14 / 41
疾風の如く
1
しおりを挟む学生の本分である勉強。その最大の試練とも言える定期考査が終わり、次にやってくる大きなイベントはみんなが楽しみにしていた体育祭。応援団長の螺良を筆頭に、体育会系の部活に入っているクラスメイトは準備から熱が入っている。
「どうしよう、ねぇ委員長助けて」
「ん? どうした?」
放課後、応援団に参加していないメンバーで応援旗とクラスTシャツを作成していた。絵が得意じゃない俺が口出ししてもろくな事にならないと思ってアイデアが固まるまで傍観者に徹していると、困ったように眉を下げた女子生徒・絵上さんにこそこそと声を掛けられた。
美術部の彼女は制作のリーダーを任されていたはずだけど、どうしたんだろう。そう思っている間に、「ちょっとこっち来て」と人気のない廊下まで連れて行かれる。窓の外から、リレーのバトン渡しの練習で盛り上がる男子の声が聞こえてきた。
「急にごめんね。あの、クラスTシャツなんだけど、統一したデザインの中にワンポイントでイラストとかメッセージを入れようって話してたの」
「うん、それいいじゃん」
「ありがとう。で、自分で自分のを描いても面白くないから、クラスメイト全員でシャッフルして担当決めようってなったんだけど……」
そこまで話して、苦い顔をする絵上さん。すごくいいアイデアのはずなのに、どうしてそんな顔をする必要が? そう思ったけれど、すぐにその原因となったであろう顔が浮かんできた。
「……三枝か」
「はぁ……」
重たいため息は正解の証。
それだけで状況を察して、俺まで苦笑い。
「女の子たちがみんな『私が描く!』って取り合うから、喧嘩みたいになっちゃって。男子の前だとそうでもないんだけど、バチバチしてて正直怖い」
「あー……、想像できる」
「もういっその事、男子が三枝くんのを担当した方が丸いんじゃないかと思ったんだけど、それを彼女たちに伝えるのも怖くて」
この子が彼女たちにそう伝えれば、集中砲火を受けるのは分かりきった未来だ。どうすれば丸く収まるのか、二人でうーんと悩んでいれば、背後から低い声が降ってきた。
「こんなところで何してんの?」
振り返れば、いつもと違って仄暗い表情をした三枝が立っていた。花形のリレーと借り物競争に出るのを強制的に決められた三枝は、そっちの練習に参加していたせいか、少し髪が乱れている。
0
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる