レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第180話 ズールの攻勢

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 ズールの剣が突然、目の前に迫った。

 咄嗟に剣で受けるも次の攻撃がすぐに迫ってくる。俺はズールの左側に廻りこんだ。

 先程の攻撃で傷ついた左側のほうが少し攻撃が緩いはず。

 だが、俺の期待も虚しく、奴のスピードは速く迫る。

「クッ!」

 俺は雷魔法を左手で放ちつつ、ズールから距離を取り離れた。

 傷ついているはずの左の腕を見る。

 するとズールの傷が少しずつ塞がっていくのが見えた。このまま手をこまねいていては敵の回復を待つだけ。なんとしてもここで踏み込む必要がありそうだ。

 俺は瞬時に移動し、ズールの側面から攻撃を仕掛けていく。もちろん、今怪我を負っている左側だ。

 側面に回り込んで攻撃したとしても、ズールは腕の数が多いため、流れるように連続で攻撃をしてくる。

 先程のように魔法を絡めれば……、くっ……、ズールも魔法を剣に纏わせてきやがった。

 俺の剣から放たれる雷撃とズールの剣から放たれる炎撃がぶつかり合い、相殺されてしまった。

 すぐに真似してくるだけでなく、いきなり使いこなしただと?

 距離を取るべく、遠くへジャンプし後退する。

 ズールは今の攻防で俺の技を完全に見きったようだな。ニタリと口元を歪ませ、剣を一舐めしている。俺が負わせた傷もすっかり塞がってしまっていた。

 振り出しに戻ってしまったか……。さすがはズールといっておこう。凄まじい戦闘のセンスだ。

 下手に戦闘が長引けば、それだけ奴は経験からパワーアップしていくだろう。ならば……早めに勝負を決める必要があるな。

 俺は静かに、正眼に剣を構えた。そして、剣に雷魔法をしっかりと纏わせる。

 ズールも俺に合わせて剣に魔法を纏わせた。それも六本の剣全てに。

「あーっと、RENが剣に雷を纏わせましたッ! 剣を正面に構えました! これはいつ仕掛けてもおかしくない! 目が離せませんッ! 対してズールも剣に炎を纏わせた! こ、こちらは六本の剣の全てが魔法剣となっております! 凄まじい迫力ッ!」

「さすがズールですね。剣に纏わせる炎の量も質も相当なものがありますよ! ここまでの攻防は五分と五分! ここから試合が動くかもしれませんよ!」

 解説者が言い終わるや否や、ズールが動き始めた。

 スッと消えるように移動し、俺の正面から斬り込んでくる。先程とは違い、正面の上段からの振り下ろし。

放ってきている剣を受けると、さらに上段から別の剣が振り下ろされてくる。

 サイドステップで躱しても、奴はすぐに追ってきた。続けざまに剣を振り下ろしてくるのだ。

 何度も受け、躱し、移動し、また受け、止まることなく続く攻防。

 俺が防戦一方に追い込まれるほどにズールは戦闘巧者であった。

 剣だけでは凌ぎきれず、魔法を時折、織り交ぜて攻撃していく。だが、それも読まれたかのようにズールは炎の魔法で迎撃する。

「激しい打ち合いからの、魔法戦に突入しておりますッ! 両者一歩も引きませんッ!」

「RENもズールも魔法が上手いですよ! 剣による攻撃の合間にうまく魔法を挟み込んで隙を無くしているんですね! 魔法ばかりになっても単調になってしまいがちですからすぐに、剣の攻撃に切り替わっていきます。この当たりもスムーズで両者に差はほとんどありませんね!」

 俺は常に雷の魔法を放ちつつズールを牽制していく。

 今のズールは血の気が多いようですぐに俺との間合いを詰め、剣の連撃を放ってくる。

 チィッ! さすがに休ませてはくれないか……。

 三発目の剣を受けたときだった。ズールの二本の腕が同時に伸びてきた。

 こ、これは?

 二本の腕から放たれた炎の魔法は一体となり、俺の雷魔法を貫いた。

 ぬうッ!

「あああーーーーーッ! ついにRENが被弾したかーーー! ズールの魔法、それも二本の腕から放った炎の魔法が重なり合い、RENの魔法を貫きましたーーーッ!」

「むッ? いや、リサさんッ! まだ決まってないですよ! 見てください、煙が晴れていきます。RENは無事に立っています!」

「あああッ!!! 確かに! RENにズールの魔法が直撃したはずですが、RENは無事のようですね! それどころか、無傷でしょうか?」

「恐らくですが、魔法に対するバリヤーのようなものを張って耐えたんだと思います。なんせ、あれだけの魔法がヒットしたにもかかわらず無傷ですからね。まさかRENがこれほど高度な魔法を見せるとは思いませんでしたよ」

 隠していたバリヤーの存在が知られてしまったが、まぁいい。俺の計画に狂いはない。

 ズールは怒り狂ったように魔法を連発して発射してきた。それも魔法を重ね合わせての強烈なものを連発して放ってきた。そのすべてが極大魔法といって差し支えないものだ。1メルほどもある大きさの炎の巨弾が数発、俺の視界を埋め尽くした。

「さすがにそれを喰らうわけにはいかないな」

 これでどうだッ!

 魔力を大きめに練った特大の雷を手から放つ。

 俺の前に数百本もの雷が現れては地に吸い込まれるように落ちていく。

 絶え間なく放電される雷がズールの強大な炎にいくつもぶつかっていく。一つ一つの雷ではズールの炎に勝てない。だが、炎魔法の行く手を遮る数百本もの雷が次々にぶつかっていくと、炎の塊が少しずつ小さく、弱くなっていく。やがて、俺の前に来る頃にはすっかり消え去ってしまうのだった。

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