51才ゲイだって恋したい!

あらんすみし

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【最終章 急】さよならのこちら側

袋田の滝への旅行からさらに時間が進んで、街がクリスマスムードに包まれ始めた頃、俺たちの間には今だにキスすら無かった。
付き合ってもう3ヶ月なのかもう3ヶ月なのか、さすがの俺も心が折れそうだった。
でも、もしかしたらクリスマスこそは何かしら進展があるかも知れない。ジュンヤさんも、俺のために何かしら考えくれているのでは無いか?そう思っていた。思いたかった。
きっとそういう気持ちになるムードにさえなれば、少しは進展もあるはず。
そう思った俺は、ベイエリアの高級ホテルで働く友人に無理を言って部屋を確保してもらい、クリスマスを一緒に祝う計画を立てた。
俺の気合いは並々ならぬものがあり、クリスマスプレゼントも銀座でハイブランドの財布を買い、最高のクリスマスを演出するために考えられることは全てやり尽くした。
そしてクリスマス当日、俺たちはホテルに到着した。
「すげー!何このホテル!!」
ジュンヤさんがホテルの豪華さに、一歩踏み入れた瞬間、驚きの声を上げた。
フハハハ!俺が実力を出せばこんなものなのだ!
ベルボーイに連れられて、俺たちは部屋へと案内される。
流石に最高級のスイートルームとまではいかなかったが、それでも無理を言って取ってもらった部屋は、俺たちの期待の遥か上をいく豪華な部屋だった。
俺たちはまるで子供のようにはしゃいで、眼下に広がるベイエリアの街並みを言葉も無く眺めていた。
よし!これならイケる!
きっとここから見える夜景を見れば、ジュンヤさんもその気になるに違いない。
そしてこの後はディナーが控えている。
それまで俺たちはホテルの外を散策したりして、クリスマス気分を存分に楽しんだ。
ディナーもホテル内の夜景を一望できるレストランで、最高の雰囲気でムードを盛り上げてくれる。
ここで俺は、さらにムードを盛り上げるために、事前に買っておいた財布を渡すことにした。
「はい、これ。クリスマスプレゼント」
ジュンヤさんは、まさかクリスマスプレゼントまで用意されているとは思ってなかったのか、このサプライズをとても喜んでくれた。
「え~!凄い!高かったんじゃない?こんないい財布、使うの勿体ない。家宝にしなきゃ」
大枚叩いてプレゼントして良かった。
「あ~、ここまでしてもらって、俺何も用意して来なかった。でもいいよね、こうして一緒にいられれば」
え?まさかのプレゼント無し?
いや、別にお返しが欲しかったとか、物が欲しかったわけじゃないんだけど、俺は軽くサプライズを受けた。
ま、まぁ、俺としてはこのあとの事がメインだから、こんな小さな事は気にしない、気にしない。
クリスマスムードが盛り上がった?ところで、部屋に戻ると、部屋から夜景が一望でき、そしてシャンパンが用意されていた。
この宝石のような一面の夜景と、シャンパンとで、さらにムードを盛り上げて畳みかける。そうすれば流石に…
夜景を眺めながら高級シャンパンを堪能して、気がつけば時刻は22時を過ぎていた。
「いゃ~、最高のクリスマスだなぁ。いい感じで酔いもまわってきたし、そろそろ風呂入って寝ようか」
よっしゃ!ここまで計画通りだ!
ジュンヤさんが風呂に入っている間に俺は準備を整えて、続いて風呂に入って体を丹念に清めた。
さぁ!最高のクリスマスはこれからだよ!
「お待たせ~」
俺が風呂から出ると、ジュンヤさんはいびきをかいて寝ていた。
俺はさすがに絶句した。
何寝てるんだよ!!
俺はジュンヤさんを揺すって起こした。
「何?」
「何って、このまま寝ちゃうの?」
「どういうこと?」
それを俺に言わせるか!?
俺が黙っていると、ジュンヤさんは信じられない言葉を放った。
「なんか、セックスありきみたいで怖いよ」
え?
「俺はこういう長年連れ添った夫婦みたいな関係で十分幸せだよ」
そう言うと、ジュンヤさんは俺に背を向けて寝てしまった。
何だよこれ。ここまでした自分がバカみたいだ。これって、友だちと何が違うの?
俺もジュンヤさんに背を向けて横になった。
悔しいやら惨めやら、色んな感情が無い混ぜになって渦巻いている。
ここまで価値観が違うと、もう無理かもしれないな。
俺は、ジュンヤさんを起こさないようにそっと着替えると、荷物を持って部屋を出た。
そして、終電に乗ってそのまま家に帰った。
翌日、ジュンヤさんから何かリアクションがあるかと思ったが、予想に反してジュンヤさんからは何も連絡が無かった。
隼人たちに相談に乗ってもらったが、何事も無いようにさり気なくメールしてみたら?という話になった。
何で俺が折れなきゃいけないのか腑に落ちないが、俺はもう怒っていないことを伝えるためにメールを打ち込んでいた。
すると、そこにジュンヤさんからLIMEが届いた。
『この間はごめん。君を幸せにしたかったのに。今までありがとう。楽しかったよ。さようなら』
えっーーーーーーーーーーーー!?
何でそうなるの?
俺は即行で電話した。
コールは鳴るが、なかなか電話に出てくれない。もうダメなのか?そう諦めて電話を切ろうとした時、ようやくジュンヤさんは電話に出た。
「もしもし」
2人の間に沈黙が流れる。
「メール読んだんだけど、どういうこと?」
「あの後、友達に相談したんだけど、いろいろ準備した彼氏が可哀想って言われて、1日考えてみたんだ」
「それで別れるってこと?」
「俺には君を幸せにする自信が無い。だから、そうすることが一番いいと思う」
どう返せばいい?なんて言えばいい?何を言えばいい?
「ごめん。本当に3ヶ月間楽しかった。ありがとう」
俺は、結局何も言わなかった。だって、離れてしまった気持ちに、泣いて縋るのは違うと思ったから。
俺、いったい何がいけなかったんだろう?
どこで何を間違えて、何を選択することが正解だったのだろう?
こうして俺は、また以前の日常に戻ることになった。
そう、ただジュンヤさんと付き合う前の日常に戻るだけ。それだけのこと。
だけど、たったそれだけのことなのに、どういうわけか涙がとめどなく溢れる。
きっとこの喪失感もいつか薄れて、思い出を整理できる日もやって来るだろう。
それまで少しだけ忘れずにいさせて欲しい。
そして、たまには思い出して欲しい。





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