3 / 9
03話 開かれた真理の扉
しおりを挟む
(王太子妃になりたくないなら、王妃教育には行かないほうが良いわよね)
王妃教育は、王太子妃になるための教育、いずれ王妃になるための教育です。
王太子妃になりたくないなら、やらなくて良いことに気付いてしまいました。
両親は失望するかもしれませんが、両親にはすでに叱られ続けているので同じことです。
(王妃教育をさぼりまくって、王子の婚約者にふわさしくないという事になれば、婚約解消できてしまうかも?!)
私の心は浮き立ちました。
(お父様に叱られるのはいつものこと。いつもと同じよ。どうせ同じく叱られるなら、婚約解消できたほうがお得だわ。婚約解消されて修道院へ送られるなら、それも良いわ。今の生活に比べたら、修道院のほうが気楽よ。頑張るよりもラクしてさぼったほうが幸せになれるんじゃないかしら!)
閃いた名案に、私がわくわくしていると。
私の陰口を言うヒソヒソ声が耳に入って来ました。
「フェリシア様は百十九位よ。また成績が落ちているわ」
「フェリシア様の成績は、もう下から数えがほうが早いわね」
「どうしてフェリシア様が王太子妃に選ばれたのかしら」
「あんな不出来なご令嬢は、ご立派なルシアン殿下の婚約者にふさわしくないわ」
(そうよ、そうよ! その通りよ! もっと言って良いのよ?)
私は、私の陰口を言う令嬢たちに、心の中で相槌を打ち、エールを送りました。
(ルシアン殿下の婚約者にふさわしくない娘になるには……。やはり学年最下位よね。次の試験では全教科で零点を取って学年最下位になってみせましょう。そして王妃教育もさぼりまくる。これで決まりよ!)
私の夢は大きく羽ばたきました。
(ふふふ……。あなたたちはこれから、私が学年最下位になる光景を見るのよ! 刮目なさい! そして囀りなさい! 私など王太子妃に相応しくないと!)
私が内心でほくそえんでいると……。
「フェリシア様、少しよろしいかしら?」
いきなり、声を掛けられました。
私に声を掛けて来た相手は、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様です。
「あら、セリーヌ様、ごきげんよう」
私がそう挨拶をすると、セリーヌ様は何が気に障ったのか、むっとして顔をしかめました。
「フェリシア様、あなたはルシアン殿下の婚約者である自覚はありますの?」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者です」
「フェリシア様はご自分の成績が恥ずかしくありませんの?」
セリーヌ様はますます不愉快そうにして、私を糾弾しました。
「ルシアン殿下の婚約者であるならば、ふさわしいお振舞いをなさるべきです」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者としてふさわしい成績をとり、ふさわしい振舞いをしております」
成績がルシアン殿下より低いのは、ちゃんと王妃教育の通りですからね。
セリーヌ様は王妃教育の内容をご存知ないでしょうけれど。
私は一点の曇りもなく、ルシアン殿下の婚約者としてふさわしい行動をとっていると自負しておりましてよ。
(あら? ルシアン殿下と婚約破棄したいなら、これって、言ったほうが良いのではないかしら?)
ルシアン殿下の成績を超えないようにしていることは、ルシアン殿下の面子のために、私は家族以外には口外していませんでした。
でも私は気付いてしまいました。
それは王太子妃にふさわしすぎる行動であると。
王太子妃にふさわしくない行動をとるなら、これは口外してしまうべきですわね。
「セリーヌ様は王妃教育をご存知ないでしょうけれど。ルシアン殿下の妃となるならば、ルシアン殿下の成績を超えてはいけないと、王妃様から言われているのです。ですから私はルシアン殿下の成績に合わせて下げているのですわ」
「ふざけたことを言わないでくださいませ!」
「ふざけていません。本当のことです。王妃様による王妃教育です」
「聡明な王妃様がそんなことをおっしゃるはずがありませんわ!」
聡明な王妃様、ですか。
うちの両親も同じことを言っています。
私は毎週、王妃様と顔を合わせていますが、まだ王妃様が聡明な場面を一度も見たことがないというのに。
「王妃様って、そんなにご聡明なんですの?」
私が首を傾げてそう質問すると、セリーヌ様はむっとなさいました。
そしてやはり眉を吊り上げた不愉快そうな顔で、横から割り込んで来たご令嬢がいました。
「恐れ入ります。発言を許可していただきたく存じます」
「あら、あなたは、ガイヤール辺境伯令嬢でしたかしら」
私がそう声をかけると、横入してきたご令嬢は険しい顔で頷きました。
「はい。ガイヤール辺境伯が娘ブランシュと申します」
「どうぞ、おっしゃりたいことがあるなら、自由に発言なさって」
「ありがとうございます」
ガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様は私に礼を取ると、怒り顔で語り始めました。
「王妃様は大変ご聡明でご慧眼なお方です。辺境における我が家の役目を理解してくださっていることはもちろん、我が家の農業事業についてもご存知でいらっしゃいました。ブルーベリーの品種改良のこともご存知で、お褒めくださいました」
ガイヤール辺境伯領の、ブルーベリー……?
最近、王妃教育の課題で、書いた覚えがあるわ……。
王妃教育は、王太子妃になるための教育、いずれ王妃になるための教育です。
王太子妃になりたくないなら、やらなくて良いことに気付いてしまいました。
両親は失望するかもしれませんが、両親にはすでに叱られ続けているので同じことです。
(王妃教育をさぼりまくって、王子の婚約者にふわさしくないという事になれば、婚約解消できてしまうかも?!)
私の心は浮き立ちました。
(お父様に叱られるのはいつものこと。いつもと同じよ。どうせ同じく叱られるなら、婚約解消できたほうがお得だわ。婚約解消されて修道院へ送られるなら、それも良いわ。今の生活に比べたら、修道院のほうが気楽よ。頑張るよりもラクしてさぼったほうが幸せになれるんじゃないかしら!)
閃いた名案に、私がわくわくしていると。
私の陰口を言うヒソヒソ声が耳に入って来ました。
「フェリシア様は百十九位よ。また成績が落ちているわ」
「フェリシア様の成績は、もう下から数えがほうが早いわね」
「どうしてフェリシア様が王太子妃に選ばれたのかしら」
「あんな不出来なご令嬢は、ご立派なルシアン殿下の婚約者にふさわしくないわ」
(そうよ、そうよ! その通りよ! もっと言って良いのよ?)
私は、私の陰口を言う令嬢たちに、心の中で相槌を打ち、エールを送りました。
(ルシアン殿下の婚約者にふさわしくない娘になるには……。やはり学年最下位よね。次の試験では全教科で零点を取って学年最下位になってみせましょう。そして王妃教育もさぼりまくる。これで決まりよ!)
私の夢は大きく羽ばたきました。
(ふふふ……。あなたたちはこれから、私が学年最下位になる光景を見るのよ! 刮目なさい! そして囀りなさい! 私など王太子妃に相応しくないと!)
私が内心でほくそえんでいると……。
「フェリシア様、少しよろしいかしら?」
いきなり、声を掛けられました。
私に声を掛けて来た相手は、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様です。
「あら、セリーヌ様、ごきげんよう」
私がそう挨拶をすると、セリーヌ様は何が気に障ったのか、むっとして顔をしかめました。
「フェリシア様、あなたはルシアン殿下の婚約者である自覚はありますの?」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者です」
「フェリシア様はご自分の成績が恥ずかしくありませんの?」
セリーヌ様はますます不愉快そうにして、私を糾弾しました。
「ルシアン殿下の婚約者であるならば、ふさわしいお振舞いをなさるべきです」
「はい。私はルシアン殿下の婚約者としてふさわしい成績をとり、ふさわしい振舞いをしております」
成績がルシアン殿下より低いのは、ちゃんと王妃教育の通りですからね。
セリーヌ様は王妃教育の内容をご存知ないでしょうけれど。
私は一点の曇りもなく、ルシアン殿下の婚約者としてふさわしい行動をとっていると自負しておりましてよ。
(あら? ルシアン殿下と婚約破棄したいなら、これって、言ったほうが良いのではないかしら?)
ルシアン殿下の成績を超えないようにしていることは、ルシアン殿下の面子のために、私は家族以外には口外していませんでした。
でも私は気付いてしまいました。
それは王太子妃にふさわしすぎる行動であると。
王太子妃にふさわしくない行動をとるなら、これは口外してしまうべきですわね。
「セリーヌ様は王妃教育をご存知ないでしょうけれど。ルシアン殿下の妃となるならば、ルシアン殿下の成績を超えてはいけないと、王妃様から言われているのです。ですから私はルシアン殿下の成績に合わせて下げているのですわ」
「ふざけたことを言わないでくださいませ!」
「ふざけていません。本当のことです。王妃様による王妃教育です」
「聡明な王妃様がそんなことをおっしゃるはずがありませんわ!」
聡明な王妃様、ですか。
うちの両親も同じことを言っています。
私は毎週、王妃様と顔を合わせていますが、まだ王妃様が聡明な場面を一度も見たことがないというのに。
「王妃様って、そんなにご聡明なんですの?」
私が首を傾げてそう質問すると、セリーヌ様はむっとなさいました。
そしてやはり眉を吊り上げた不愉快そうな顔で、横から割り込んで来たご令嬢がいました。
「恐れ入ります。発言を許可していただきたく存じます」
「あら、あなたは、ガイヤール辺境伯令嬢でしたかしら」
私がそう声をかけると、横入してきたご令嬢は険しい顔で頷きました。
「はい。ガイヤール辺境伯が娘ブランシュと申します」
「どうぞ、おっしゃりたいことがあるなら、自由に発言なさって」
「ありがとうございます」
ガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様は私に礼を取ると、怒り顔で語り始めました。
「王妃様は大変ご聡明でご慧眼なお方です。辺境における我が家の役目を理解してくださっていることはもちろん、我が家の農業事業についてもご存知でいらっしゃいました。ブルーベリーの品種改良のこともご存知で、お褒めくださいました」
ガイヤール辺境伯領の、ブルーベリー……?
最近、王妃教育の課題で、書いた覚えがあるわ……。
13
あなたにおすすめの小説
出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
睡蓮
恋愛
ジーク伯爵は、溺愛する自身の妹レイアと共謀する形で、婚約者であるユフィーナの事を追放することを決めた。ただその理由は、ユフィーナが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしユフィーナは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、ユフィーナを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
【完結】君の世界に僕はいない…
春野オカリナ
恋愛
アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。
それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。
薬の名は……。
『忘却の滴』
一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。
それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。
父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。
彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
【完結済】婚約破棄から始まる物語~真実の愛と言う茶番で、私の至福のティータイムを邪魔しないでくださいな
をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
恋愛
約束の時間に遅れ、さらには腕に女性を貼り付けて登場したアレックス殿下。
彼は悪びれることすらなく、ドヤ顔でこう仰いました。
「レティシア。君との婚約は破棄させてもらう」
婚約者の義務としての定例のお茶会。まずは遅れたことに謝罪するのが筋なのでは?
1時間も待たせたあげく、開口一番それですか? しかも腕に他の女を張り付けて?
うーん……おバカさんなのかしら?
婚約破棄の正当な理由はあるのですか?
1話完結です。
定番の婚約破棄から始まるザマァを書いてみました。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
全てから捨てられた伯爵令嬢は。
毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。
更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。
結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。
彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。
通常の王国語は「」
帝国語=外国語は『』
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる