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色は匂へど
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熱に浮かされたみたいにぼーっとしてしまう。思考が鈍い。殻の中に籠っているのに、どこか落ち着かない。翠に満足してもらうには、もっといい配置があるかもしれない。でも、今更一から作り直すなんて、無理だ。外は暗くなり始めているし、途中で翠が帰ってきて中途半端なものを見せるなんて以ての外。
僕に残された時間は、あとどれぐらいだろうか。一秒でも長く、翠と一緒にいたい。幸せな思い出で埋め尽くしたい。だから、何よりも翠に喜んでほしい。
早く帰ってこないかな。むずむずと疼くのは、何が原因なのだろう。翠と触れ合いたい。そして、ひとつに溶けてしまえたらいいのに。そうしたら、これから先もずっと離ればなれになることはないから。
どれだけの時間、そうしていただろう。カーテンを締め切った部屋は、外の様子が一切伺えなくて、天気も時間も分からない。身体を落ち着かせようと、ぎゅっと縮こまったときだった。
――帰ってきた!
外から物音が聞こえたわけじゃないけど、そう直感して心が震える。出迎えたいけれど、ここで抜け出したらせっかく完成したものを崩してしまう。どうしようと悩んでいる間に、ガチャッとドアの開く音がした。
急いでいる足音がその後すぐに聞こえてきて、寝室をバタンと開けられた。翠の服で周りを固めた僕を見て、目を見張る翠。何を言われるだろう、と気になっているのに、翠は口元を手で覆ったまま、声を発しなかった。
「……すい?」
「あ、あぁ、ごめんね。あまりにもかわいくて放心しちゃったよ」
「怒ってない?」
「怒るわけがないでしょ。最高の巣だね、陽」
最高だって、褒められた。
それが嬉しくって、幸せだなぁって、くふくふ笑っていれば、すっと体を持ち上げられる。
「翠?」
「んー」
「何で?」
「一緒にお風呂入ろっかなって」
「お風呂……」
「嫌?」
「……いやじゃない」
身に纏っているのは、翠のシャツだけ。一直線にバスルームへと向かった翠は、着替えに慣れているからか、自分のも僕のものも適当にぽいぽいと脱ぎ捨てて、あっという間に熱いシャワーを浴びせられる。帰りの車の中でスマホから予約したのだろう、浴槽にはたっぷりのお湯が溜まっていた。
立ったまま、後ろから翠に抱え込まれるような体勢にドキドキと心臓が逸る。鏡越しに見える翠は、少し疲れて見えた。その表情が憂いを帯びていて、いつもとのギャップにときめきが止まらない。
早く触れてもらえないかなって、期待してる自分を隠せない。後ろを振り返って潤む瞳で見上げれば、欲望を灯した瞳と目が合った。その瞬間、唇が重なる。柔らかい感触が気持ちよくて、もっともっとと欲張りに求めてしまう。力なく開いた口に舌が侵入してきて、僕の中を遠慮なく我が物顔で犯していく。
「んっ、……ふ、ッ、」
耐えきれずに声を漏らせば、翠の指がすりと項を撫でた。それに反応して勝手にびくんと身体が跳ねて、唇が離れてしまう。名残惜しい。もっと、したいのに。
「ん、翠、もっと」
振り返って、ぎゅうと翠の首に手を回してお強請りする。いつか離れる運命なら、思ったことをそのまま言った方が後悔しないと思った。
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