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第1章 獣の檻
第20話 初夜 4
しおりを挟む翠蓮は口を手で覆ってその時を待っていた。
さきほどまでの渓青の様子からして、今度は中へと指を挿れるのだろうということはなんとなく分かっていた。
けれども琰単に無遠慮に体の中を弄られたときのことを思い出して体が竦む。自分の意思と関係なく異物が体内を荒らすことのなんと恐ろしかったことか。
渓青はあそこまで遠慮なしにはしないだろう、とは思う。しかし自分ではないものが自分の中に入るということに対して、翠蓮は心に傷を負ってしまっていた。
渓青の指がそっと合わせ目に触れる。翠蓮がきゅっと目をつむると、中に入るのだろうと思っていた指は、そのままぬめりをまとわせて秘部の上のほうへと向かう。そしてなにか小さなとっかかりのようなところに触れられたとき、翠蓮の体は稲妻が走ったような衝撃を受けて硬直した。
「……っあ⁉︎」
驚きすぎて思わず目を見開いてしまった翠蓮は見えているだろうに、渓青はお構いなしにくるりとその突起のようなもののまわりを指でなぞる。自分の体になにが起きているのかさえ分からず、翠蓮は足の指をぎゅっと握って衝動に耐えた。
「……っ、あ、あぁっ……っけ、渓、せっ……」
「どうかされました?」
分かっていてやっているのか、違うのか、渓青は答えながらも指を止めない。指の腹でさすったり、指先で小刻みに擦りあげたり。押しつぶされ、しまいにはきゅっと軽く摘ままれたとき、翠蓮はさすがに音を上げて、渓青の腕を袖ごと握りしめて制止を訴えた。
「渓、青っ……も、それっ……なに……っ」
「……もしかして、ここに触れられるのも初めてですか?」
渓青の言葉に、翠蓮は返事をすることさえできずにこくこくと頷いて答えた。それでようやく渓青も手を止め、少し体を起こす。
「ここは陰核とか、陰蒂などと呼ばれている箇所で、女性の体の中でもっとも敏感で……有り体に言ってしまえば一番てっとり早く快感を得られる場所です。男性で言えば、陰茎の先端に相当します」
説明しながらも渓青がつんつんと指でつつくものだから、そのたびに翠蓮は渓青の腕を握った。
「それ……駄目です。なんだか粗相してしまいそうな感覚になるので……」
「大丈夫ですよ。もうすでに敷布は染みてしまっていますから」
「うそ……っ」
渓青はなんでもないことのようにさらっと言ったのだが、翠蓮は慌ててがばりと体を起こした。体が動いたはずみに太腿の付け根に冷たい感触があって、たしかに敷布が濡れていることを知る。
「ご安心を。小水ではなく愛液ですし、女性ならば普通の反応です。むしろ翠蓮様は少し感度が良すぎるくらいですよ」
まるで優秀な生徒を褒めるように渓青は言うが、もう翠蓮は恥ずかしすぎて渓青の顔などまともに見られなかった。そんな翠蓮を渓青はくすくすと笑うと、そっと肩に手を添え、再び優しく寝台に横たえさせた。しかし丁寧な動作とは裏腹に、問答無用で脚を大きく開かれて、濡れそぼつそこに視線を感じる。
「……次は中に挿れますから、痛かったりしたら遠慮なく仰ってくださいね」
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