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第2章 更なるレベルアップへの道のり

第12話 新たなる出発

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「ふぅ、長い道のりだった」

 崩れ去った遺跡を見るともう出入り口が消えていた。

 ようやく自身のレベルを9999まで上げたのも束の間、闇魔法を覚えたのだ。これをレベル上げしないことには俺の気が収まらない。

「幸い、森には強いモンスターがいそうだしな。こいつらでレベル上げでも楽しみながら街でも目指せばいいか」

 俺は足どり軽く、森を駆けていく。

 出会った敵は片っ端からダークネスファイヤーの魔法で焼いて、経験値だけもらい、すぐに他の敵を索敵していく。

「このマッピングの魔法はすごいな。地形だけでなく、モンスターの位置まで出るなんて」

 このマッピングは俺が視界に捉えた所の地形が映されるだけでなく、その範囲にいるモンスターの名前やレベルまでわかるのだ。

 おかげでレベルの高いモンスターを効率よく倒しながら進んでいける。

 闇魔法のレベルは順調に上がっていく。

「しっかし、森のモンスターは弱いなぁ。遺跡のアンデッドが強すぎたのか? これじゃレベルもすぐに上がらなくなりそうだ……」

 早くも数十匹倒さないと闇魔法が上がらない感じになってきた。

「むぅっ、やはりハーデスに黙って協力してもらえばよかったな。これじゃいつまでたってもカンストになりそうにない……」

 そんなことを考えながら歩いていると、マッピングの魔法に多数のモンスターが集まっている所を発見した。

「ん? こんなにモンスターが集まってるなんて……、とりあえず、行ってみたほうがいいんだろうか? う~ん」

 とりあえず、様子を見ることにしてそのモンスター達が集まっている場所へ向かった。



「ブヒャブヒャ!」

 オーク達が隊列を作って森の中を進んでいる所に出くわした。体長三メートル以上もありそうな大柄の体に大きな石斧や丸太のような棍棒をそれぞれ持っており、それらは血に濡れていた。

 そして、後方にはどこからか攫ってきた女性達を引き連れていた。

「こりゃ、見てしまったからには見過ごせないな」

 女性達にバリヤーを使い、オークの攻撃が届かないようにすると、すぐに周りのオークたちをダークファイアーで燃やした。

「ブヒャヒャ??」

 オーク達は俺の存在に気づくとすぐに猛然と突進してくる。ホーリーソードを使えば一瞬で全滅させられるのだが、少しでも闇魔法のレベルをあげなければならないため、それは使えない。

 残像を残し、オークの突進を避けると、一匹づつ丁寧にダークファイアーで燃やす。

 いい感じに燃えるオークからは焼ける肉の香りが辺りに広がり、俺の胃袋を刺激する。

 すぐにグ~ッと腹が反応してしまうが、今は人助けが先だ。

 戦闘が終わったら久しぶりに食事! しかも肉を食べ放題だな!

 溢れる食欲を抑えつつ、次から次へ現れるオーク達を焼いていった。



 全てのオークを焼き倒すと、女性達が俺に近づいてきた。

「助けていただき、あ、ありがとうございます……」

 先頭にいた女性は俺の姿をチラッチラッと見てくる。

「いえ、皆さん、無事でしたか?」

「それが、怪我をして動けない者もおりまして、オークに担がれていたものですから……」

「それはいけない。すぐに治療しますよ」

 俺はエリアヒールを無詠唱で十回ほど重ねがけし、エリアキュアーもかけた。

 目の前の女性も含めて、顔や手のシワまでみるみるうちに若返っていき、怪我もなくなったうえ、服まで新品のような輝きに変化した。

「え? な、ななななんですか?! これは!」

「え? ヒールとキュアーっていう魔法ですけど……」

「は?」

 女性達は皆、目を丸くしてお互いにおきた変化に驚いていた。

 手や足を怪我した人もすっかり治り、血だらけで破れた服まで元通りだ。

「ですからヒールとキュアーですって」

「い、いやいやいやいやいやいや、ヒールとキュアーでこんな効果が出るわけないじゃないですか!」

 凄まじい剣幕で俺に近寄る女性。あまりの迫力に俺の足が後ずさってしまう。

「ま、まぁ落ち着いて、落ち着いて。ね?」

「あら、やだ。私ったら。すみません。命の恩人に」

 ついついサービスのつもりがやりすぎてしまったな。気をつけなければ。あまり目立った行動をとってしまってはスローライフは夢のまた夢だ。

「では、皆さんはこの近くにある街に住んでいたんですね……」

「えぇ、突然、オークの群れに襲われてしまって……」

「なるほど、では俺がその街まで送って差し上げましょう」

「よろしいのですか?」

「えぇ、丸腰の女性達だけでこの森を抜けるのは難しいでしょうから」

 何とかうまいことを言えただろうか? 俺だって好きでこんな森にいたわけではない。一日だって早く人の街へ行きたいのだ! それには目の前の女性に案内してもらうのが手っ取り早い。

「では、お願いします。私達の街を案内させていただきますね」

 女性には、よそ者である俺を疑っている感じはないようだ。

 俺は内心、ほくそ笑んだ。

 やった、これで怪しまれずに街へ行ける!

「ちょっとまってよ、見ず知らずの男をいきなり街に通すのは危ないじゃない!」

 後ろの方から声がした。その女は前に出てきて、

「大体、今使っていた魔法も怪しいわ。ヒールやキュアーみたいな初級魔法にこんな効果があるわけないじゃない。胡散臭い奴……」

「ミーナ! 命の恩人になんてことを言うの!」

 前に出てきたのは女の娘だった。背は低めで金髪をツインテールに結んでいる。少しツリ目で気が強そうなその女の娘は耳が横に長く出ているのだった。

「もしかしてエルフの方ですか?」

「えぇ、そうよ」

「わぁ、初めまして。エルフの方に出会ったのは初めてです!」

「そ、そう。私は旅をしていてたまたま近くの街にいただけなんだけど、とんだ災難だったわ」

 エルフの女の娘はない胸をピンと反らし、腕を組んでこちらを怪しむ目つきで睨んでくる。

「それはいいとして、アナタの魔法だけど、あれはなに? 黒い炎でブタ達を焼いていたようだけど」

「ん? あぁ、ダークファイアーのことかな? 普通のファイアーってのがまだ使えないんだよね。そこそこ使えるから使ってるんだけど、これがどうかしたの?」

「どうかしたの? じゃないわよ! オークを一撃で倒す魔法なんて伝説級のシロモノじゃない! そんな魔法をしれっと使っておいて、私達を助けに来た? だなんてあまりにも都合よすぎるんじゃない?!」

 むぅ! 今のところダークファイアーしか闇魔法は知らないから仕方なく使っていたのだが、こんな所を疑われるなんて!

「い、いい、一撃は言い過ぎだよ。ほら、オークの口元を狙うと、顔の周りの酸素を無くすことができるんだ。それでオークが酸欠で倒れるから、そのまま燃えていくってわけさ」

「は? サンソって何言ってるの? 馬脚を現したわね! 私達をどうするつもりなのよ!」

 しまった、酸素なんて知らないのか。話せば話すほどボロが出ちまう!

「いや、俺はただ皆さんを……」

「ミーナさん。そのくらいにしてください」

 最初に前に出ていた女性が俺たちの間に入ってくれた。

「エリザ……。でもコイツは怪しいわ!」

「そうだとしても、彼は私達を助けてくれたんですよ? それに何かする気であれば、私達が今、無事でいられるはずがないでしょう?」

 お? そうだそうだ! この生意気エルフにもっと言ってやってくれ!

「ごめんなさいね、彼女は私の友人なんだけど、オークの襲撃に合って気が立ってしまって」

「いえいえ、仕方がないですよ」

「申し遅れました。私は近くの街で薬屋を営んでおりますエリザと申します」

「あ、これはご丁寧に。俺はソウっていいます」

「こちらのエルフはミーナといいます。さ、ソウさん。街まで案内させていただきますわ」

 そうして元気になった女性達を引き連れ、俺は街まで案内してもらうのだった。


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