レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第7章 聖魔大戦編

第96話 チコ

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 チコの魔法が放たれた。

 アースジャベリンは次々と爆発し、石が爆発し四方に飛び散る。その上、ファイヤーボールの爆発が加わり、その上から氷の槍が降り落ちていく。

 轟音と爆風をまき散らし、視界は土煙に覆われる。

 だが、チコは胸騒ぎがしていた。

「これだけの攻撃……、すでに相手は死んでいるのは確実。でも……この気持ちは……なんだというの? 嫌な予感がどんどん膨らんでくる……」

 やがて土煙が晴れていく。敵の姿を探すまでもなく、その女は立っていた。

 憎らしいほどに涼しい顔をして。

 その女の周りには球状に覆う風の膜が出来ていた。先ほども見せた風魔法を今度はバリヤーとして使っていたのだ。

「あら? もう終わりなの? アナタの攻撃って……、つまらないのね」

 その女の周りだけは地面も抉れ、草は真っ黒になり、荒れ果てた姿となっていたのに、肝心のその女には全く届いていなかったのだ。

「ま、まだまだやわ! これでっ!」

 今度は右手に炎、左手に氷を出す。

 二つの相反する属性を同時に操れたのは人類では私だけだという。

 天才。私はそう言われ続けてきた。昔から勉強が出来すぎて、学校から学ぶモノなどなにもなく、無味乾燥な人生を持て余していた。

 そう、ミウに出会うまでは。

 ミウは輝いていた。どんな相手にも怯まず、諦めず、勇敢に立ち向かっていた。

 私は憧れた。こんな風になりたい。私の実力をもっと多くの人にみてもらいたい。そんな欲求が込み上げる。

 ゲームのデータを覚えるのは得意だ。一度読めばほとんど頭に残っている。そのデータからはじき出される最適解。それを選択していくだけで面白いように勝てた。最初だけは。

 待ちに待った、ミウとの対戦は燃えた。このレベルになると、知識は完璧で当たり前。その後が問題になってくる。相手の心理を読み解き、出してくる手を読む。

 だが、経験の浅い私はミウに圧倒的大差で負けたのだ。悔しい。その思いがさらに私を突き動かす。

 のめり込むようにゲームをプレイしていく。そして、憧れだったミウから2on2のトーナメントの誘い。私はすぐに返事した。ミウと一緒にプレイできるなんて!

 幸い、彼女とはプレイスタイルが全く違っていたこともあり、お互いにキャラ対策を煮詰めることによって、苦手キャラをカバーしあえたのだ。

 初めての優勝はタッグでのものだった。しかも憧れのミウと。

 その後のタッグトーナメントは総ナメだった。

 私の人生の絶頂ともいえるほど充実した日だった。

 だけど、周りの人たちの反応は思わしくなかった。女が優勝したということの嫉妬は凄まじいものがあったのだ。

 匿名掲示板には毎日のように悪口を書かれる。ウソばかり。しかもビッチだなんだとあることないこと散々に。私は処女なんだからビッチなワケがない。いったい何を言っているの?

 ゲームに打ち込んでいるのに、男に構ってる暇なんてないのに。

 私はミウさえいればよかった。ミウと共にいれれば、それで……、

 そして、その日は訪れた。私とミウは気がつけば聖教国という国に召喚されてしまい、なんだかんだと説明を受けているうちに、戦争へ参加させられそうになる。

 私は断固反対した。早く、元の世界へ戻して欲しいと願い出たが聞き入れられなかった。

 そして、彼らから渡された服を着ているとなぜだか、頭がボーッとしてきて……、気がつけばレベル上げなんてやらされて……。

 私はミウと一緒に帰りたかった……。だけどミウは驚いたことにこの世界に留まりたいと言い出した。

 仕方なく私は従うことにした……。だってミウのいない生活なんて考えられないもの。

 この国が容易した装備を着ていると、何も考えられなくなってくる。一日が終わっても、その日に何をしたのか覚えていないのだ。だけどレベルはどんどん上がってる。

 充実感が妙にあるし、イケメン達による接待やおいしい食事も相まって、私はいつしか、考えるのを辞めてしまった。

 魔王国から来たというスパイもちょっと本気を出しただけで、すぐに気を失ってしまったし、魔王国にはろくな人材がいないんじゃないかと、完全に油断していたのだ。

 そのツケが今、私に回ってきてしまった。

 渾身のツイン魔法は私の持つ魔法の中でも一点突破の威力は一番なのだ。

 放たれた魔法は赤い龍と青い龍となり、絡み合い、やはて一つとなってその女に襲いかかる。

「やった!?」

 しかし、二匹の龍は無残にも分厚い風の魔法に弾かれいずこへと飛んで行ってしまった。

 どんな魔法も通じない。どんなコンビネーションを仕掛けてもその女は涼しい顔を崩さない。

 そして、頼みの綱であるミウも頭に血が上ってしまっているのか、二人で闘うということを忘れており、戦いながらどこかへ行ってしまった。

「ウ、ウチはミウと一緒にいられればそれでええのに! どうして! どうして私の邪魔をするの!」

 思わず本音が出てしまう。だが、その女は深くため息をついた。

「アナタがどう思っているかはわかったわ。だけどね、人としてやってはいけないことがあるのよ。ま、その服に色々と仕掛けがあるようだから、今回は多めに見てあげようと思っているのだけど……。これ以上は無駄な抵抗はやめて頂けるかしら?」

 降伏の勧告だろう。だが、離れた所ではまだミウが闘っているのだ。私だけ裏切るわけにはいかない。

「ウチはミウについていく。それだけ」

 その女をにらみ返してやった。ただの強がりだけど。

「そう……、じゃ、私から攻撃しちゃおうかしら?」

 その女が初めて杖を構えた。

 大丈夫。まだこちらには切り札がある。

「これでっ!!! しまいや!!!」

 私はありったけの魔力を全てこのフレアーに注ぎ込んでいく。

 上空に浮かぶ多数の巨大な火の玉。その数、30発。

 MP切れを起こして動けなくなることも覚悟した。

 だけど、私の居場所は奪わせない。決して。

 その女にフレアーの火の玉が次々と襲いかかっていく。

 だが、火の玉は一つとしてその女には届かなかった。

 風のバリヤーに火の玉が当たったとたん、遙か上空へ吹き飛ばされてしまうのだった。

 そして、私の体を風の刃が襲ってくる。身につけていた装備があっという間に切り刻まれ、体のあちこちから血が流れた。

 私は両膝を地についた。もうMPは空。意識もボヤーッとしてきている。

「もう、なんなん……。こんなん無理ゲーや」

 その時、凄まじい地響きとともに地面が揺れ、勇者と魔王の間で何かあったようだ。

 そして、耳をつんざく衝撃。

 この一撃に巻き込まれて私も死んじゃうのかしら? そんなことを思っていたら、急に視界が真っ暗になってしまった。

 いったい、これは?

「ふぅ、やっと来たのね? 遅いわよ!」

 その女が文句を言い出した。全くワケがわからないまま、私の体はその暗闇に包まれていくのであった。

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