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序章 目覚めと始まり

記憶の欠片。

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 俺は昼下がりの道を歩いていた。

 いい風だなぁ。

 呑気にそんなことを考えながら、休日の散歩を楽しんでいた。
 そうは言ったものの、タダの散歩をしていた訳では無い。人に会いに行っていたのだ。

 頼まれて人に会うのは初めてだったから、ゲームのクエストみたいでワクワクしていた。
 そんな気分で家を飛び出し、相手の屋敷を訪ねてみたものの、当分不在との事で、ガッカリというか、なんかモヤモヤして終わった。

 そんな訳で、すぐ忘れようと風のことばかり考え、春の穏やかな風に誘われ、テキトーに歩いていたのだ。

 そう言えば、屋敷の門の前に立っていた老婆の言葉を思い出した。

 「遠いところから来たのじゃな?わざわざご苦労じゃった。オマエさん、疲れておるな?」

 ーー妙に素早い動きで握手をされた。

 「ああ、手から伝わってくるぞ?疲れが……」

 老婆は俺の手をまじまじと見つめ、癒すような……試すような見抜けないような眼差しをした。

 「ん……?  ……あのちょっと、お婆さん……離してくれま……せんか?……」

 「また会う日まで。ハルト。……〈エナジードレイン〉」
  老婆は何かを唱えた。


 何だったんだろう……。
 そう思いながら老婆とのことを思い出していた。
 「また会う日まで……か」
 俺がそう発した瞬間、目の前に暗黒が立ち込め、俺は意識を失ってしまった。

ーーまた会う日まで。ハルト…………


 柔らかい太ももだ。
「起きたんですね。」
「あ……アルテミア?」

 目の前……俺の顔の上には可愛い顔があった。

 「ルーメンは記憶魔法で、相手の記憶を像にする魔法です。あなたの記憶を少しばかり拝見させて頂きました。すみません」

 ここはーーエリューシアだっけか?

 「ここまでの経緯をお教えしますね。えぇっと……名前はなんと呼べばいいですか?」

 名前……?
 思い出せない……。ショックで忘れてしまったのか?先程まで聞こえていたはずなんだけどな……。
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