誰が為の我が転生

キタノチズ

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ユメ

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「やぁ、こんにちわ、初めまして、もしくはお久しぶり?」

 姿の見えない、いや見えているのだろうか。おぼろげな男が話しかけている。
 かすかにシルエットはわかるが、それが視認できない。認識が難しいというのだろうか。

「まずは自己紹介をしよう。そうしよう。名前というのは大事だ。人生において初めて他人から譲渡されるものだからね。まぁ、人によって捨てたり変えたりしてしまうのだけれども。」

「僕はウィザード、そう魔法使いさ。だけど君たちの知る魔法使いと訳が違うよ。全てを知り管理する者さ。」
 
 ウィザードと男は名乗った。その名前に見覚えがあるわけではない。だが、その名前には違和感を覚えた。


「さては難しいことを考えているね?
死んだ後でもご苦労なことだねぇ」

 ウィザードはやれやれというふうに肩を落とした。そして自分にとっても聞き捨てならない言葉があった。

「あ、そうそう君は死んだのさ。そろそろ記憶もはっきりしてきて名前もわかるころじゃないかい?けど自己紹介はいらないよ?僕は全てを知り管理するものだからねっ!」

 自分以上に彼は自分を知っている。ここにいて不思議な感覚が湧き上がる。まさにそれは管理されている、というものだった。
 そして思い出したのだ。自分がどこで生まれ、育ち、そして死んだのか。
 そう僕はこういう存在だったのか、と。

「自分がどういう存在か理解をするのは大事なことさ。望み、願い、欲、そういうものがその人間を表す鏡だからね。そこで僕は君に一つ尋ねないといけない。」

「君は後悔の多い最後を迎えたね?
その後悔が僕を呼んだのさ、この幸福者め。
まさに不幸中の幸いさ。」

「前置きが長くなってしまったね。はっきり言うとね、このままでは君は成仏はできない。転生させて後悔が無いとは言えないが少ない人生を送ってもらわなければいけない。」


「そこで君は次はどのようなところに生まれたい?」


 今の自分に残っているものは後悔だけの人生だった。いや、違う。途中までは幸福だったのだ。ただ、幸福で満ち足りた人生は幕の閉じ方を間違った。

 なら俺は、俺が望むことは

「ーーーーーー」

「…ほう、君はおもしろいことを言う。
君は執着するというんだね。君の人生。いや、君たちの人生に。
もちろん、知っていた。知っていたとも。」

 ウィザードは淡々と語るが、その声の音色は少し高い。

「本人の口から聞くことほど素晴らしいことはない。そしてその願いに形が与えられた。
それがこの先、どのようになるか楽しみでならないね、僕は。」

 そして、俺は気づいた。自分の手足が薄れている。だんだんと消えかかっていると、表現した方が良いのだろうか。

「そろそろ時間のようだ。短いが楽しい時間をありがとう。僕は楽しかったよ。
 故に僕は悲しい。君にはここでの記憶を無くして貰わなければならない。せっかく語り合う仲になったというのに。このルールを作った奴は性格が歪んでいるに違いないね。」

 こちらとしてはあまり仲良くなった気がしない。ウィザードが勝手に多くを語っていた印象だ。

「そんな悲しそうな表情をしないでくれ。悲しいのは僕も一緒なんだ。たけど安心してくれ。この記憶は完全に無くなったりはしない。ここは魂の在り処、ここにあるのは魂のみ。故に魂の記憶。体とは出力体系が違う。故に原初の記憶。」

 ウィザードがそうこう話しているうちに体はどんどん薄くなっていた。手足の先はもう見えなくなっている。

「おおっと話し過ぎたみたいだね。僕の悪い癖さ。いい夢はお終いだ。また会おう。次の夢はもっといい夢であることを願うよ。」

 視界が滲み、世界が終わる。暗闇から光が漏れ、バリバリと音を立てて崩れ落ちていく。次第に光が世界に広がり、何が起こったのかすべてを俺は忘れる。


 鳥の鳴き声がある。まぶたの上から光が当たっているのだろう、目を開けていないのに眩しく感じる。手で光を遮り、まぶたを開けるとそこには見慣れた自室であった。
 腕を伸ばしあくびをする。ベッドから降りて立ち上がりもう一度伸びをして1日分の荷物をまとめる。荷物を腰のポーチに詰め、愛用の片手剣を一度鞘から出して確認する。刃こぼれは無く、研ぐ必要はないと判断し鞘に収める。そして片手剣を背中に背負い部屋を出る。左手の階段を降りて宿主に挨拶をして宿を出た。

 こうしてアルカ・ヤスレイの1日は幕を開けた。

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