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26話 神の家と悪魔
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「修道院の生活は厳しいのよ?」
ルビーは修道院がどんな場所なのかを知らないのだろうと思い、私は言いました。
だって修道院は、ルビーが行きたがるような場所ではありませんから。
「我儘なんて言えなくなるのよ?」
「知ってますよーだ」
「修道院で我儘を言って暴れたら罰を与えられるのよ?」
「馬鹿にしないでくださいね?」
ルビーは尊大な態度で、獲物を狙う捕食者のようにギラリと目を輝かせました。
「うちでは大きい声で騒げばお父様もお母様も言うこと聞いてくれたけどぉ、王宮では牢屋に入れられちゃいましたからね。うちと外は違うってことくらい、ルビーはもう知ってるんです」
賢しげな瞳でルビーは言いました。
「修道院で騒いでも何も貰えないでしょぉ? 騒いでもルビーが損するだけじゃないですかぁ。そんな馬鹿なことしませんよぉ。うちと外は違うんですからね」
「ルビー、貴女、今まで計算して大騒ぎしていたの?」
「当たり前じゃないですかぁ。お父様とお母様は、大きな声で騒いだほうを優先するんですからぁ。騒いだほうが勝ちだったんですよぉ? そんなことも知らなかったんですかぁ?」
ルビーは私を見下すようにして薄く微笑みました。
「お姉様は良い子ぶって全然騒ぎませんでしたよねぇ。欲しいものを欲しいって言うルビーのこと見下してましたよね?」
「……」
「お姉様は私より先に生まれただけで、家も爵位も財産もぜーんぶ貰えることが最初から決まってたからいつも余裕だったんでしょ。ルビーは何にも貰えなくて家を追い出されるっていうのに。お姉様は何でも持ってて何の心配もないから、呑気にしていられたんでしょう? お気楽でしたよねぇ」
「お気楽なんかじゃなかったわよ……。そういうことはお行儀が悪いと教えられていたからよ」
「お行儀なんて気にしていられたのは、何でも持ってて余裕があったからでしょ」
ルビーの微笑が歪みました。
「お姉様はお気楽で羨ましいです。お姉様はうじうじしてただけで何もしてないのに、優しい婚約者がぜーんぶやってくれてコランダム女子爵になったじゃないですかぁ。ルビーには誰もいないのに、お姉様はみんなに助けられてずるいです!」
「……」
アルマンディン様に助けていただいたことは確かです。
私はルビーに言い返せませんでした。
「お姉様は家も爵位も優しい婚約者もぜーんぶ持ってるんだから、ルビーが修道院へ行く寄付金くらい出してください。お姉様はルビーが嫌いで、ルビーと一緒にいたくないんでしょう。お望み通りルビーはお姉様から離れますから」
「……でも、修道院で失敗したら、最悪、魔女として告発されてしまうわ。そうなったら取り返しがつかない。とっても恐ろしい目にあうのよ?」
ルビーは修道院がどんな場所なのかを知らないのだろうと思い、私は言いました。
だって修道院は、ルビーが行きたがるような場所ではありませんから。
「我儘なんて言えなくなるのよ?」
「知ってますよーだ」
「修道院で我儘を言って暴れたら罰を与えられるのよ?」
「馬鹿にしないでくださいね?」
ルビーは尊大な態度で、獲物を狙う捕食者のようにギラリと目を輝かせました。
「うちでは大きい声で騒げばお父様もお母様も言うこと聞いてくれたけどぉ、王宮では牢屋に入れられちゃいましたからね。うちと外は違うってことくらい、ルビーはもう知ってるんです」
賢しげな瞳でルビーは言いました。
「修道院で騒いでも何も貰えないでしょぉ? 騒いでもルビーが損するだけじゃないですかぁ。そんな馬鹿なことしませんよぉ。うちと外は違うんですからね」
「ルビー、貴女、今まで計算して大騒ぎしていたの?」
「当たり前じゃないですかぁ。お父様とお母様は、大きな声で騒いだほうを優先するんですからぁ。騒いだほうが勝ちだったんですよぉ? そんなことも知らなかったんですかぁ?」
ルビーは私を見下すようにして薄く微笑みました。
「お姉様は良い子ぶって全然騒ぎませんでしたよねぇ。欲しいものを欲しいって言うルビーのこと見下してましたよね?」
「……」
「お姉様は私より先に生まれただけで、家も爵位も財産もぜーんぶ貰えることが最初から決まってたからいつも余裕だったんでしょ。ルビーは何にも貰えなくて家を追い出されるっていうのに。お姉様は何でも持ってて何の心配もないから、呑気にしていられたんでしょう? お気楽でしたよねぇ」
「お気楽なんかじゃなかったわよ……。そういうことはお行儀が悪いと教えられていたからよ」
「お行儀なんて気にしていられたのは、何でも持ってて余裕があったからでしょ」
ルビーの微笑が歪みました。
「お姉様はお気楽で羨ましいです。お姉様はうじうじしてただけで何もしてないのに、優しい婚約者がぜーんぶやってくれてコランダム女子爵になったじゃないですかぁ。ルビーには誰もいないのに、お姉様はみんなに助けられてずるいです!」
「……」
アルマンディン様に助けていただいたことは確かです。
私はルビーに言い返せませんでした。
「お姉様は家も爵位も優しい婚約者もぜーんぶ持ってるんだから、ルビーが修道院へ行く寄付金くらい出してください。お姉様はルビーが嫌いで、ルビーと一緒にいたくないんでしょう。お望み通りルビーはお姉様から離れますから」
「……でも、修道院で失敗したら、最悪、魔女として告発されてしまうわ。そうなったら取り返しがつかない。とっても恐ろしい目にあうのよ?」
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