オカルト結婚式 浮気した王子の末路が世界の支配者だった件

柚屋志宇

文字の大きさ
17 / 26

17話 精神支配

しおりを挟む
「な、何か……凄い魔力衝撃だったが……。先程の魔法は何だったのだ?」

 アンジェリクを内心で恐れながらも、リオネルは平静を装って質問した。

「闇っぽい呪文が聞こえたような気がしたが……?」
「私たちが幸せになるための魔法の呪文よ」

 アンジェリクは悪戯っぽく微笑んだ。

「さあ、もう此処に用はないわ。リオネル、戻りましょう」

 アンジェリクはそう言い、部屋の隅に立ち尽くしているシャミナード枢機卿を振り向いた。

「シャミナード、行くわよ」
「はい」

 シャミナード枢機卿はアンジェリクに従順に答えた。

「アンジェリク、シャミナードといつの間に仲良くなったのだ?」
「つい先刻よ」





(おかしい……)

 リオネルはアンジェリクとシャミナード枢機卿とともに勇者の祠を後にした。
 勇者の祠があった人気のない古びた区画を抜け、比較的新しい増築部分に戻った。

 そこは使用されている部屋が並ぶ、教皇庁の中で最も人の出入りがある区画だ。

 聖都テネブラエは小さくとも国家だ。
 教皇を元首とした神権政治が行われている。
 教皇庁は行政機関であり、そこには内務、外務、財務、軍務などの仕事があった。
 聖職者たちはここで王宮の役人のように働いていた。

 長い廊下を、書類を持った聖職者たちが何人も行き来している。
 大抵は黒の衣の司教以下の聖職者だったが、聖騎士も幾人か歩いていた。

(アンジェリクのことを誰も不審に思わないのか?)

 ピンク髪を長く伸ばしている私服姿のアンジェリクは聖職者には見えない。
 テネブラエの行政機関である教皇庁の中を、聖職者らしからぬアンジェリクが歩いていたら不審に思われるはずだが、奇異の目を向ける者は誰もいない。

「皆にはアンジェリクが見えていないのか?」

 リオネルが質問するとアンジェリクは楽しそうにして答えた。

「見えているわよ。試してみましょうか?」

 アンジェリクは立ち止まると、その廊下を歩いている皆に向けて命令した。

「皆、跪きなさい!」

(……っ!)

 視界にいる聖職者たちが一斉にこちらを向き、膝をついて頭を垂れた。
 リオネルたちに付き従っていたシャミナード枢機卿も、皆と同じように膝をついて深々と頭を下げている。

「ね? みんなちゃんと見えているし聞こえているでしょう?」

 悪戯が成功したかのように、アンジェリクは少し得意気な笑顔でリオネルに言った。

「……」

 魔王は強大な闇魔法で人間たちを支配していたと、聖典に記されていた。
 アンジェリクの一声で皆が傅いている風景を見て、リオネルは魔王の力が解った気がした。

(隷属させる、精神支配の魔法か……!)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

殿下、もう何もかも手遅れです

魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。 葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。 全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。 アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。 自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。 勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。 これはひとつの国の終わりの物語。 ★他のサイトにも掲載しております ★13000字程度でサクッとお読み頂けます

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄されたので、戻らない選択をしました

ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた 貴族令嬢ミディア・バイエルン。 だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、 彼女は一方的に婚約を破棄される。 「戻る場所は、もうありませんわ」 そう告げて向かった先は、 王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。 権力も、評価も、比較もない土地で、 ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。 指示しない。 介入しない。 評価しない。 それでも、人は動き、街は回り、 日常は確かに続いていく。 一方、王都では―― 彼女を失った王太子と王政が、 少しずつ立ち行かなくなっていき……? 派手な復讐も、涙の和解もない。 あるのは、「戻らない」という選択と、 終わらせない日常だけ。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

処理中です...