話したんだけど、繋がらなくって」
「そう」
「それで今日、ダメもとで電話してみたら出てくれて」
「うん」
別にコウセイからの電話だと知ってて出たわけじゃないんだけどね。
「近いうちに一時帰国するから会えないかな?」
「一つ聞いていい?」
「何?」
俺には、どうしてもコウセイに聞きたい事があった。
いったい自分の何が悪くて別れることになったのか、それをハッキリさせたい。
「どうして俺はフラれたの?」
「あー、それは」
ドキドキ。今、1年間悩み続けてきた謎が解明される。
「それは、お前がたーくんとかいう奴と仲が良すぎたことに嫉妬したのと、その頃にちょうど海外の長期出張が重なって、面倒臭くなってしまったんだ。ごめん」
そんな理由で?本当にそんな理由で?
この1年間、俺は何を思い悩んできたのだろう?
「それで、さっきの話なんだけど、近々一時帰国することになったから会わない?それでもし良かったら、またやり直せないかな?」
なんつー虫のいい話。でも、正直言ってまだ未練が残りまくり。もし、もう一度本当にやり直せるなら、あの頃の続きを感じてみたい。
「分かった、考えてみる」
「ありがとう。来月の連休に帰国する予定だから、また連絡する」
こうして俺は、普通の人なら許せないであろう理由を水に流し、コウセイとやり直す決意をする。
それから毎日、お互いにメールを交換したりして、再び関係を深めていった。
しかし、再会を再来週に控えた頃、コウセイからの連絡はまた突然途絶えた。
メールを送っても返事は無く、電話をしても繋がらず、約束の日が来たら連絡をくれるかと願っていたが、ついに当日になっても音沙汰無しだった。
何か悪いことしたかな?何か怒らせることしたかな?
送ったメールを何度も見返してはみたけど、そんな心当たりは見つからず、さすがの俺も今回ばかりはブロックするに至ったというのが経緯だった。
それから十数年。こうして店子と客という立場で再会するまで、コウセイのことは俺の記憶の奥底に封印してきた。
「あの時は、本当にごめん。悪かった」
「それで、2回目の音信不通は何が原因だったんですか?」
それまで黙って俺の話に耳を傾けていたユータさんが口火を切った。
「それなんですけど、実は本命の彼氏がいまして」
え?何ですと!?
「日本に帰っちゃヤダとごねられてしまって、帰るに帰れなくなっちゃいまして」
コウセイは悪びれる様子も無く、ただヘラヘラしながら頭を掻いている。
「つまり、シンガポールで彼氏ができたうえで、帰国したらまたやり直そうとしていたと?」
「まぁ、そうですね。だって遠距離なんて大変だし、かといって帰国して彼氏がいないのも寂しいし、やり直すというのも有り寄りの有りかなぁ、と思ったんですよ」
最低の最悪だ。こんな奴のそんな理由の為に、俺は心を病んでいたのか。
しかもコウセイには反省の色が微塵も感じられない。
もう、怒ったらいいのか、笑ったらいいのか、泣いたらいいのか、俺の感情は自分のことなのに訳のわからないカオスになっていた。
「それは最低ですね」
黙って聞いていたジュンヤさんが、嫌悪感も露わに一言口にした。
「いいじゃないですか、もう10年以上も前の話なんですから時効ですよ」
「時効かどうかはあなただけの一存で決めていいものでは無い」
「あなた、いったい何なんですか?2人の話に口を挟まないでください」
ジュンヤさんとコウセイは、文字どおり一触即発の雰囲気になってきた。
「もういいですよ、ジュンヤさん。ありがとうございます」
俺は、ジュンヤさんが自分のために本気で怒ってくれていることが嬉しかった。
「気分悪いわ、もう帰る!」
コウセイは完全に店全員を敵に回して旗色が悪くなったことを察して、万札を叩きつけて、こちらからの声を無視して立ち去って行った。
俺が長い間抱えていた1つの謎が解明し、俺はそれだけでも支えていた小骨が取れたかのように晴々とした気持ちになった。
さて、俺の過去のトラウマの1つも解決したので、また次回から飛ばしていこうかな。
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