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第6章 アナザージャパン編

第71話 大王の意地

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「ぬぅ? 貴様っ! まだズルをしたな?」

 もう大王を倒すのは5度目だ。その度に生き返らせてるんだが、起き上がっては文句ばかり言ってくる。困った爺さんだな……。

「やれやれ、どうすれば負けを認めるっていうんだ?」

 俺は首を横に振りつつ、呆れた声をかける。

「またしてもワシをコケにしおって! 正々堂々と正面からぶつかってこんか! それにその刀! ずるいぞ! ワシの体を切るほどの刀なんて聞いたことがないわ!」

 さっきは何でもありって言ってたくせに、自分に都合が悪くなると俺のせいにして逃げるのか。

「わかったよ。じゃ、これからはこの刀は使わない。これで俺が勝ったら、負けを認めるんだな?」

「グワァハッハッハッハ! その刀がなければこっちのものよ! 今すぐ貴様をまた地に這わせてくれるわ!」

 大王は上機嫌で高笑いし、俺にかかってきた。

 だが、俺の手前で白い膜にぶつかり、動きを止めてしまう。

「ヘルファイアー!」

 大王の周りを黒い炎が包み込み、天高く炎の柱が立ち上がる。

 雲を突き抜けるほどの炎は、大王の体も焼き尽くし、闘技場には真っ黒になった元大王だったものが転がる。

 会場は先ほどからシーンと静まりかえったまま、俺と大王の闘いを唖然と見つめる者ばかりだ。

「リザレクション!」

 大王の体が元に戻っていくと、すぐに立ち上がり、

「こ、この卑怯者めが! ワシの自由を奪って魔法でやりたい放題しおって! 男なら拳で勝負せんか!」

「アンタ、さっき言ってたことと全く違うこと言ってるのわかってるのか?」

 さすがの俺もゲンナリだ。もうここまでくればただの老害じゃないか。しかし、頼みたいことがある以上、蘇らせてやらねばならんし、面倒なことこの上ない。

「さっきもクソもあるか! ワシがダメと言ったらダメなんじゃ! わかったか! このクソガキが!」

「はいはい、わかったよ。じゃ、バリヤーとヘルファイアーは使わなければいいんだろ?」

「あったりまえじゃ! 今度こそ貴様の首。討ち取ってくれるわ!!!」

 大王は腰に手を当てて高笑いをしている。

 全く、隙だらけじゃないか。

「ミニトルネード×5だ」

 大王の周りを取り囲む小さな竜巻。大王はこれを突き、蹴りして防ぎきる。

 だが、最後の竜巻を消したハイキックの終わり際に俺は踏み込んで奴の腹にパンチを打ち込んだ。

「喰らいやがれ!」

 もちろんただのパンチではない。大王が使っていたようにパンチにトルネードを纏わせ、威力を数倍に引き上げている。

 もろに大王の腹に直撃したパンチは大王の腹をへこませるだけでなく、大王の体はくの字に折れ曲がったまま、闘技場を真っ直ぐにすっ飛んでいき、結界に激突した。体が大の字になったまま結界に張り付けられた大王の目はすでに白くなっており、意識がないのは明かだ。

 大王が叩きつけられた結界はその地点からヒビが走り、ガラガラと崩れ去っていく。大王自身の結界とともに、倒れ込んだ。

「これで、懲りてくれればいいんだがな。リザレクション!」

 大王はまた立ち上がると、顔を真っ赤にしながら、

「貴様ぁ! なんじゃあ、その魔法は! そんなの禁止じゃ禁止! 正面から素手のみで勝負せいや!」

「全く、結局は全部禁止なのかよ。わかった。いいぜ。まだ付き合ってやろうじゃないか」

「ぶわははははは! 言ったな、小僧! 今度こそ、貴様を沈めてやるわ!」

 全く、出来もしないことをベラベラと。大王も魔法を使わないのであれば、奴の技はすでに見切っているのだ。

 大王は華麗に宙を舞い、連続蹴りを放ってくる。

 だが、俺にはすでに大王の動きの癖を見極めていた。立った位置から一歩も動くことなく大王の攻撃を全て躱していく。

「ぬぅぅぅ! なぜだ! なぜ当たらん?」

「あのな。貴様の攻撃など、もうとっくに見きってるわ。パンチもキックも癖があるんだよ。打ってくるのがわかれば、躱すのは造作もない」

 大王が着地する瞬間に顔面へ渾身のパンチを放った。

 大王の顔面がベコリとへこみ、数十メルも空高く舞い上がった。

 そして、地面に頭から落ちると、首の骨が折れ、ピクピクと体を揺らしていた。

「こんな奴でも役に立っているのかねぇ? もう蘇らせるのもバカバカしくなってきたな」

「ワンワン!」

 コンもその辺でやめておけって言ってるしな。

 流石に俺も精神的に疲れたこともあり、その場を振り返って帰ろうとしたその時。

「大魔神様!」

 俺を呼ぶ声が聞こえた。見ると、大王の側に控えていた益鬼が跪いていた。

「大魔神様のお強さ、しかとこの目に焼き付けました。私を臣下にして下さい! 大魔神様のご要望、この益鬼が解明してみせます! なにとぞ!」

 額を地面にぶつける勢いで土下座をしてきたのだった。

 すると、その益鬼の後ろにはズラリと観客だった鬼達が整列し、皆が一斉に頭を下げてきた。

「「「大魔神様!」」」

 異様な雰囲気に思わず一歩引いてしまう。

 そういえば、大王が言ってたな。鬼達は強い者に従うと。なるほど、こういうことか。

「わかった。皆の気持ち、ありがたく思う。俺は日本に手をだそうとしている輩を探している。皆の者、探してくれるか?」

「「「かしこまりました!!!」」」

 鬼達は、偵察に走り出す者、チームを組んで調査を始める者、過去の文献を漁りだす者などに分かれ、すぐに動き始めてくれた。

 そして、その間。俺は大王の椅子に座って旨い食事にありつけるのであった。


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