神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜【完】

新羽梅衣

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神さまの思し召し

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 「だめ?」


 首を傾げて、あざとく強請られる。
 そんな顔をされたら全人類にクリティカルヒット。危うく絆されそうになるも、ぱっと脳裏に過去の記憶がフラッシュバックする。


 『気持ちいいね、紡』
 『だ、め……やだ、……ぅ、おねが、い……ぁ、ああッ、』


 必死に抵抗しても、鍛えられた肉体からは逃げられない。どれだけ泣き喚いて嫌がっても、許してはもらえない。

 そこに僕の意思なんて必要なかった。
 死にたくなるぐらい、無力な自分。


 『お前は人を不幸にする天才だよ』


 五年前に向けられた、言葉のナイフが胸を抉る。
 サーッと一気に血の気が引いて、身体の震えが止まらない。

 必死に忘れようと頑張って、やっと解放されたと思っていたのに。彼はいつまでも僕を縛り付ける。


 「紡?」


 突然様子がおかしくなった僕を心配そうに律が見つめてる。
 
 ……僕は汚い。
 そんな風に心配してもらえる立場じゃない。

 綺麗な律のことまで汚してしまう。この人が好きなら、近くにいたら駄目だ。


 「僕に触れないで」
 「どうして?」
 「…………」


 理由を口にすれば気持ち悪いと思うだろう。
 今日が終わればもう会うことはないけれど、ずっと憧れて、想いを寄せてきた相手に嫌われて終わるのは悲しい。

 どうか綺麗な思い出のままで、最後を迎えたい。

 だからこそ、沢山の人を感動させる歌声を放つ神さまの唇を僕なんかが汚すわけにはいかないんだ。

 「だめ、だから……」
 「俺は紡に触れたい」


 だけど、律も簡単には引き下がらない。
 どろりと甘ったるい熱を孕んだ瞳が、僕を射抜く。

 口元を抑えた手にぐっと力が入った。
 そうしてる間にも律がどんどん近づいてくる。

 逃れようとじわじわ後退るけれど、ソファの背もたれが背中についてしまったら、もうそれ以上は引き下がれない。

 だけど、僕には律を押し退けるなんてこともできなくて、ただ迫ってくる彼に首を横に振って拒絶の意を示すことしかできなかった。


 「紡がほしい」


 そう言った律が、断固として唇に触れることを許さない僕の手に口付ける。

 くらくら、目眩がする。
 なんだか溺れてしまいそう。


 「唇はだめ……」


 まるでうわ言のように言えば、冷たい手がTシャツの裾からするりと入り込む。


 「ひゃっ」
 「……かわいい」


 驚いて声を漏らせば、色気を溶かした瞳がギラギラと輝きを増す。どこかでスイッチの入る音がした。

 ゆっくりと腹筋を撫でながらさまよった指先は、火照った身体の熱を奪いながら次第に上昇していく。

 たったの指先ひとつで、もうどうにかなってしまいそう。触れられた部分だけに神経が通っているかのよう。

 時折身体をびくつかせながらも声を漏らさないように必死になっていると、律が首元に顔を埋める。


 「んっ」


 首筋にキスを贈られて、我慢できずに吐息混じりの甘い声が漏れた。

 それにぴくりと反応した律はTシャツから手を引き抜くと、ソファに全身を預けていた僕を何も言わずに抱え上げる。


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