レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第117話 道中

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 勇者RENが聖教国を出てから早3週間が過ぎていた。

 俺は山脈を越え、小高い丘の上に立っていた。ついに目的地である街が見えてきたのだ。

「あれが、アレクサンドロスか」

 三方を山に囲まれ、西側は海に面したその街はわずかな平野部にみっちりと街が押し込まれているようだった。その街からはわずかに数本ばかり街道が走っているが、この街は陸路で移動するにはあまりにも不便すぎた。海に何艘も浮かんでいる大きな船がこの街の交易の殆どを担っているのが、一目見てわかるほどに街道には人が少ない。

「今日は久しぶりにベッドで寝れそうだな」

 はやくあの街を見て回りたい、そう思いながらも、今日は天気が非常によく晴れ渡っており、青空が広がっていたのだ。山脈の気候は移り変わりが激しかったため、もう少しだけでもこの穏やかさというものを味わいながらゆっくりと歩を進めていく。

 すると、山の中から人らしき者の叫び声と地響きのような音が耳に入った。

「ん? なんだ? こんな山奥で人の叫び声なんて……」

 取りあえず、急いでみるか……。

 俺は木々の天辺を一気にジャンプで超えながら、現場へと急ぐのだった。



「くっ! 決して馬車から出てはなりませぬぞ!」

 声を上げたのは初老の男だった。剣を構え、敵が近寄れぬよううなり声のようなものを出し、威嚇する。白髪で体も細く、どう見ても闘えるような男ではない。

 その男を取り囲むように襲っていたのは巨大な狼だった。しかも数頭がグルルル、と喉を鳴らし、初老の男を取り囲んでいた。

 狼は人間よりも大きく、体長は3メルを超えていた。青黒い体毛に覆われ、野生の目つきは鋭く人間を捕らえ、今にも襲いかかろうとしている。

 倒れた馬車の周りにはすでに殺されてしまった人間たちが、横になっており動かない。

「まだ生きてる人がいる。よし!」

 今まさに初老の男に向かって一匹の狼が襲いかかろうとしていた。俺はとっさに腰の剣を抜き、投げ放つ。剣は飛びかかった狼の頭部を貫通し、地面に突き刺さった。

「むぅっ? こ、これは?」

 初老の男が俺の方を振り向く。

 だが、その瞬間に狼たちが一斉に男に向かって飛び込んだ。

「喰らえっ! サンダーボルト!」

 手から発せられた雷の矢は数十本。それは狼たちの体を尽く貫通し、一瞬で焦がし尽くした。

「大丈夫か?」

 俺が声をかけると、初老の男は目を丸くして驚いていた。

 だが、戦闘はまだ終わってはいない。森の奥から一際大きな狼が出現したのだ。恐らくはコイツがボス狼という所だろう。

「た、旅のお方。すまん。巻き込んでしまった。ここはせめて私が盾になる。馬車の中にいる方を連れて逃げてくれ!」

 初老の男が俺に向かって叫ぶ。だが、そんな必要はもちろんない。

 俺はアイテム袋から聖剣を取り出し、正眼に構えた。

 そして、殺気を巨大狼に向かって放つ。巨大狼は獲物を狩る目をしていたが、狩られるのが自分だと気付いたのか、震えだし、その場から動けなくなった。

「実力差がわかるのか。賢いんだな。だが、人間を襲った奴は放ってはおけない。せめて……すぐに楽にしてやろう。」

 俺はその場から剣を横薙ぎに振り抜いた。剣から真空の刃が飛び、巨大な狼の首を突き抜けていった。

 やがて、ドウッっと首が落ち、胴体も横に倒れ込むのであった。

 さて、周りにはもう殺気を放つ魔物もいなそうだ。片づいたかな。

 俺はまだ震えながら目を丸くして口をパクパクさせている初老の男に近づくのだった。




「助けて頂いて本当にありがとうございました!」

 馬車から出てきた人はフードを深く被っており、顔は見えないが背は低く、声もまだ幼さの残る感じだった。恐らくだが、十代前半といった所だろう。

 女性はフードを外すと、金色の長い髪の毛が腰まで伸ばした小柄な女性だった。スッと通った鼻筋、大きく金色の目、可愛らしい小さな口、整った顔立ちはあと数年もすれば相当な美女になることは間違いなさそうだ。

 だが、最も特徴的だったのは頭の上に飛び出た大きな獣の様な耳だった。

「獣人の方でしたか。俺はRENといいます。ま、旅をしていたのですが、ちょうどよく通りかかってよかったです」

「まぁ! 旅のお方だったのですね? 私はリンと申します。この近くにある街、アレクサンドロスは獣人が多く集まる街でして、そこに住んでいるのです。このたびは助けて頂き本当にありがとうございました」

 リンと名乗った少女はぺこりと頭を下げた。

「あぁ、いえ。これはご丁寧に」

 耳がピョコピョコと動き、見ていると触りたくなる衝動に駆られてしまう。だが我慢だ。初対面の女の子を触りたいなんて犯罪臭がする。仮にも俺は勇者なのだ。人々に希望を与えるべき勇者がこんなこおとでは獣人の街からすぐに追い出されてしまうだろう。

「それにしても、お若いのに凄まじい強さですな。どこかで修行をされたので?」

 初老の男が尋ねてくる。

「えぇ、まぁワケあって修行中の身です。旅をしながら腕を磨いているところでして」

「ほぅ、その強さでまだ修行中とは……。このザッツ、感服しましたぞ」

「それよりも、亡くなった方たちの体を街へ運びましょう。このままではさらに魔獣を引き寄せてしまいますから」

 二人はすぐに協力してくれた。3人で亡くなられた方達を並べ、大きな布に包み、アイテム袋の中へ入れていく。この亡くなった方達の家族が待っているだろうから。

 そして、改めて3人で街へ向かって歩いて行くのであった。


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