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第6章 アナザージャパン編
第81話 帰還
しおりを挟む「よし、コン。台本は理解できたか?」
「ワンッ!」
「いい返事だ!」
大牙も水竜さんも手加減と言うものを知らない。まして今回の尋問相手は老人なのだ。彼らでは最悪、触れただけであの世へ行ってしまいそうだ。
そこで今回はコンに手伝ってもらうことにしたのだ。もちろん、コンはしゃべることが出来ない。だが、基本的に俺が尋問して、コンが軽く痛めつける。これくらいならいくら老人が相手でも大丈夫なはずだ。
「よし、ではバケツの水をかけるぞ!」
「ワンッ!」
バッシャーン!
「うぅ……、ッ! こ、ここは?」
どうやら目覚めたようだな。老人は辺りを見回し、俺とコンを見た。
「おいっ! 誰か! いないのか?! むっ? 手足が動かん」
老人の額には大粒の汗が玉を作る。
「助けを呼んでも無駄だ。ここには俺達しかいないからな」
「小僧、ワシを誰だと思っておる? 悪いことは言わん。ワシを解放し、自首するんだ」
「アンタが誰だろうが俺には関係ないね。ただ、あんた等のせいで死んだ者も多い。そのことをわかってるのか?」
「ふんっ、知った口を叩きおって。政治を動かすには金がかかる。皆の幸せのためには多少の犠牲は必要なのだ。
それに技術や妖術の目覚ましい進歩があれば、それだけ豊かな国になるのだよ!」
老人はやたらに怒鳴りつけてくる。まったく、それしか交渉の仕方を知らないのか?
「ふぅ、やれやれ。お前らのやってることはこの黄泉の国にも散々迷惑をかけたんだ。謝る気もないってわけか」
「当然だ! 人外なんぞ滅びてしまえばいい! ワシが政権を握った暁には攻め込んでやるわい!」
あ、ダメだこりゃ。まずは反省してもらうとするか。
「コン、少し痛めつけてやってくれ。このままじゃ話し合いにもならん」
「ワンッ!」
コンはいつも俺にじゃれつくように老人にタックルした。
ズドオォォォォ!!!
凄まじい爆音と共に、老人は壁に叩きつけられ、その周りにはクレーター状のヒビが入り、辺りは白い粉塵が巻き起こった。
「いぃ?! う、うそ……でしょ?」
粉塵が落ち着いてくると、元気だったはずの老人はすでに息をしておらず、ピクリとも動かない。
「あー……、コン? いつもあんな勢いで俺に突っ込んでたのか?」
「ワン!」
「そ、そうか。俺は丈夫だから構わないが、他の人にはやっちゃだめだぞ? 思いっきり力を抜いてゆっくり飛び込むんだ。賢いコンなら出来るよね?」
コンは褒めてとばかりに尻尾をフリフリして俺の脚に絡みついてくる。
「……、そ、そうか。よーし、よくやったぞ! コンが悪党を懲らしめたんだ」
「ワンワンッ!」
コンはいつになく嬉しそうである。
この黄泉の国には尋問なんてできる奴はいないんだな……。俺が間違ってたのか。トホホ……。
結局、この老人には反省をしてもらう必要があるので水竜さんに預けることにした。
目一杯コキ使ってやる!、と水竜さんも気合が入ってたし、きっと反省してくれることだろう。
他の人たちも記憶操作でなんとか誤魔化し、日本には以前のような平穏が戻っていく。
こうして俺は日本で起きた妖術事件を解決させることができたのであった。
*
今日は水竜さんに呼ばれ、黄泉を訪れた。
「や、どうも! お元気そうですね!」
「これは、ソウ様。わざわざお越しいただいてありがとうございます」
水竜さんは以前とはまるで別人のように顔が明るくなった。日本と次元が離れ、異常気象は完全に治まったそうだ。
あの老人はというと、水竜さんのイスとして四つん這いになって支えている。
うん、大分従順になってきたようで安心だ。
「本当にソウ様にはこの世界を救ってもらって感謝している。お礼はなにがいいのかと思ってね」
「お礼? よしてよ。そんなつもりでやったんじゃないんだ」
水竜は一人目を閉じた。
「そうか。もし、ソウ様に困ったことがあったら何時でも何でも言ってくれ。必ずや力になろう。我が忠誠をソウ様に!」
俺の体にまた力が溢れた。
「おぉ?! これは?」
さっそくステータスを確認すると、称号が、
大閻竜魔神
となっている。
スキルにも
竜化 LV1
が追加された。
「はは、また目標が増えちまった。サンキュー! 水竜さん!」
「お礼を言うのはこちらの方だ」
俺はこの竜化を早く試したくなり、水竜さんの社殿を後にした。
「ふぅ、鬼達の城は大牙に任せることが出来たし、そろそろ帰る準備しなきゃな。お前は俺と一緒でいいのか?」
「ワンッ!」
コンならついてくるって言うと思ってたよ。それじゃあ、帰るための黒い霧でも創りますか!
以前造り出した勾玉だが、これには次元を調整する機構が組み込まれていた。それを参考に俺のイメージする次元に置き換え、新たに黒い霧を造りだす。
「よし、これでどうだろう? 行ってみよう! コン! まずは巨獣人の里でリーダーに会いたいんだ!」
コンは勢いよく霧に飛び込んだ。俺もすぐに後を追う。
そして、着いた先は……、
軽やかな鼻歌が聞こえてくる。間違いない、リーダーの声だ! やった! 成功したんだ!
黒い霧が晴れ、俺とコンが着地する。
顔を上げると、そこにはリーダーが、シャワーを浴びている所であった。
目と目が合う。リーダーは一糸纏わぬ姿。
「あ、こ、これは違うんです! こんなつもりじゃ……」
「キャアアアアアッッッ!!!」
リーダーの平手はどんな敵の攻撃よりも速く正確に俺の頬を捉えるのであった。
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