51才ゲイだって恋したい!

あらんすみし

文字の大きさ
18 / 20

【最終章 破】スーパーゲイヤ人、現る

ジュンヤさんの告白から程なくして、俺たちはいつも店で喋っていて気心も知れていたので、付き合うまでに抵抗は無かった。
今までの俺の恋愛は、ろくに相手のことを知りもしないで、見切り発車や勢い、成り行き任せの恋愛ばかりだったが、こうして相手のことをある程度知ってから付き合うというのは、なかなか新鮮であった。
ジュンヤさんは、優しくていつも俺を楽しませてくれた。
俺は、時間をかけずにジュンヤさんの存在を心強く感じるようになっていた。
ある日、俺がどこかに行きたいなぁ、と言う言葉を聞き逃さなかったジュンヤさんが言った。
「旅行に行こう。どこか行きたい所ある?」
俺は、熟慮の末に一つ行きたいところを思いついた。
「紅葉に染まった袋田の滝に行ってみたい」
昔、テレビで観た紅葉シーズンの袋田の滝のあまりの美しさに、いつか行ってみたいと思っていたからだ。
「袋田の滝は俺の故郷の近くで、春夏秋冬、年に4回見頃があるから4回とも連れて行くよ」
うわー、なんて嬉しいことを言ってくれちゃうの?ジュンヤさんたらイケメン!
「近いうちに友達にも紹介するよ」
マジか!彼氏の友達に紹介されるなんて、そんな未来が自分に訪れるとは夢のようだ。ますます惚れてまうやろー!
俺たちは、本当に相性がいいみたいで、週に3回は会っているし、この間は電話で5時間も話してしまった。
本当に毎日が楽しい。これまでの恋愛とはまるで違う。あ~、幸せ。きっと俺の今までのダメ男たちとの付き合いは、ここに至るまでに必要な糧だったのだろうな。
ありがとう、歴代のダメ男達よ。

そして、日にちは進んで俺の誕生日を迎えた。
俺の生まれた11月の半ばは、ちょうど袋田の滝周辺も紅葉シーズンで、最も最適な見頃になるということで、2人して俺の誕生日に合わせて袋田の滝へ行くことになった。
電車とバスを乗り継いで、俺たちは滝の目前まで辿り着いた。あと少しで、夢にまで見たと言ったら大袈裟だけど、一緒に見たかった景色を見ることができると思うと、俺のテンションはMAXだった。
そして目の前に現れた滝。
ぶっちゃけ、滝そのものはなるほど、という感じだった。だけど、最愛の人と一緒に見る滝は何物にも代え難い感動がある。
もう、ジュンヤさんと一緒なら、行き先がどこでも楽しいのだろうなぁ。
俺たちは滝をバックに鬼のように写真を撮りまくり、鮎の塩焼きを食べたり、蕎麦を食べたり、存分に滝の滞在時間を満喫した。

のだが、ただ一つ、重要な問題を俺たちは抱えていた。

何が問題なのかと言うと、それは、体の関係が全く無い!ということだった。
合体が無いだけならまだジュンヤさんが奥手なのかな?と思えるけど、キスすらないのが俺には不満だった。
しかし、それを隼人やたーくんに相談しても、急ぎすぎじゃない?とか、もう少し待ってあげたら?と言われるだけで、俺はなんかモヤモヤした感情に苛まれるのであった。
健康な男子が、好きな相手と週3で会って一緒に寝ているのに、全く手を出して来ないというのは、何か問題があるのではないか?それとも、俺にそういう魅力が無いということか?
聞いてみても、自家発電は毎日しているようで、性欲が無いとか、EDではないようだ。
ただ、あまり経験が無く、自信が無いということは言っていたので、やはり待つしかないのか? 
そんなこんなで、ひとつだけ大きな不満はあるものの、その他については何の不満も無く、順調に愛を育んでいた。
だけど付き合ってもう2ヶ月になるのに、今だにフレンチキスすらしてこないのって、どうかしてるんじゃねーの?
ついに痺れを切らせた俺は、この旅で実力行使に出ることにした。
この旅行中に、必ず合体してみせる!最低でもキスくらいはしなくちゃ納得いかないわ!
きっとこのまま事を長引かせたら、永遠に合体どころかキスすらしない関係になってしまうだろう。
しかし、相手はなかなかの難攻不落の要塞のようなものだ。ちょっとやそっとじゃ目的を達成させるのは難しいだろう。
何とかしなければ…
そうだ!バイアグラを飲ませてしまえばどうだろう?
勃たぬなら、勃たせてしまえ、勃つんだジョー!
昔の人はいい事を言ったものだ。
一度その気になれば、さすがのジュンヤさんだって発情せずにはいられないだろう。
さて、問題はどうやってバイアグラを飲ませるかだ。
そうだ!酒の中に混入させよう。
こうやって熱燗の中に入れて飲ませれば、酒好きのジュンヤさんならきっと飲んでくれるはず。
そしてそのあとは、ついに激しい夜を…

「お疲れ様~。さぁ、今日は朝から疲れたでしょ?美味しい地元の地酒でも飲んで、料理を満喫しよう!」
「あっ、俺、日本酒嫌いなんだよね。言ってないけど」
え?
俺の持った熱燗は、行き場を失ってしまった。
そんなの初耳だよー!
「でも、勿体無いから…」
「そうだよ、勿体無いから飲んでみようよ、何事も挑戦だよ!」
「俺の代わりに飲んでよ」
そう言うと、ジュンヤさんは俺の手から熱燗を取り上げて、俺の湯呑みに酒を注いだ…って、何で湯呑みなんだー!?普通はお猪口だろ!!どんだけ飲ませるつもりなんだ!!
どうしよう…これを俺が飲んでも全く意味がない。いや、それどころかスーパー◯イヤ人になった俺を見たら、ジュンヤさんは確実にドン引きではないだろうか?
そうだ!わざと溢そう!ここは俺の演技力が問われる。できるだけ自然に溢さなければ。
「あっ、手が滑った~」
「危ない!」
俺が手を滑らせるところで、信じられないほどの早業でジュンヤさんは湯呑みをキャッチした。
「危ないな~。まだ一口も飲んでないのに、もう酔っ払ってるの?」
そう言うと、ジュンヤさんは中身のほとんど溢れていない湯呑みを俺に差し出した。
どうしよう、また溢そうとしたら怪しまれそうだ。何とかこの状況を打開する術はないだろうか?
「あっ、虫だ!虫が入ってる!」
「えぇ!マジで?」
「す、捨ててくるね…」
ふう…これでひとまず危機は脱した。
「残念だったね。でもまだ半分くらい残ってるから大丈夫だよ」
えぇ!?そんなにたくさん入ってたの?
「いや、でも…」
「え~、俺の酒を飲んでくれないのぉ?」
飲みたいよ、そりゃあ、愛する人のお酌してくれた酒なんだから。でも、この中にはバイアグラが…
「さぁ、早く早く」
ジュンヤさんがニヤニヤと、どこか勝ち誇ったかのように笑いながら催促してくる。
ん?まさか、こいつ、俺の計画に気づいていたのでは!?だから俺がわざと溢すと想定して、あんな早業でキャッチできたんだな!?くそ~、俺はジュンヤさんの掌の上で踊らされていたのか!もはやこれまでか!?
俺は覚悟を決めて酒を仰いだ。
その夜、俺のスカウターは見事に暴発した。







感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。