烙印

柊紫苑

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第二章 出会い

奇妙な隣人

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その日はやけに暑かった

「さっさと歩け!おい!家畜共!連れが増えるぞ!」

今日も1人…誰か捕まったみたいだ
久しぶりに増える【連れ】は
金色の髪が綺麗な女の子だった

「こいつは、高く売れるからな!指1本触れるんじゃねぇぞ!さっさとは入れ!」
「……」

その子は何の抵抗もせず隣の牢に入った
豚はしばらくにらにらと気持ち悪い笑みを浮かべ彼女を見ていたが直ぐに持ち場へ帰っていった

「…ユタ綺麗な子だね……」

俺の後に隠れながら弟のタキが顔を赤らめて呟いた。周りの牢からもヒソヒソと話し声がする
タキの頭を乱暴に撫でながら彼女の方を見る
確かに綺麗だ…でも、笑いも泣きもしない彼女に俺は不気味さを感じた……

次の日も、その次の日も
彼女は無表情だった

「……ユタ?ゆーたー?ユタ!!!」
「うわっ、なんだよタキ」
「ユタがいけないんだ!ずっとぼーっとあの子ばっかり見て!お仕事しないと豚が怒るのに!」

タキはポカポカと俺を叩く

「いてっ、ちょ、タキごめんって」
「ちゃんとしてよね!」

むすっと頬を膨らませタキが仕事に戻る

「何やってんだろ…」

気持ちを切り替え、今日の仕事に取り掛かった
タキの話じゃ、俺は彼女の事ばっかり見ているらしい……そんなに、見てるのか?俺……?

彼女は仕事をしない
豚がやけに気に入ったみたいで蝶よ花よと愛でてばかりいるからだ、喧嘩っ早いガイルのおっさんが仕事を彼女にさせようとしたらすっ飛んできておっさんボコボコにされた
それから、誰も彼女に近づこうとしない
彼女の名前さえわからない
そんな彼女は今日もその綺麗な髪を風に遊ばせてた、そして今日も空虚を眺めてた

「そっちの芋よこせ」
「自分で取れや」
「今日あのじいさんがよ……」
「なんだ、また何かしでかしたか」

夕飯時はガヤガヤと煩い
牢の飯はこの頃少しだけ豪華になった
豚の機嫌がいいからだろう
彼女の部屋にはルネの聖水やら、パルナの実、ふわふわのパンなど豪華な食材が来る
豚は彼女に好かれたいようだが
彼女は少しだって笑いかけやしない、憎い豚が哀れに思えるくらいには
彼女はほんの少しパンをかじって、聖水を飲むくらいでほとんど食べない
すると、いつもいいないいなてしか言わなかったタキが近づいて言った

「お姉ちゃん、食べないならちょーだい!」

「…はい」

初めて彼女の声を聴いた
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