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第9章 勇者RENの冒険
第195話 三回戦第四試合 決着
しおりを挟む会場は静まり返っていた。ギガースはただただグレンに切り刻まれるのみであった。舞台からはグレンの剣を捌く音だけが鳴っている。
そうした時間が 何分経っただろうか。気がつけばその会場で動くものはグレンただ一人のみであった 。
そして 決着の時はついに訪れた 。グレンは切り刻んだ体からついに巨人の心臓を取り出したのだ。巨人の体だけが舞台に横たわり、今はピクリとも動かなくなっていた。魔力の源泉たる心臓が無くなったため、あの驚異的な回復力も失われてしまったのだ。
ドクドクと鼓動する赤いそれは血を吹き出しながらもまだ動いていた。
その心臓を一飲みに大きく開いた口に咥え、丸飲みしていく。
ドクンッ!
心臓が高鳴る。バハルに続き、今、ギガースの肉と共にその力が、俺に宿るのだ。
ドクンドクンッ!
胃の中で心臓が溶かされて幾度に強靭な力が湧いてくるのがわかる。
膨大な魔力が俺の中に宿ってくる。
「クックック……クワーハッハッハ!!!」
俺は笑うのを抑えきれない。亜神二人のパワーを全て吸収し、今や俺は神を超えるほどのパワーを手に入れたのだ。恐れる物など何もない。
後は、このトーナメントを蹂躙し、俺がこの世界の新たなる神として支配するのだ!
相棒であるグレンも巨人の血をたっぷりと吸い込み、さらなる力を得ていた。
『ニュートよ、もはや我らを阻む者などはいない。存分に暴れようぞ!』
『全く、頼もしい相棒だぜ。次のいけすかねえ天使も切り刻んでくれや! 期待してるぜ?』
『任せておくがいい。純粋な剣術で遅れを取ることなどありはしない。それにしてもこのトーナメントはいいッ! これ程に強者が集まる事などないからな! 血に飢えていた我が刀身もすっかり満足しておるわ! グワーハッハッハッハ!!!』
俺はこの試合でさらに手応えを感じながら花道を帰って行くのだった。
***
「くっ! 何てことだ……、」
俺は怒りに腕を震わせ、拳を握りしめた。
「とうした? REN殿? 何かあったのか?」
隣にいたズールが心配して声をかけてくる。それほどに今の俺は冷静さを失っているように見えたのだろう。
「あぁ、大丈夫だ……。だが今の試合でニュートはさらに力を吸収したに違いない。なんてことだ……」
俺は思わず壁に腕を振った。
ドンッ! という音とともに大きな穴があく。
「力を吸収? そんな能力を……、あの蛇人族が持っているとでもいうの?」
イヴリスも不思議そうな顔をしてこちらを見つめてきた。
「あぁ、そうだ。奴は俺にとって最大の宿敵。俺は奴を追ってここまてきたんだ」
「しかし、あの蛇人族はトーナメントの反対側ですよ? 現状はまずジークを倒すのが先決でしょう? 奴は手強いわよ?」
いつの間にかミリィが話に加わるように話しかけてきた。
「確かに……、ヤツのブラックホールは一筋縄ではいかないわ。ご主人さまには何か策はあるのかしら?」
イヴリスは心配そうな声色で眉を寄せた。
この二人はあのジークによって殺されかけている。俺がジークに勝つことが出来るのか不安なのだろう。確かに奴は強敵だ。俺も無傷ではいられないはず。だが、その為に俺は……。
「安心して欲しい。俺には秘策がある。ジークと戦うためのとっておきがな」
そう言っても二人の顔は晴れなかった。ジークの強さを身を持って知っただけに心配が絶えないのだろう。
「そうだ、ズール。良かったら俺と組手をしてくれないか? 次の戦いは明後日だからな。腕が鈍らないか心配なんだ」
「そういう事なら任せておけ。きっちり相手になるぜ? いくらでもな!」
ズールは上機嫌で返事をしてくれるのだった。
***
「さぁ、いよいよ始まります! 今日から三回戦の第一試合ッッッ!!! 残る試合数も少なくなって参りましたッ! 勝ち残るのは一体誰なのか? 目が離せない試合が続きますッ! 実況は私リサと、解説はローファンさんに起こしいただいております!」
「どうも、ローファンです。本日もどうぞよろしくお願いします」
「さぁ、本日は三回戦と言うこともあり、第一試合のみ予定されています。REN VS ジークの対戦となっておりますッ! ローファンさんはどうみられますか?」
「そうですね。ジークに魔法を吸収するブラックホールがある以上、剣を使った勝負になると思います。そこで問題になってくるのはジークの召喚獣の存在です。強力な召喚獣を何体も従えているジークですので、これを退ける何かがなければ、RENはあっという間にやられてしまうかも知れません。剣術は私が見るにそこまで差があるとは思えませんからね」
「なるほど、はたしてRENに対抗策はあるのでしょうか? 期待が高まる本日の一番、まもなく両選手の入場です!」
「東の方角ッ! 獣人族代表ッ! REN!」
割れんばかりの歓声が花道を覆っていた。俺はその中にゆっくりと歩み出た。
少しは知名度も上がったのだろう、俺の名を呼んでくれる者も多くなってきたのだ。
ここからは気を引き締めねばならんな。
俺は舞台に上がると、自分の頬を両手のひらでパチンと叩き、気合いを入れ直す。
今日の相手は楽に勝てる相手ではないのだ。
俺は西の花道をじっくりと見ながら相手の入場を待つのだった。
「西の方角ッ! 死の国代表ッ! ジークッ!」
反対側から宙に浮いたジークが、ゆっくりと進んできた。
相変わらずの圧倒的なオーラに背中がヒンヤリと感じてくる。恐らく自分の額にも汗が浮かんでいることだろう。
事実、観客席も静まり返り、皆が固唾を飲んで通り過ぎるのを待っているのだった。
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