レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
114 / 219
第8章 聖教国にて

第113話 手引き

しおりを挟む


 王族を捕らえ、宰相も捕らえ、そろそろ大丈夫だろう、なんて考えていたのが間違っていた。

「よいかっ! 今こそ魔界へ攻め込み、我が聖教国の強さを思い知らせてやる時が来たのだ!」

 この演説を行っているのは軍務大臣、ヴェーグナーである。彼は俺の知らぬ間に政権を握ってしまったようで、今や玉座に座っているそうだ。

 俺は自分の失敗を悔やんでしまう。公爵が戻ってくれば、政権をヴェーグナーに渡す前にこの国ごと制圧出来たかも知れないのだ。だが、公爵が兵を引き連れてくる前に、この軍務大臣はすぐに動き始め、公爵が王都を去ってからわずか2日で王都の政権を握ってしまったのだ。

 当然、公爵は王都に入ることが出来ず、王都の外に陣を張り、交渉を持ちかけている。だが、ヴェーグナーが応じる可能性は低いだろう。

 俺は王都を囲む山に陣を張った公爵の元を訪れていた。



「これはソウ殿! よくいらっしゃった、と言いたい所なのだが……」

 俺のことが兵士達にまで伝わっていたようであっさりと通してもらえたうえに、公爵自らお出迎えであった。

「すみません、このような時に……」

 公爵はとてつもなく忙しいだろうに嫌な顔もせず対応してくれた。こちらが恐縮してしまいそうだ。

 陣幕の中へ案内されると、簡易なテーブルとイスが用意してあり、そこへ案内された。しかも温かいお茶まで出てくる。

「いや、よくいらっしゃってくれた。して、どういったご用件ですかな?」

「公爵。軍務大臣であるヴェーグナー卿は王宮に兵を固めています。普通に攻めていては兵を多く失う可能性が高いかと思いましてね」

「うむ、じゃがワシは既に覚悟を決めておる。たとえ、謀反と言われようと魔界へ攻めるなぞ愚策の極み。そんなことをせんでも聖教国には豊富なダンジョン資源があるのじゃ。当分困ることなどなにもない。じゃがのぅ……」

「王族に続き、宰相まで行方不明となっているのに、何故、魔界を攻めるのでしょう? そこがずっと気になっているのですが……」

「あぁ、あ奴らにとって人間以外は家畜としか見ておらん。その差別主義こそが元凶となっておる」

「差別主義……」

「そうじゃ、この聖教国を建国した初代聖王は異界より訪れた者じゃったそうじゃ。並外れた魔法を駆使し、聖剣を使いこなし、亜人種を追い払ったという伝説が今も伝わっておる」

「なるほど、初代から人間以外は皆敵だと。そういう考え方なわけか」

「あぁ、じゃが、ワシはその考え方を改めるべきじゃと思っておってな。まぁそのおかげで先日は捕らえられてエラい目に会ったわけじゃがの」

 皆が亜人を排斥している中、一人だけ反対を唱えるのは大変だっただろう。やはり、この国を託せるのは、公爵をおいて他にいない。

「公爵。お頼みしたことがあります。人払いをお願いできないでしょうか?」

「ほぅ、このタイミングでワシに頼みとな?」

 公爵は渋い顔をしたが、俺の提案を聞き入れてくれるのだった。



   ***



(公爵視点)

 ソウ君からの話は信じられないことばかりだった。だが、彼が手引きして城に入れると言う。無論、争わずに城に入る事が出来るにこしたことはないのだが、果たしてそんなことが可能なのだろうか?

「お父様、ソウ様のおっしゃっていたことは真実なのでしょうか? 私は間近にソウ様の魔法を見てきましたが……」

 娘であるメティにはおおよそのことは伝えた。しかし、ソウ殿の話はあまりにも荒唐無稽すぎて、いきなり全てを信用するのは難しいだろう。現に、ソウ殿の圧倒的な魔法を間近に見たワシですら、半信半疑なのだ。

「にわかには信じがたいが、あの信じられないほどの魔法を使いこなすソウ殿のことだ。ここは信じていくしかあるまい。なぁに、ソウ殿に拾ってもらった命だ。彼を信用して話に乗ってみるのも悪くあるまい」

「それは、そうなのですが……」

「よし、では手筈通りに突撃していくぞ!」

 約束の時間になった。城の門からは合図である煙が昇り、門の前で跳ね上がっていた吊り橋がゆっくりと降りてくるのが見えた。

 ギ、ギ、ギと大きな音を立てて降りてくる橋の先に待ち構えるのは果たして地獄か天国か。

「全軍、城を目指し突撃!!!」

 兵たちに一斉に指令をだした。とはいっても、争いは殆どないと説明を受けているため、突入するのは、わずかに300人程度でしかない。城を取り押さえるだけの最低限の人数だ。

 ワシを先頭に、娘も馬に跨がり門へ向かって走って行く。

 降りた吊り橋にはソウ殿の話通り、出迎えの者がいた。なんでも、異界から召喚された勇者だという。

 その勇者は黄金の鎧を身に纏い、背丈ほどもある巨大な剣を背中に背負っていた。

「勇者REN殿とお見受けいたす。跳ね橋を降ろしていただき、感謝いたす!」

 馬に跨がったまま、大声で話すと彼はニッコリと笑みを浮かべた。

「なぁに、ソウには世話になったからな。この国の立て直しくらい協力させてくれ!」

 黄金の勇者は驚くことに我々の馬と併走できるほど早く走り、一緒についてきてくれた。

 やがて、城の門が見えてくる。そこではまだ戦いが繰り広げられていた。だが、圧倒的な魔法と、打撃を放つ、二人の女性が敵の数をどんどん減らしていく。

「遅いぞ。予定に遅れが出ている。早く片づけろ!」

 檄を飛ばす黄金の勇者に二人は不満そうな顔色を浮かべる。

「こっちは敵が多かったのよ! もぅ、人の気も知らないで!」

「そや! 城門押さえろって命令、あまりにもアバウトすぎん? こないに敵がぎょーさんおるなんて聞いてへんわ!」

 二人は文句を言いながらも凄まじい勢いでヴェーグナーの兵を葬っていく。だが、まだ城門の前には数百騎の敵兵が待ち構えていた。

「どけどけ~! この聖剣の餌食になりたくないやつはとっととここから立ち去るがいい!」

 黄金の勇者が聖剣に魔力を込め、天に向かって剣を振りかざす。すると、聖剣に稲妻が落ち、その稲妻を纏うように天高くその刃が伸びていく。

「こ、これほどの魔力! 城門の兵を一気に倒す気なのか?」

 ワシが考えている以上にこの勇者の力というのは、凄まじかった。この聖剣とやらは1対1の剣ではなく、最早、攻城兵器といって差し支えないだろう。

 その剣が振り下ろされた。

 襲いかかってきていた敵兵達は、みるみるうちに黄色い稲妻に飲み込まれ、蒸発するように消え去っていったのだった。

「公爵! 先へ!」

 ハッと気付くと、城門の前には敵はいなかった。勇者が立ち止まっていたワシに声をかけつつ、その剣でさらに城門そのものを切り裂いた。

 ゴゴゴゴゴォォォォォ。と轟音を響かせながら城門は倒れるように開いた。

「あぁ、恩に着る! 勇者よ!」

 ワシは城門で馬を降り、城の中へ駆けていくのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...