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第25話 戦術公開 ★
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お互いの衝撃の告白から先に立ち直ったのは英凛の方だった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい……! だって旦那様ご結婚されてたじゃないですか、なんでそれでどうして……⁉︎」
「だから前に言っただろう、妻とは体格差があってうまくいってなかったって……」
「え、だって初夜は迎えられたって……」
「入らなかったんだ!」
「…………!」
恥を忍んでの告白だったのに、まさかこんな絶叫するような羽目になるとは思わなかった。
「……新婚初夜に……いざことに及ぼうとしたら、妻は小さすぎて……私のは大きすぎて……先っぽだけ挿れたら、痛いと泣かれてしまって……」
もうあの時のことは思い出しただけで悲しくなって萎えてくる。
怯えてしまって泣きじゃくる妻。私の心も粉々に砕け散った。
「私は……結婚する前に娼妓で初体験を済ませるのは妻となる女性に失礼だと思っていたから、娼館に行っても手で済ませてもらっていたんだ」
「……真面目ですね、旦那様」
「横にいたのが奉直と洋嘉なんだ。真面目にもなるさ」
「ああ……」
あんな女性にだらしない二人を見ていれば、女性を泣かせたくないと思ってしまうのは当然の帰結ではなかろうか。まあ、結果的に私も泣かせてしまったのだが。
「国境の娼館も……あそこにいる娼妓たちはみんな痩せ細っていたから、やっぱり大きすぎて挿れさせてもらえなくって……」
「じゃあ、本当に、初めて……?」
「だからそう言ってるだろう……」
四十目前にして経験がないなど、本当は恥ずかしすぎて言いたくなかったのだ。ましてや経験豊富そうな英凛には。だが……
「それよりも、英凛こそ初めてとはどういうことだ。私はてっきり……」
その手のことにはやたら詳しいし、手でするのも口でするのもはっきり言ってうまいし、胸で挟んだり風呂場で体を滑らせて洗ったりと、あれは処女のすることじゃないぞ⁉︎
「えっとですね……」
よいしょっと英凛が体を起こして寝台の上に座りなおす。少し寒そうだったので、掛布を上から羽織らせた。
「そもそも私、父様が亡くなった後、母様を一人で支えて行かなくちゃいけない、って思いまして。そのためには良い殿方と結婚して、安定した暮らしを手に入れる必要がある、と決意したんです」
それはまあ、分からないでもない。
ただ、当時の英凛は十五歳だったはずだが、果たしてそれが十五歳の少女の思考として適切かどうかはさておき。
「でも、男に弄ばれて捨てられたとか、結婚したはいいものの夫は妾にうつつを抜かしているとか、娼館通いが酷くて家に寄り付かない男とか、そういう話を周りでよく聞いたわけです。父様も結婚するまでは女遊びが酷かったって、母様も言ってましたしね」
「あ、ああ……」
「その頃は奥様は既に離縁されて出て行かれてしまっていたので、私は理想の男性である旦那様と結婚する気満々だったんですけど、いくら真面目な旦那様と言えど私の方で制御するくらいじゃないと、物理的にも精神的にも安定した生活にはならないんじゃないかと思って、技術を磨くことにしたわけです」
「……あまり聞きたくないが、何の技術を」
「男を虜にする技術を」
「…………やっぱり聞きたくなかった」
一般的な十五歳の少女の思考回路は知らないが、多分英凛は特殊すぎると思う。
そもそも十五歳の時点で、既に私と結婚する気満々って、その時の私は三十四歳だぞ? 十五歳の射程圏内には普通は入らんだろう。
「だって父様もよく言ってました。戦では将兵の熟練度合いが生死を分ける、と」
「奉直……」
お前が変な英才教育を施したせいで、お前の娘はとんでもない方向に行きかけたぞ!
「で、男性をよく知るために、それから実地訓練として色々な方とお付き合いしたんです。おかげで技術はすっかりと身につきまして」
よく知ってるさ!
もうそれはそれは毎回天国を見させてもらってるからな!
「その……男と交際していたら、そういうことにはならないのか?」
だってこんなに可愛くて、男好きのする体を持ってて、おまけに日々技術を磨いていて。私が交際している男だったら放っておかないだろう。
「勿論あります。だから手や口を駆使して……でも本当に駄目そうな時はこう言うんです」
英凛が両手を私の胸板にそっとあて、小首を傾げて上目遣いで言う。
「……結婚するまで、初めては大切にしたいの。最初の夜に、貴方にとびっきりをあげたいから」
「…………っ!」
いかん、分かっててもクラっときた。
いや、これは本当に耐性がなければひとたまりもないだろうな……
「……とまあ、これで今まで全て回避してきました」
「恐ろしいな……」
「それにほら、男性って女性が処女かどうか結構気にするじゃないですか、特に結婚相手は」
「うん、まあそうだな……」
「だからそこは死守しておきたいな、と。あと、もう一つ理由があるんですが」
「今度は一体何だ……」
今度は英凛が私にぎゅっと抱きついてきて、耳元で妖しく囁やく。
「……初めてだから、優しくして」
「~~~~っ!」
まずい、一気に下半身に血流が……もう本当に頭では理解しているのに踊らされる。英凛、恐ろしい子……と思った。
「ふふっ、これ興奮するでしょう?」
「ああ……悔しいがした」
多分この台詞に抗える男はそうそういないだろう。
まったくこの計算づくめの策士は本当に手に負えない。
「やっと言えました。良かった、効果があって」
「効果覿面だ……それで、言葉通り優しくすればいいのか?」
掛布を剥ぎ取りながら、英凛をそっと寝台に押し倒す。英凛が柔らかく笑いながら腕を伸ばし、私を引き寄せた。
「旦那様の、好きにして下さい」
「……責任はもてんぞ」
何しろ四十年近く拗らせた童貞なんだから、という言葉は唇を塞がれて吸い込まれて消えた。
***
「んっ……は、あっ……」
私の手でさえもあまるような恐ろしく重量級の胸の感触を楽しむように、寄せたり揉んだりしていると英凛の口からは悩ましい吐息がこぼれ落ちる。
尖りきった胸の頂きは赤く色づいた木の実のようで、何度ねぶっても飽きることはない。口に咥えて転がせばその度にびくびくと英凛の腰が揺れるのが楽しくて、ついつい調子に乗ってしまった。
「も……旦那、様……そこ、ばっかり……」
「気持ちよくないか?」
「きもち、いいけど……ジンジン、します……っ」
「なら継続だな」
「ん、ああっ! 噛んじゃ、や……っ」
片方を甘噛みし、片方を指の先でぐにぐにと摘むと、英凛がぱたぱたと首を振った。
「どっちがいい?」
「んーっ!」
「私はこういうことも初めてだからな。英凛が気持ちいいか、そうでないか教えてくれないと分からない」
「…………っ!」
英凛の顔が羞恥に染まる。本当は英凛の答えなんて分かりきっているのだけれど、こうして言葉をかけると思いの外英凛が恥じらうのが可愛くて、ついつい虐めたい気持ちになると初めて知った。
「……どっちも……」
「ん?」
「……どっちも、気持ちいいです」
「そうか、それは良かった」
「……っあ! あ、ああっ……や、あっ……!」
再び真っ赤に腫れ上がった乳首に吸い付き、片方には軽く爪を立てて引っ掻く。確かに胸も気持ちいいのだろうが、さっきからずっと胸ばかり責め続けていたせいで英凛が太腿をもぞもぞと擦り合わせているのにはとっくに気づいていた。
んー……でもこの感触、触り心地良すぎてやめられないんだよな……
「旦、那様……」
英凛がこれ以上ないくらい潤んだ瞳で訴えかけてくる。その大きな瞳が何を言いたいかなんて丸わかりだ。あんまり焦らすと後で仕返しされそうだし……と思いながら、乳首を摘んでいた指を離し、なだらかな腹部へと手を滑らせた。
滑らかな肌の感触を楽しむように、脇腹やへそ周りを撫でる。時々太腿の方へと手を伸ばしてその弾力を楽しみ、足の付け根の際どいところや、敏感な内腿を掠めるようにして触っていると、ますます英凛がもぞもぞとし始めた。
胸の尖りを一度きつく吸い上げると、ちゅぽんとわざと音を立てて離す。そのまま谷間から臍へと舌を滑らせていって、淡い茂みに顔を埋めた。
英凛は、布面積の小さな下帯を履いているせいか和毛も綺麗に整えてあって、その茂みは限りなく薄い。鼻を寄せて匂いを嗅ぐと、ここも花の香りがした。こんなところまで良い香りがするだなんて、一体どうしてだろう。気になって、ついもう一度嗅いでしまった。
「……っ……そんなとこ、嗅がないで、下さい……っ」
「どうして? 英凛はここもいい香りがするんだ」
「……っ!」
「ああそうか。ここに花が咲いているからか」
たっぷりと蜜をこぼす、男を引き寄せて止まない花が。
まるで虫にでもなったかのようなつもりで花の蜜を吸い、花芯をちろちろと舌でくすぐると、英凛の腰が面白いように跳ねた。
「んうっ! っあ、あ、あっ……!」
どうしてだろうか、どこを可愛がれば英凛が喜ぶのか何となく分かる。花びらを割り開いて中まで舌を差し込んで舐め上げ、紅玉のような肉芽を包み込む。その度にとろとろと蜜が次から次へと滴り落ちて、淫らな香りが漂った。
「っあ! や、あっ……旦那、様ぁ……っ」
桃色の花びらがひくひくと蠢いて、虫を中へと誘う。私はたまらず入り口に指を引っ掛けると、つんつんとそこを刺激し始めた。
「英凛、指を挿れてもいいか」
「一々、言わ、なっ……でっ……」
それを了承と捉え、つぷりと指を一本挿し入れる。中は恐ろしく熱くてとろけるようにみっちりとしていて、まだ指一本だというのにきゅうきゅうと吸いついてきた。
ゆっくりと指でかき混ぜて馴染ませると、慎重に抜き挿しを始めた。蜜が溢れているおかげで滑りはよく、ぐちゃりぐちゃりと淫靡な音が響き渡る。中へ入れた指に合わせてぬるりと花芯を擦ると、英凛の背がしなった。
「あ、あぁっ! だん、な、様ぁ……一緒に、しちゃ……っ」
「ん? この方が気持ちいいのだろう?」
顔を真っ赤にさせた英凛が、それでもこくこくと頷く。英凛の体は反応がいいから、どこが気持ち良いのか分かりやすくて助かる。
だいぶ中が慣れてきたようなので、指を二本に増やした。指二本でも隙間なく包まれているような気がするのだが、本当に私のものが入るのだろうか。
気になって二本の指を拡げてみる。ぐっぽりと音を立てて開いたそこは意外と伸縮性がありそうで、もう少し慣らせば入りそうだと思った。一生懸命拡げていると、指を曲げた時に英凛が一際掠れた声を上げる箇所があることに気づいた。
「ここか……?」
「やっ、あっ、ああっ! そこ、だめっ……!」
「だめ? 随分と気持ち良さそうに見えるが」
「きもち、よすぎて、だめぇっ……!」
なるほど了解した。逃げる英凛の腰をがしっと捕まえて、二本の指で抜き挿しを早める。じゅぼじゅぼと卑猥な音がして、蜜が白く泡立った。英凛の呼吸は浅く早く、手は敷布を固く握り締めている。
「やああっ! だめっ、だめっ……いっちゃう!」
「好きなだけ達すればいい」
駄目だと言う割には、英凛の腰は揺らめいているし、中も私の指に食らいついて離れない。英凛は素直じゃないな、と思いながらじぅっと花芯を吸い上げた。
「ああああっ! やぁっ! いく、いく……っ!」
英凛が思い切り痙攣するのに合わせて指を引き抜くと、ぷしゅっと音がして私の顔に水がかかった。小水か、と一瞬思ったが匂いもしないし色もない。そう言えば、洋嘉が女性が感極まると潮という無味無臭の液体を噴く、と猥談に興じていたことを思い出した。
ぽたりぽたりと顔を伝い落ちてくる液体を、ぺろりと舌で舐め取る。確かに特に味もしなかった。
「や……なんで、なんで旦那様、それまた飲むんですかぁ……」
達してくったりと四肢を投げ出した英凛が、恨めしそうに目線だけでこちらを見てくる。
「……また?」
「……旦那様、酔った時に私を舐め倒して……三回も飲みました……」
「…………っ!」
あの時か!
酔い潰れて帰ってきて、英凛を押し倒してひん剥いて、そのまま抱き枕にして寝た日!
「す、済まない……私はそんなことをしていたのか……」
道理で翌朝喉も渇いていないはずだ。それだけ飲めば。
「……気持ち良いのはいいですけど……飲まれるのは流石にちょっと恥ずかしいです……」
「だがこれは特に味もしないぞ?」
「でも! でも、です!」
多分今後も私は飲むだろうな、と思った。だって英凛が恥ずかしがるのが可愛いから。
「英凛だって私のを飲むじゃないか。私だけ飲めないのはおかしい」
「だ、だって! 旦那様のと私のは違うから……」
「何が違う? 極まって出すことには変わりないだろう? 小水ではないのだし」
「う、うう……」
珍しく英凛を言葉で言い負かせたことがなんとなく嬉しい。そう思っていたら、英凛が反撃に出てきた。
「じゃ、旦那様のも飲みます」
下衣の上からそれをがしっと掴まれて。
英凛は正しく獲物を見つけた肉食獣の眼差しをしていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい……! だって旦那様ご結婚されてたじゃないですか、なんでそれでどうして……⁉︎」
「だから前に言っただろう、妻とは体格差があってうまくいってなかったって……」
「え、だって初夜は迎えられたって……」
「入らなかったんだ!」
「…………!」
恥を忍んでの告白だったのに、まさかこんな絶叫するような羽目になるとは思わなかった。
「……新婚初夜に……いざことに及ぼうとしたら、妻は小さすぎて……私のは大きすぎて……先っぽだけ挿れたら、痛いと泣かれてしまって……」
もうあの時のことは思い出しただけで悲しくなって萎えてくる。
怯えてしまって泣きじゃくる妻。私の心も粉々に砕け散った。
「私は……結婚する前に娼妓で初体験を済ませるのは妻となる女性に失礼だと思っていたから、娼館に行っても手で済ませてもらっていたんだ」
「……真面目ですね、旦那様」
「横にいたのが奉直と洋嘉なんだ。真面目にもなるさ」
「ああ……」
あんな女性にだらしない二人を見ていれば、女性を泣かせたくないと思ってしまうのは当然の帰結ではなかろうか。まあ、結果的に私も泣かせてしまったのだが。
「国境の娼館も……あそこにいる娼妓たちはみんな痩せ細っていたから、やっぱり大きすぎて挿れさせてもらえなくって……」
「じゃあ、本当に、初めて……?」
「だからそう言ってるだろう……」
四十目前にして経験がないなど、本当は恥ずかしすぎて言いたくなかったのだ。ましてや経験豊富そうな英凛には。だが……
「それよりも、英凛こそ初めてとはどういうことだ。私はてっきり……」
その手のことにはやたら詳しいし、手でするのも口でするのもはっきり言ってうまいし、胸で挟んだり風呂場で体を滑らせて洗ったりと、あれは処女のすることじゃないぞ⁉︎
「えっとですね……」
よいしょっと英凛が体を起こして寝台の上に座りなおす。少し寒そうだったので、掛布を上から羽織らせた。
「そもそも私、父様が亡くなった後、母様を一人で支えて行かなくちゃいけない、って思いまして。そのためには良い殿方と結婚して、安定した暮らしを手に入れる必要がある、と決意したんです」
それはまあ、分からないでもない。
ただ、当時の英凛は十五歳だったはずだが、果たしてそれが十五歳の少女の思考として適切かどうかはさておき。
「でも、男に弄ばれて捨てられたとか、結婚したはいいものの夫は妾にうつつを抜かしているとか、娼館通いが酷くて家に寄り付かない男とか、そういう話を周りでよく聞いたわけです。父様も結婚するまでは女遊びが酷かったって、母様も言ってましたしね」
「あ、ああ……」
「その頃は奥様は既に離縁されて出て行かれてしまっていたので、私は理想の男性である旦那様と結婚する気満々だったんですけど、いくら真面目な旦那様と言えど私の方で制御するくらいじゃないと、物理的にも精神的にも安定した生活にはならないんじゃないかと思って、技術を磨くことにしたわけです」
「……あまり聞きたくないが、何の技術を」
「男を虜にする技術を」
「…………やっぱり聞きたくなかった」
一般的な十五歳の少女の思考回路は知らないが、多分英凛は特殊すぎると思う。
そもそも十五歳の時点で、既に私と結婚する気満々って、その時の私は三十四歳だぞ? 十五歳の射程圏内には普通は入らんだろう。
「だって父様もよく言ってました。戦では将兵の熟練度合いが生死を分ける、と」
「奉直……」
お前が変な英才教育を施したせいで、お前の娘はとんでもない方向に行きかけたぞ!
「で、男性をよく知るために、それから実地訓練として色々な方とお付き合いしたんです。おかげで技術はすっかりと身につきまして」
よく知ってるさ!
もうそれはそれは毎回天国を見させてもらってるからな!
「その……男と交際していたら、そういうことにはならないのか?」
だってこんなに可愛くて、男好きのする体を持ってて、おまけに日々技術を磨いていて。私が交際している男だったら放っておかないだろう。
「勿論あります。だから手や口を駆使して……でも本当に駄目そうな時はこう言うんです」
英凛が両手を私の胸板にそっとあて、小首を傾げて上目遣いで言う。
「……結婚するまで、初めては大切にしたいの。最初の夜に、貴方にとびっきりをあげたいから」
「…………っ!」
いかん、分かっててもクラっときた。
いや、これは本当に耐性がなければひとたまりもないだろうな……
「……とまあ、これで今まで全て回避してきました」
「恐ろしいな……」
「それにほら、男性って女性が処女かどうか結構気にするじゃないですか、特に結婚相手は」
「うん、まあそうだな……」
「だからそこは死守しておきたいな、と。あと、もう一つ理由があるんですが」
「今度は一体何だ……」
今度は英凛が私にぎゅっと抱きついてきて、耳元で妖しく囁やく。
「……初めてだから、優しくして」
「~~~~っ!」
まずい、一気に下半身に血流が……もう本当に頭では理解しているのに踊らされる。英凛、恐ろしい子……と思った。
「ふふっ、これ興奮するでしょう?」
「ああ……悔しいがした」
多分この台詞に抗える男はそうそういないだろう。
まったくこの計算づくめの策士は本当に手に負えない。
「やっと言えました。良かった、効果があって」
「効果覿面だ……それで、言葉通り優しくすればいいのか?」
掛布を剥ぎ取りながら、英凛をそっと寝台に押し倒す。英凛が柔らかく笑いながら腕を伸ばし、私を引き寄せた。
「旦那様の、好きにして下さい」
「……責任はもてんぞ」
何しろ四十年近く拗らせた童貞なんだから、という言葉は唇を塞がれて吸い込まれて消えた。
***
「んっ……は、あっ……」
私の手でさえもあまるような恐ろしく重量級の胸の感触を楽しむように、寄せたり揉んだりしていると英凛の口からは悩ましい吐息がこぼれ落ちる。
尖りきった胸の頂きは赤く色づいた木の実のようで、何度ねぶっても飽きることはない。口に咥えて転がせばその度にびくびくと英凛の腰が揺れるのが楽しくて、ついつい調子に乗ってしまった。
「も……旦那、様……そこ、ばっかり……」
「気持ちよくないか?」
「きもち、いいけど……ジンジン、します……っ」
「なら継続だな」
「ん、ああっ! 噛んじゃ、や……っ」
片方を甘噛みし、片方を指の先でぐにぐにと摘むと、英凛がぱたぱたと首を振った。
「どっちがいい?」
「んーっ!」
「私はこういうことも初めてだからな。英凛が気持ちいいか、そうでないか教えてくれないと分からない」
「…………っ!」
英凛の顔が羞恥に染まる。本当は英凛の答えなんて分かりきっているのだけれど、こうして言葉をかけると思いの外英凛が恥じらうのが可愛くて、ついつい虐めたい気持ちになると初めて知った。
「……どっちも……」
「ん?」
「……どっちも、気持ちいいです」
「そうか、それは良かった」
「……っあ! あ、ああっ……や、あっ……!」
再び真っ赤に腫れ上がった乳首に吸い付き、片方には軽く爪を立てて引っ掻く。確かに胸も気持ちいいのだろうが、さっきからずっと胸ばかり責め続けていたせいで英凛が太腿をもぞもぞと擦り合わせているのにはとっくに気づいていた。
んー……でもこの感触、触り心地良すぎてやめられないんだよな……
「旦、那様……」
英凛がこれ以上ないくらい潤んだ瞳で訴えかけてくる。その大きな瞳が何を言いたいかなんて丸わかりだ。あんまり焦らすと後で仕返しされそうだし……と思いながら、乳首を摘んでいた指を離し、なだらかな腹部へと手を滑らせた。
滑らかな肌の感触を楽しむように、脇腹やへそ周りを撫でる。時々太腿の方へと手を伸ばしてその弾力を楽しみ、足の付け根の際どいところや、敏感な内腿を掠めるようにして触っていると、ますます英凛がもぞもぞとし始めた。
胸の尖りを一度きつく吸い上げると、ちゅぽんとわざと音を立てて離す。そのまま谷間から臍へと舌を滑らせていって、淡い茂みに顔を埋めた。
英凛は、布面積の小さな下帯を履いているせいか和毛も綺麗に整えてあって、その茂みは限りなく薄い。鼻を寄せて匂いを嗅ぐと、ここも花の香りがした。こんなところまで良い香りがするだなんて、一体どうしてだろう。気になって、ついもう一度嗅いでしまった。
「……っ……そんなとこ、嗅がないで、下さい……っ」
「どうして? 英凛はここもいい香りがするんだ」
「……っ!」
「ああそうか。ここに花が咲いているからか」
たっぷりと蜜をこぼす、男を引き寄せて止まない花が。
まるで虫にでもなったかのようなつもりで花の蜜を吸い、花芯をちろちろと舌でくすぐると、英凛の腰が面白いように跳ねた。
「んうっ! っあ、あ、あっ……!」
どうしてだろうか、どこを可愛がれば英凛が喜ぶのか何となく分かる。花びらを割り開いて中まで舌を差し込んで舐め上げ、紅玉のような肉芽を包み込む。その度にとろとろと蜜が次から次へと滴り落ちて、淫らな香りが漂った。
「っあ! や、あっ……旦那、様ぁ……っ」
桃色の花びらがひくひくと蠢いて、虫を中へと誘う。私はたまらず入り口に指を引っ掛けると、つんつんとそこを刺激し始めた。
「英凛、指を挿れてもいいか」
「一々、言わ、なっ……でっ……」
それを了承と捉え、つぷりと指を一本挿し入れる。中は恐ろしく熱くてとろけるようにみっちりとしていて、まだ指一本だというのにきゅうきゅうと吸いついてきた。
ゆっくりと指でかき混ぜて馴染ませると、慎重に抜き挿しを始めた。蜜が溢れているおかげで滑りはよく、ぐちゃりぐちゃりと淫靡な音が響き渡る。中へ入れた指に合わせてぬるりと花芯を擦ると、英凛の背がしなった。
「あ、あぁっ! だん、な、様ぁ……一緒に、しちゃ……っ」
「ん? この方が気持ちいいのだろう?」
顔を真っ赤にさせた英凛が、それでもこくこくと頷く。英凛の体は反応がいいから、どこが気持ち良いのか分かりやすくて助かる。
だいぶ中が慣れてきたようなので、指を二本に増やした。指二本でも隙間なく包まれているような気がするのだが、本当に私のものが入るのだろうか。
気になって二本の指を拡げてみる。ぐっぽりと音を立てて開いたそこは意外と伸縮性がありそうで、もう少し慣らせば入りそうだと思った。一生懸命拡げていると、指を曲げた時に英凛が一際掠れた声を上げる箇所があることに気づいた。
「ここか……?」
「やっ、あっ、ああっ! そこ、だめっ……!」
「だめ? 随分と気持ち良さそうに見えるが」
「きもち、よすぎて、だめぇっ……!」
なるほど了解した。逃げる英凛の腰をがしっと捕まえて、二本の指で抜き挿しを早める。じゅぼじゅぼと卑猥な音がして、蜜が白く泡立った。英凛の呼吸は浅く早く、手は敷布を固く握り締めている。
「やああっ! だめっ、だめっ……いっちゃう!」
「好きなだけ達すればいい」
駄目だと言う割には、英凛の腰は揺らめいているし、中も私の指に食らいついて離れない。英凛は素直じゃないな、と思いながらじぅっと花芯を吸い上げた。
「ああああっ! やぁっ! いく、いく……っ!」
英凛が思い切り痙攣するのに合わせて指を引き抜くと、ぷしゅっと音がして私の顔に水がかかった。小水か、と一瞬思ったが匂いもしないし色もない。そう言えば、洋嘉が女性が感極まると潮という無味無臭の液体を噴く、と猥談に興じていたことを思い出した。
ぽたりぽたりと顔を伝い落ちてくる液体を、ぺろりと舌で舐め取る。確かに特に味もしなかった。
「や……なんで、なんで旦那様、それまた飲むんですかぁ……」
達してくったりと四肢を投げ出した英凛が、恨めしそうに目線だけでこちらを見てくる。
「……また?」
「……旦那様、酔った時に私を舐め倒して……三回も飲みました……」
「…………っ!」
あの時か!
酔い潰れて帰ってきて、英凛を押し倒してひん剥いて、そのまま抱き枕にして寝た日!
「す、済まない……私はそんなことをしていたのか……」
道理で翌朝喉も渇いていないはずだ。それだけ飲めば。
「……気持ち良いのはいいですけど……飲まれるのは流石にちょっと恥ずかしいです……」
「だがこれは特に味もしないぞ?」
「でも! でも、です!」
多分今後も私は飲むだろうな、と思った。だって英凛が恥ずかしがるのが可愛いから。
「英凛だって私のを飲むじゃないか。私だけ飲めないのはおかしい」
「だ、だって! 旦那様のと私のは違うから……」
「何が違う? 極まって出すことには変わりないだろう? 小水ではないのだし」
「う、うう……」
珍しく英凛を言葉で言い負かせたことがなんとなく嬉しい。そう思っていたら、英凛が反撃に出てきた。
「じゃ、旦那様のも飲みます」
下衣の上からそれをがしっと掴まれて。
英凛は正しく獲物を見つけた肉食獣の眼差しをしていた。
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