12 / 18
放課後に駆ける
しおりを挟む
梅雨に入り、空はどんより、雨はしとしとと、陰気な季節が到来したが、僕の心は入学式の日以来晴れやかに澄み渡っていた。まるで、10日ぶりに便秘が解消されたみたいだ。なにしろ、あの海老原先輩とヤンキーさんの2人を、同時にフルことができたのだから。
さて、今日こそは弓道部を退部するぞ。
浩介は意気揚々と体育教員室へ向かった。
「失礼します~。」
誰もいない・・・。職員室かな?
その時、浩介の背後で鍵のかかる音がした。
はっ!しまった!浩介は閉じ込められた。そして、そこには吉澤先生がいた。
「森田君、何か用かな?」
なんか、嫌な予感しかしない。しかし、ここで怖気付くわけにもいかない。せっかく海老原先輩とヤンキーさんを引き離すことに成功したのだから、ここで弱気になることは許されないぞ。これも、明るい高校生活を取り戻すためだ!
でも、怖~い!
「えっと・・・あ、急にお腹が痛くなってきた。また出直しまーす。」
いそいそと出入り口に向かう浩介に、吉澤先生は壁ドンをしてきた。
「トイレなら、奥にあるよ。」
「あっ、そうなんですか?でも、僕、ウォシュレットでないとダメなんです~。」
「生徒のトイレはウォシュレットじゃないだろ?ちなみにここのトイレはウォシュレットだから、遠慮しないでいいよ。」
チッ!なんで生徒はウォシュレットじゃなくて、教員のトイレはウォシュレットなんだよ。
「じゃ、じゃあお借りしようかな。」
僕は一時的に吉澤先生から逃げるために、トイレに避難することにした。
もしかしたら、トイレの窓から外に出られるかもしれないと期待したから。
しかし、残念ながらトイレの窓には鉄柵がはまっていて、外には出られなかった。
万事休すか・・・僕は、自分の運命を呪いたくなった。このまま、ここから出られず吉澤先生にいろんなことをさせられるのだろうか?
その時、誰かが体育教員室にやって来た。
「吉澤先生、小野沢です。鍵を開けてもらえますか?」
やった!小野沢先生がやって来た。僕は急いでトイレを出た。ありがとうございます。僕には小野沢先生が神様に思えた。
計画を練り直そう。吉澤先生や菊田部長と一対一になるシチュエーションは避けよう。
そうだ!部活の時に皆んなの前で渡せばいい。さすがに人目があれば、さっきみたいな事態は避けられるだろう。
それに、また2人まとめて引き離すことも可能かもしれない。
そして僕は、部活が行われている弓道場へ向かった。
「おはようございま~す。」
しかし、そこには吉澤先生と菊田部長の2人しかいなかった。
戸惑う僕に、菊田部長は一言こう言った。
「他の部員なら、今、学校の周りをランニングしに行ってるよ。」
な、なんてタイミングの悪さ!これでは来た意味が無いではないか!いや、かえってまずい状況。2対1では分が悪いではないか。
「森田君、君、もしかして退部届を持って来たんじゃないのか?」
え?吉澤先生、察していたんですか?それならば話しは早い。僕は持っていた退部届を吉澤先生に渡すと、先生は受け取って即破り捨てた。
「悪いが、これは受け取れない。」
ひ~~~!なんで?
「こんな物、出さなくても・・・」
僕は吉澤先生の言葉を待たずに、脱兎の如く弓道場から逃げ出していた。
「待ってーー!森田くーん!」
「待ちなさい!森田君!」
菊田部長と吉澤先生が追いかけてくる。
何で追いかけて来るんだよー?
僕はとうとう、屋上まで追い詰められた。
「話しを最後まで聞きなさい、森田君。先生達は、何もしないから。」
「そうだよ、森田君が弓道部を辞める必要なんて無いんだよ。」
嘘だ!嘘だ、嘘だ、嘘だ!2人して僕を騙そうとしているんだ。
気がつくと、僕はフェンスを登って乗り越えていた。
「危ない!よせ!早まるな!」
吉澤先生と菊田部長が必死に説得しているが、僕はどうしてもあなた方を信じられない。2人にあんなことやこんなことをされるくらいなら、一思いに死んでやる!
屋上には他の先生方も駆けつけ、校庭では生徒達が屋上を見上げて騒いでいる。
「ちょっと話があるんだけど、そっち行ってもいいかな?話しを聞いてくれるだけでいいんだ。」
吉澤先生がジリジリと距離を詰めて来る。
これ以上後ろに退がれば、あとは落ちるだけ。わかりました、冥土の土産に聞いてやりましょう。
「森田君、誰にも言わないと約束してくれ。」
吉澤先生は小声で話しかけてきた。
「実は、先生と菊田君、寄りを戻したんだ。」
乾いた風が2人の間を吹き抜ける音だけが聞こえる。
え?どういうこと?
「森田君が病院から帰ったあと、2人でよく話したら、お互いに誤解があって別れたことがわかってね、じゃあ寄りを戻そうか、ってなったんだ。だから君が弓道部を辞める必要は無いんだよ。」
僕はフェンスから降りた。
「お騒がせしました。」
僕は吉澤先生や菊田部長、他の先生方に深々と頭を下げた。
さて、今日こそは弓道部を退部するぞ。
浩介は意気揚々と体育教員室へ向かった。
「失礼します~。」
誰もいない・・・。職員室かな?
その時、浩介の背後で鍵のかかる音がした。
はっ!しまった!浩介は閉じ込められた。そして、そこには吉澤先生がいた。
「森田君、何か用かな?」
なんか、嫌な予感しかしない。しかし、ここで怖気付くわけにもいかない。せっかく海老原先輩とヤンキーさんを引き離すことに成功したのだから、ここで弱気になることは許されないぞ。これも、明るい高校生活を取り戻すためだ!
でも、怖~い!
「えっと・・・あ、急にお腹が痛くなってきた。また出直しまーす。」
いそいそと出入り口に向かう浩介に、吉澤先生は壁ドンをしてきた。
「トイレなら、奥にあるよ。」
「あっ、そうなんですか?でも、僕、ウォシュレットでないとダメなんです~。」
「生徒のトイレはウォシュレットじゃないだろ?ちなみにここのトイレはウォシュレットだから、遠慮しないでいいよ。」
チッ!なんで生徒はウォシュレットじゃなくて、教員のトイレはウォシュレットなんだよ。
「じゃ、じゃあお借りしようかな。」
僕は一時的に吉澤先生から逃げるために、トイレに避難することにした。
もしかしたら、トイレの窓から外に出られるかもしれないと期待したから。
しかし、残念ながらトイレの窓には鉄柵がはまっていて、外には出られなかった。
万事休すか・・・僕は、自分の運命を呪いたくなった。このまま、ここから出られず吉澤先生にいろんなことをさせられるのだろうか?
その時、誰かが体育教員室にやって来た。
「吉澤先生、小野沢です。鍵を開けてもらえますか?」
やった!小野沢先生がやって来た。僕は急いでトイレを出た。ありがとうございます。僕には小野沢先生が神様に思えた。
計画を練り直そう。吉澤先生や菊田部長と一対一になるシチュエーションは避けよう。
そうだ!部活の時に皆んなの前で渡せばいい。さすがに人目があれば、さっきみたいな事態は避けられるだろう。
それに、また2人まとめて引き離すことも可能かもしれない。
そして僕は、部活が行われている弓道場へ向かった。
「おはようございま~す。」
しかし、そこには吉澤先生と菊田部長の2人しかいなかった。
戸惑う僕に、菊田部長は一言こう言った。
「他の部員なら、今、学校の周りをランニングしに行ってるよ。」
な、なんてタイミングの悪さ!これでは来た意味が無いではないか!いや、かえってまずい状況。2対1では分が悪いではないか。
「森田君、君、もしかして退部届を持って来たんじゃないのか?」
え?吉澤先生、察していたんですか?それならば話しは早い。僕は持っていた退部届を吉澤先生に渡すと、先生は受け取って即破り捨てた。
「悪いが、これは受け取れない。」
ひ~~~!なんで?
「こんな物、出さなくても・・・」
僕は吉澤先生の言葉を待たずに、脱兎の如く弓道場から逃げ出していた。
「待ってーー!森田くーん!」
「待ちなさい!森田君!」
菊田部長と吉澤先生が追いかけてくる。
何で追いかけて来るんだよー?
僕はとうとう、屋上まで追い詰められた。
「話しを最後まで聞きなさい、森田君。先生達は、何もしないから。」
「そうだよ、森田君が弓道部を辞める必要なんて無いんだよ。」
嘘だ!嘘だ、嘘だ、嘘だ!2人して僕を騙そうとしているんだ。
気がつくと、僕はフェンスを登って乗り越えていた。
「危ない!よせ!早まるな!」
吉澤先生と菊田部長が必死に説得しているが、僕はどうしてもあなた方を信じられない。2人にあんなことやこんなことをされるくらいなら、一思いに死んでやる!
屋上には他の先生方も駆けつけ、校庭では生徒達が屋上を見上げて騒いでいる。
「ちょっと話があるんだけど、そっち行ってもいいかな?話しを聞いてくれるだけでいいんだ。」
吉澤先生がジリジリと距離を詰めて来る。
これ以上後ろに退がれば、あとは落ちるだけ。わかりました、冥土の土産に聞いてやりましょう。
「森田君、誰にも言わないと約束してくれ。」
吉澤先生は小声で話しかけてきた。
「実は、先生と菊田君、寄りを戻したんだ。」
乾いた風が2人の間を吹き抜ける音だけが聞こえる。
え?どういうこと?
「森田君が病院から帰ったあと、2人でよく話したら、お互いに誤解があって別れたことがわかってね、じゃあ寄りを戻そうか、ってなったんだ。だから君が弓道部を辞める必要は無いんだよ。」
僕はフェンスから降りた。
「お騒がせしました。」
僕は吉澤先生や菊田部長、他の先生方に深々と頭を下げた。
0
あなたにおすすめの小説
愛おしい、君との週末配信☆。.:*・゜
立坂雪花
BL
羽月優心(はづきゆうしん)が
ビーズで妹のヘアゴムを作っていた時
いつの間にかクラスメイトたちの
配信する動画に映りこんでいて
「誰このエンジェル?」と周りで
話題になっていた。
そして優心は
一方的に嫌っている
永瀬翔(ながせかける)を
含むグループとなぜか一緒に
動画配信をすることに。
✩.*˚
「だって、ほんの一瞬映っただけなのに優心様のことが話題になったんだぜ」
「そうそう、それに今年中に『チャンネル登録一万いかないと解散します』ってこないだ勢いで言っちゃったし……だからお願いします!」
そんな事情は僕には関係ないし、知らない。なんて思っていたのに――。
見た目エンジェル
強気受け
羽月優心(はづきゆうしん)
高校二年生。見た目ふわふわエンジェルでとても可愛らしい。だけど口が悪い。溺愛している妹たちに対しては信じられないほどに優しい。手芸大好き。大好きな妹たちの推しが永瀬なので、嫉妬して永瀬のことを嫌いだと思っていた。だけどやがて――。
×
イケメンスパダリ地方アイドル
溺愛攻め
永瀬翔(ながせかける)
優心のクラスメイト。地方在住しながらモデルや俳優、動画配信もしている完璧イケメン。優心に想いをひっそり寄せている。優心と一緒にいる時間が好き。前向きな言動多いけれど実は内気な一面も。
恋をして、ありがとうが溢れてくるお話です🌸
***
お読みくださりありがとうございます
可愛い両片思いのお話です✨
表紙イラストは
ミカスケさまのフリーイラストを
お借りいたしました
✨更新追ってくださりありがとうございました
クリスマス完結間に合いました🎅🎄
猫と王子と恋ちぐら
真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。
ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。
パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。
『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』
小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
もう1人の、王子と呼ばれる人が気になって話しかけただけだった
メグエム
BL
とある高校で王子と呼ばれるイケメン•晴人。晴人は明るく、いつも周りに人がいる。通称•太陽王子。どうやら自分の他にも王子と呼ばれるイケメンがいると知った晴人は、そのもう1人の王子に会いに、いつもいるという図書室に行く。そこには、静かに本を読んでいるだけで絵になるイケメン、通称•月王子と呼ばれる弥生がいた。
もう1人の、王子と呼ばれる人が気になって話しかけただけ。それだけだったのに。今まで感じたことのない感情がわいてくる。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる