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出逢い
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真っ暗だった。
何も見えない、ただ深い闇の中で、僕はただ1人、ポツンと立っていた。
「ここは…?」
「誰か居るのか?」
身に覚えのない、不可解な状況に、少なからず恐怖が芽生える。
そのうち、それは段々と強くなった。
「何なんだよ、コレ!?」
「本当は誰か居るんだろ!?」
本当は目に見えないだけで、直ぐ近くにも僕を襲おうとしているヤツが、潜んで居るかもしれない。
僕には見えないけど、ソイツには僕が見えていて、虎視眈々と狙いを定めているかもしれない。
そんな恐ろしさに居たたまれなくなって、1人走り出そうとする。
「ふ、ふざけんなよ!?冗談じゃないぞ!?」
ところが、僕は1歩踏み出して、ハッと気付かされた。
震えたまま、立ち尽くす。
何をやってるんだ、僕は。
周りが見えないんだぞ。
さっき考えた事も可能性としてはあるかも知れないけど、実は直ぐそこに崖があって、怯えて走り出した途端に真っ逆さまなんて事もあるかもしれないじゃないか。
でも怖い。
いや、立ち止まれ。
本当に狙われてるかも。
地雷だ。地雷が隠されてるんだ。
直ぐ後ろから刺されるよ。
罠だって仕込まれてるかも。
でも―――…
そんな葛藤を頭の中で繰り広げていると、しばらくして女性の声が辺りから聞こえてきた。
「クラン…」
…誰ッ!?
突然の自分以外の人の声に、思わずドキッとする。
「クラン…」
再びの声が何とも言えない、柔らかく優しい声に聞こえた。
その声に少しずつ落ち着きを取り戻す。
…僕の事?
なぜか僕は自分の名前すら解らないのに、声の呼ぶ名が、自分の事だと思わされた。
「そうよ、クラン。クラン・エレスタニア。それがあなたの名前…」
…クラン、エレス…?
「クラン、そろそろ目覚めなさい。あなたが守るべき少女が、もうすぐあなたの元へやって来るわ」
もう完全に落ち着き、今度は不思議と声の言うことを疑いもなく聞き入れる僕が居た。
ま、守るべき?
「そう。あなたはその少女と出会わなければならない。だから、あなたの元へ導かれて来るの」
まるで、母親が子供に言い付ける様に。
僕…が…?
「そうよ。あなたが彼女を連れていってあげるの」
母の言い付けを守る子供の様に。
連れて?
「ええ…」
どこに…?
「人々の未来に…」
え…?
「…」
ちょっ、なに!?
「…」
ワケわかんない!
どこに連れてくって―――!?
「―――ちょっ待てよ!」
何かを呼び止める様に叫ぶ声で、僕は目を覚ました。
某アイドルがドラマで放ったセリフの様だったが、それは横に置いておこう。
視線の先には空に伸ばした右手。
それを見て、我に返る様に思考が覚醒した。
ワキワキと指を曲げて、握ったり開いたりを繰り返す。
どうやら自分の手のようだ。
でも、なんか小さくなった様な気がする。
身体を起こすついでに、左手も目の前に出して、両手で握り、開きを繰り返してみた。
やはり自分の手だ。
小さくなったのは気のせいか?
「…あ、そうだ!」
先ほど、呼び止める様な叫び声で起こされたから、他に人が近くに居るかと思って、辺りを見回す。
「…は?」
誰も居ない。
というか、さっきから、自分の声が自分のものではない声に聞こえる。
「誰も、居ない?」
ほら。
「僕、1人だけ?」
やっぱり、僕しか居ないし、他に人が居た感じがしない。
「って事は、さっきの叫び声って、僕自身の寝言かぁ!」
空に向かって手伸ばしてたし。
叫び声も、今思えば僕が発してる声に似てるし。
こりゃもう決定だね。
「恥ずかし…」
自分の寝言にびっくりして起きるとか。
「無いわー」
誰も居ない事がせめてもの救いだった。
…って。
「…ここ、ドコ…?」
膝下くらいの草が一面を覆う草原。
疎らに低木が、小さくて少ない葉を揺らしている。
上半身だけ起こした姿勢では、視点が低くてあまり先の方まで見えないが、そう遠くない所に山も見える。
直ぐ近くに川でもあるように、水の音も聞こえる。
「どうしてこんな所に?」
日向ぼっこでもしてたのか?
いや、待て。
おかしい。
何でここに居たのか。
ここまでどうやってきたのか。
全く思い出せん。
ってか、さっき呼び止めてたのって、なんかの夢でも見てたんだよな?
「…う~ん、思い出せない」
夢の内容も思い出せない。
なんか、非常に心細かったイメージはなんとなく残ってるけど。
「で、僕は誰だっけ?」
名前も覚えてな…いや、思い出した。
「クランだ。クラン・エレス…た、にあ?」
最後の方がちょっと曖昧だけど、多分、合ってる。
「…で?」
何歳で何をしてて、どうやってここに来て、どうするつもりだったか。
さっぱり解らん。
「あ、あれだ!」
これはもう。
「記憶喪失ってやつだ!」
決まりだ。
「ってか、記憶喪失って何だ?」
自分で言ってて、何の事やらサッパリだ。
「考えてもしゃーないっか!」
いい加減、寝そべった姿勢から立ち上がりながらのお手上げ状態。
「とりあえず、川の水は飲めるのかな?」
微かに水音が聞こえた方へ、歩き出す。
「今、何時なんだろ…」
空の太陽の位置を見たものの、方角も解らないから、太陽の高さも解らない。
「たしか、時計の短針を太陽に向けてどーたらって、昔、テレビで見た様な…?」
左手を上げてみるも、そこには時計など無かった。
「ってか、時計って何だ?」
ふと、口に出た言葉が意味する物が、何なのか解らない事に気付く。
「テレビって何だよ!やべ、僕、おかしくなった!いや、記憶喪失って時点でもうとっくにおかしいや!」
何が面白いのかも解らないが、無性に笑いが込み上げてくる。
何もかもが解らない事だらけ。
こんな状況、笑うしか無いだろ。
「…ってか、無いわー…」
少し冷静になった途端に、今度は無性に落ち込んだ。
ガックリと項垂れた所に、かなりハッキリと水音が聞こえた。
「…!?川だ!…そうだ!川に行くんだった!」
顔を上げれば直ぐそこに川が見える。
ものの数メートル先に、草の切れ目が一筋の線になって、左は山の方から、右は丘の下の森の方まで延びていた。
今居る草原は、少し小高い丘の上にあったらしい。
この丘より低い所は、上半身だけ起こした姿勢からは見えてなかった。
てっきり山と草原しか辺りには無いと思っていたが、わりと近くに森もあったのだ。
「あの森、食べられる木の実とかあるかな?」
ゆっくりと川に近付きながら、森を見渡す。
「美味いキノコでも良いな。落ちた枝とか集めて火をつけて、焼いて食ったら美味そうじゃん!」
想像を膨らませながら、とりあえず川に辿り着いた。
湧水地が近い清流の様で、軽く飛び越えられそうな川幅に、岸ギリギリまで草が生えてる。
そっと川岸に膝を付き、水面を覗き込んだ。
「はっはー!やっぱりな!僕も見たことがない僕だ!」
そこには、自分の知らない服の襟から、自分の知らない顔が生えていた。
しかし、この顔を見たことがないのは間違いないのだが、じゃあ、本当の自分の顔は?と聞かれると、それも解らない。
解らないから、この顔を受け入れるしか無いらしい。
「ま、男の僕から見てもそんなに不細工じゃないと思うし、いっか!」
うん。
悪くないと思う。
多分。
とりあえず、水を一口飲もう。
不味かったりヤバいのは嫌だから、最初は片手で少し掬う。
ゴクリと喉を鳴らして僅かな水が身体に染み込んだ。
「…う、うめぇ!」
湧き出たばかりと言っても過言ではない程に、澄んだ美味しい天然の水だった。
「やべ。僕って結構喉乾いてたんだ!」
予想以上の美味さに、直接顔を川につけて水を飲んだ。
呼吸も忘れて一気に飲み続ける。
「…っぷあー!うめぇ―――」
しばらくして息が続かなくなると、辺りに水を撒き散らしながら顔を上げた。
その瞬間、先程まで無かったモノが視界に入り、無い息を飲み込む。
「―――…なっ!?」
束の間の沈黙。
クランは頭が混乱しつつも、目の前のモノから視線を外せない。
そこにあった、もとい、居たのは、対岸にちょこんと座って此方を見る、小さな女の子だった。
何も見えない、ただ深い闇の中で、僕はただ1人、ポツンと立っていた。
「ここは…?」
「誰か居るのか?」
身に覚えのない、不可解な状況に、少なからず恐怖が芽生える。
そのうち、それは段々と強くなった。
「何なんだよ、コレ!?」
「本当は誰か居るんだろ!?」
本当は目に見えないだけで、直ぐ近くにも僕を襲おうとしているヤツが、潜んで居るかもしれない。
僕には見えないけど、ソイツには僕が見えていて、虎視眈々と狙いを定めているかもしれない。
そんな恐ろしさに居たたまれなくなって、1人走り出そうとする。
「ふ、ふざけんなよ!?冗談じゃないぞ!?」
ところが、僕は1歩踏み出して、ハッと気付かされた。
震えたまま、立ち尽くす。
何をやってるんだ、僕は。
周りが見えないんだぞ。
さっき考えた事も可能性としてはあるかも知れないけど、実は直ぐそこに崖があって、怯えて走り出した途端に真っ逆さまなんて事もあるかもしれないじゃないか。
でも怖い。
いや、立ち止まれ。
本当に狙われてるかも。
地雷だ。地雷が隠されてるんだ。
直ぐ後ろから刺されるよ。
罠だって仕込まれてるかも。
でも―――…
そんな葛藤を頭の中で繰り広げていると、しばらくして女性の声が辺りから聞こえてきた。
「クラン…」
…誰ッ!?
突然の自分以外の人の声に、思わずドキッとする。
「クラン…」
再びの声が何とも言えない、柔らかく優しい声に聞こえた。
その声に少しずつ落ち着きを取り戻す。
…僕の事?
なぜか僕は自分の名前すら解らないのに、声の呼ぶ名が、自分の事だと思わされた。
「そうよ、クラン。クラン・エレスタニア。それがあなたの名前…」
…クラン、エレス…?
「クラン、そろそろ目覚めなさい。あなたが守るべき少女が、もうすぐあなたの元へやって来るわ」
もう完全に落ち着き、今度は不思議と声の言うことを疑いもなく聞き入れる僕が居た。
ま、守るべき?
「そう。あなたはその少女と出会わなければならない。だから、あなたの元へ導かれて来るの」
まるで、母親が子供に言い付ける様に。
僕…が…?
「そうよ。あなたが彼女を連れていってあげるの」
母の言い付けを守る子供の様に。
連れて?
「ええ…」
どこに…?
「人々の未来に…」
え…?
「…」
ちょっ、なに!?
「…」
ワケわかんない!
どこに連れてくって―――!?
「―――ちょっ待てよ!」
何かを呼び止める様に叫ぶ声で、僕は目を覚ました。
某アイドルがドラマで放ったセリフの様だったが、それは横に置いておこう。
視線の先には空に伸ばした右手。
それを見て、我に返る様に思考が覚醒した。
ワキワキと指を曲げて、握ったり開いたりを繰り返す。
どうやら自分の手のようだ。
でも、なんか小さくなった様な気がする。
身体を起こすついでに、左手も目の前に出して、両手で握り、開きを繰り返してみた。
やはり自分の手だ。
小さくなったのは気のせいか?
「…あ、そうだ!」
先ほど、呼び止める様な叫び声で起こされたから、他に人が近くに居るかと思って、辺りを見回す。
「…は?」
誰も居ない。
というか、さっきから、自分の声が自分のものではない声に聞こえる。
「誰も、居ない?」
ほら。
「僕、1人だけ?」
やっぱり、僕しか居ないし、他に人が居た感じがしない。
「って事は、さっきの叫び声って、僕自身の寝言かぁ!」
空に向かって手伸ばしてたし。
叫び声も、今思えば僕が発してる声に似てるし。
こりゃもう決定だね。
「恥ずかし…」
自分の寝言にびっくりして起きるとか。
「無いわー」
誰も居ない事がせめてもの救いだった。
…って。
「…ここ、ドコ…?」
膝下くらいの草が一面を覆う草原。
疎らに低木が、小さくて少ない葉を揺らしている。
上半身だけ起こした姿勢では、視点が低くてあまり先の方まで見えないが、そう遠くない所に山も見える。
直ぐ近くに川でもあるように、水の音も聞こえる。
「どうしてこんな所に?」
日向ぼっこでもしてたのか?
いや、待て。
おかしい。
何でここに居たのか。
ここまでどうやってきたのか。
全く思い出せん。
ってか、さっき呼び止めてたのって、なんかの夢でも見てたんだよな?
「…う~ん、思い出せない」
夢の内容も思い出せない。
なんか、非常に心細かったイメージはなんとなく残ってるけど。
「で、僕は誰だっけ?」
名前も覚えてな…いや、思い出した。
「クランだ。クラン・エレス…た、にあ?」
最後の方がちょっと曖昧だけど、多分、合ってる。
「…で?」
何歳で何をしてて、どうやってここに来て、どうするつもりだったか。
さっぱり解らん。
「あ、あれだ!」
これはもう。
「記憶喪失ってやつだ!」
決まりだ。
「ってか、記憶喪失って何だ?」
自分で言ってて、何の事やらサッパリだ。
「考えてもしゃーないっか!」
いい加減、寝そべった姿勢から立ち上がりながらのお手上げ状態。
「とりあえず、川の水は飲めるのかな?」
微かに水音が聞こえた方へ、歩き出す。
「今、何時なんだろ…」
空の太陽の位置を見たものの、方角も解らないから、太陽の高さも解らない。
「たしか、時計の短針を太陽に向けてどーたらって、昔、テレビで見た様な…?」
左手を上げてみるも、そこには時計など無かった。
「ってか、時計って何だ?」
ふと、口に出た言葉が意味する物が、何なのか解らない事に気付く。
「テレビって何だよ!やべ、僕、おかしくなった!いや、記憶喪失って時点でもうとっくにおかしいや!」
何が面白いのかも解らないが、無性に笑いが込み上げてくる。
何もかもが解らない事だらけ。
こんな状況、笑うしか無いだろ。
「…ってか、無いわー…」
少し冷静になった途端に、今度は無性に落ち込んだ。
ガックリと項垂れた所に、かなりハッキリと水音が聞こえた。
「…!?川だ!…そうだ!川に行くんだった!」
顔を上げれば直ぐそこに川が見える。
ものの数メートル先に、草の切れ目が一筋の線になって、左は山の方から、右は丘の下の森の方まで延びていた。
今居る草原は、少し小高い丘の上にあったらしい。
この丘より低い所は、上半身だけ起こした姿勢からは見えてなかった。
てっきり山と草原しか辺りには無いと思っていたが、わりと近くに森もあったのだ。
「あの森、食べられる木の実とかあるかな?」
ゆっくりと川に近付きながら、森を見渡す。
「美味いキノコでも良いな。落ちた枝とか集めて火をつけて、焼いて食ったら美味そうじゃん!」
想像を膨らませながら、とりあえず川に辿り着いた。
湧水地が近い清流の様で、軽く飛び越えられそうな川幅に、岸ギリギリまで草が生えてる。
そっと川岸に膝を付き、水面を覗き込んだ。
「はっはー!やっぱりな!僕も見たことがない僕だ!」
そこには、自分の知らない服の襟から、自分の知らない顔が生えていた。
しかし、この顔を見たことがないのは間違いないのだが、じゃあ、本当の自分の顔は?と聞かれると、それも解らない。
解らないから、この顔を受け入れるしか無いらしい。
「ま、男の僕から見てもそんなに不細工じゃないと思うし、いっか!」
うん。
悪くないと思う。
多分。
とりあえず、水を一口飲もう。
不味かったりヤバいのは嫌だから、最初は片手で少し掬う。
ゴクリと喉を鳴らして僅かな水が身体に染み込んだ。
「…う、うめぇ!」
湧き出たばかりと言っても過言ではない程に、澄んだ美味しい天然の水だった。
「やべ。僕って結構喉乾いてたんだ!」
予想以上の美味さに、直接顔を川につけて水を飲んだ。
呼吸も忘れて一気に飲み続ける。
「…っぷあー!うめぇ―――」
しばらくして息が続かなくなると、辺りに水を撒き散らしながら顔を上げた。
その瞬間、先程まで無かったモノが視界に入り、無い息を飲み込む。
「―――…なっ!?」
束の間の沈黙。
クランは頭が混乱しつつも、目の前のモノから視線を外せない。
そこにあった、もとい、居たのは、対岸にちょこんと座って此方を見る、小さな女の子だった。
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