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33話 天使の仮面
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「お姉様、どうなさったの?」
修道院の面会室で、私はルビーと二人で話をしました。
私がルビーを待つ間にお話をしてくださった修道院長と、ルビーを連れて来てくれた修道女が退室して二人きりになると、ルビーは清楚な修道女の仮面を外してざっくばらんな物言いになりました。
「ルビーの様子を見に来たのよ」
「ルビーが失敗してると思ったんですかぁ? 馬鹿にしないでくださいね?」
修道院長たちがいたときには、汚れを知らない天使のように清らかな表情だったルビーですが。
今は、邪悪な笑みを浮かべています。
「ルビーが不幸な生い立ちだって修道院長が言っていたわ。また可哀想なふりをしているの?」
「当たり前じゃないですかぁ。そのほうが上手く行くんですからぁ」
「ほどほどにしなさいね。いつかボロが出るわよ」
「そんなヘマしませんよぉ。あ、余計なことは言わないでくださいね? 私はここで上手くやっていきたいんですから。お姉様だって、修道院へ行った妹の評判が良いほうが、都合が良いでしょう?」
「それはそうだけれど……」
「私は上手くやりますから、お姉様は安心してて良いですよ?」
ルビーは艶やかに、勝気に微笑みました。
「ルビー、何だか綺麗になったわね」
「そうでしょう?」
私の賞賛を、ルビーは悪びれずに肯定しました。
「お母様が選んだ悪趣味なドレスじゃなくて、修道服ですからね。前より可愛くなったでしょう? 変なドレスを着なくて良いから清々してますよぉ」
「ルビーはお母様が選んだドレスが嫌だったの?」
「当たり前でしょう。あんな趣味の悪いドレス。お母様がドレスを褒められることってなかったでしょう? お母様はセンスが悪かったんです。私は元が可愛いから褒められてたけどぉ。ドレスはお母様が選んでたから最悪でしたよ?」
ルビーは憎々し気に眉を歪めました。
「私がみんなに可愛いって褒められてたから、私を着せ替え人形にしてたお母様は、自分が褒められた気分になってましたけどぉ。あんな悪趣味なドレス、他の子が着たら大惨事になってますよぉ」
悪趣味、と言われると、そうだったようにも思えます。
私は勉強ばかりさせられていたので、装いの良し悪しについてはまだ良く解らないのですが。
お母様がルビーのために選んだドレスは、どれも派手な感じのもので、私が着たら絶対に似合わないドレスでした。
お母様もいつも、私には似合わない、ルビーのほうが似合うと言っていました。
「……ルビーはいつもお母様にドレスを買ってもらって、大喜びしていたように見えたけど……?」
「あんなの接待に決まってるじゃないですかぁ。お母様が選んだドレスを着て、喜んでみせれば、お母様はご機嫌でしたからね」
「……そうだったのね……」
私は両親に叱られないように演技をしていましたが。
ルビーも私とは違った意味で演技をしていたのですね。
「僧服は良いですよぉ」
ルビーは満足気に微笑みました。
「ルビーはお洒落が好きだと思っていたから、僧服が好きだったなんて意外だわ」
「お洒落は好きですよ。でも僧服も好きです。だって……」
ルビーはニヤリと口の端で笑いました。
「僧服って質素だから、誤魔化しが効かないじゃないですかぁ。僧服を着ても可愛いのは、本当に可愛い子だけなんですよ? それにここではみんな同じ僧服だから、誰が一番可愛いか一目瞭然なんですぅ」
勝ち誇るようにルビーは言いました。
ルビーのその自信は一体どこから湧きあがって来るのでしょう。
呆れを通り越して、感心してしまいます。
「修道院長がルビーは人気者だって言っていたけれど……?」
ルビーは美少女ですが、この修道院は女子修道院です。
いくらルビーが可愛くても、女性しかいない女子修道院で、気の強いルビーが人気者というのは疑いたくなる話です。
「人気者ですよぉ。この修道院、貴族の娘が結構いるじゃないですかぁ。貴族の娘は庶民を見下して威張ってる女が多いんですよぉ。ルビーが庶民出身の修道女たちにちょっと優しくしてやったら、ルビーは貴族出身なのに優しくて心が綺麗だって、みんな感動してましたよぉ。チョロいですよ」
「そう……」
ルビーは心の中は真っ黒ですが。
大人しく僧服を着て、庶民出身の修道女たちに優しくしているなら、やっていることは品行方正です。
「ルビーが修道院でちゃんとやっているみたいで、安心したわ」
◆
ルビーが修道院へ行ってから半年が経過しました。
私とアルマンディン様の結婚式の日が近付いて来ました。
「サフィール嬢、その……」
アルマンディン様がが少し不安そうな顔をして、私に問い掛けました。
「結婚式にルビー嬢を呼んで大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ。ルビーは修道院でちゃんと常識を学んだの。もう以前のようなことはしないわ」
「そうなの?」
「それに叔母様がルビーに付き添ってくれるから大丈夫よ」
「それなら良いんだけど。スフェーン様や王子殿下たちも来るから、作法に気を付けるようルビー嬢に伝えておいて」
「解ったわ。ルビーに伝えておくわ」
修道院の面会室で、私はルビーと二人で話をしました。
私がルビーを待つ間にお話をしてくださった修道院長と、ルビーを連れて来てくれた修道女が退室して二人きりになると、ルビーは清楚な修道女の仮面を外してざっくばらんな物言いになりました。
「ルビーの様子を見に来たのよ」
「ルビーが失敗してると思ったんですかぁ? 馬鹿にしないでくださいね?」
修道院長たちがいたときには、汚れを知らない天使のように清らかな表情だったルビーですが。
今は、邪悪な笑みを浮かべています。
「ルビーが不幸な生い立ちだって修道院長が言っていたわ。また可哀想なふりをしているの?」
「当たり前じゃないですかぁ。そのほうが上手く行くんですからぁ」
「ほどほどにしなさいね。いつかボロが出るわよ」
「そんなヘマしませんよぉ。あ、余計なことは言わないでくださいね? 私はここで上手くやっていきたいんですから。お姉様だって、修道院へ行った妹の評判が良いほうが、都合が良いでしょう?」
「それはそうだけれど……」
「私は上手くやりますから、お姉様は安心してて良いですよ?」
ルビーは艶やかに、勝気に微笑みました。
「ルビー、何だか綺麗になったわね」
「そうでしょう?」
私の賞賛を、ルビーは悪びれずに肯定しました。
「お母様が選んだ悪趣味なドレスじゃなくて、修道服ですからね。前より可愛くなったでしょう? 変なドレスを着なくて良いから清々してますよぉ」
「ルビーはお母様が選んだドレスが嫌だったの?」
「当たり前でしょう。あんな趣味の悪いドレス。お母様がドレスを褒められることってなかったでしょう? お母様はセンスが悪かったんです。私は元が可愛いから褒められてたけどぉ。ドレスはお母様が選んでたから最悪でしたよ?」
ルビーは憎々し気に眉を歪めました。
「私がみんなに可愛いって褒められてたから、私を着せ替え人形にしてたお母様は、自分が褒められた気分になってましたけどぉ。あんな悪趣味なドレス、他の子が着たら大惨事になってますよぉ」
悪趣味、と言われると、そうだったようにも思えます。
私は勉強ばかりさせられていたので、装いの良し悪しについてはまだ良く解らないのですが。
お母様がルビーのために選んだドレスは、どれも派手な感じのもので、私が着たら絶対に似合わないドレスでした。
お母様もいつも、私には似合わない、ルビーのほうが似合うと言っていました。
「……ルビーはいつもお母様にドレスを買ってもらって、大喜びしていたように見えたけど……?」
「あんなの接待に決まってるじゃないですかぁ。お母様が選んだドレスを着て、喜んでみせれば、お母様はご機嫌でしたからね」
「……そうだったのね……」
私は両親に叱られないように演技をしていましたが。
ルビーも私とは違った意味で演技をしていたのですね。
「僧服は良いですよぉ」
ルビーは満足気に微笑みました。
「ルビーはお洒落が好きだと思っていたから、僧服が好きだったなんて意外だわ」
「お洒落は好きですよ。でも僧服も好きです。だって……」
ルビーはニヤリと口の端で笑いました。
「僧服って質素だから、誤魔化しが効かないじゃないですかぁ。僧服を着ても可愛いのは、本当に可愛い子だけなんですよ? それにここではみんな同じ僧服だから、誰が一番可愛いか一目瞭然なんですぅ」
勝ち誇るようにルビーは言いました。
ルビーのその自信は一体どこから湧きあがって来るのでしょう。
呆れを通り越して、感心してしまいます。
「修道院長がルビーは人気者だって言っていたけれど……?」
ルビーは美少女ですが、この修道院は女子修道院です。
いくらルビーが可愛くても、女性しかいない女子修道院で、気の強いルビーが人気者というのは疑いたくなる話です。
「人気者ですよぉ。この修道院、貴族の娘が結構いるじゃないですかぁ。貴族の娘は庶民を見下して威張ってる女が多いんですよぉ。ルビーが庶民出身の修道女たちにちょっと優しくしてやったら、ルビーは貴族出身なのに優しくて心が綺麗だって、みんな感動してましたよぉ。チョロいですよ」
「そう……」
ルビーは心の中は真っ黒ですが。
大人しく僧服を着て、庶民出身の修道女たちに優しくしているなら、やっていることは品行方正です。
「ルビーが修道院でちゃんとやっているみたいで、安心したわ」
◆
ルビーが修道院へ行ってから半年が経過しました。
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「サフィール嬢、その……」
アルマンディン様がが少し不安そうな顔をして、私に問い掛けました。
「結婚式にルビー嬢を呼んで大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ。ルビーは修道院でちゃんと常識を学んだの。もう以前のようなことはしないわ」
「そうなの?」
「それに叔母様がルビーに付き添ってくれるから大丈夫よ」
「それなら良いんだけど。スフェーン様や王子殿下たちも来るから、作法に気を付けるようルビー嬢に伝えておいて」
「解ったわ。ルビーに伝えておくわ」
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