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夢を見るのは貴方のとなりで
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しおりを挟む「こんなところで話す内容じゃないだろ」
「だって誰にも言えないし、奏に聞いてほしかったから……」
尻すぼみになっていくのを聞いて、ぐと言葉に詰まった奏は頭を掻いたあと、僕の頭をぽんと叩いた。
「別に先輩の件があったからって、お前自身が汚れたわけじゃない」
「…………」
「どんな過去があっても紡は紡、律もそれは分かってるだろ」
「……そうかな」
後から冷静になって考えてみたら、他の男に襲われかけた僕が気持ち悪くなったんじゃないかな。律が忙しくしていてなかなか連絡を取り合えないからこそ、ネガティブに考えるのを止められない。
想いを告げたあの日までは甘ったるかったのに、この間久しぶりに会ったら随分と淡白だった。手を出そうという気配すら無かったのだ。
正直、初めて出会った時がああだったから、すぐにシてしまうのだろうなと覚悟していたのに。律に会うならもしかしてと思って、慣れないなりに頑張って準備してたのに。
自分ばかりがしたくて、律はそんなつもりなかったんだ。なんとも言えないモヤモヤした羞恥心を抱えて帰る羽目になったことを律は知らない。
もともと女の人が恋愛対象の律は、そこまで望んでいないのかな。だって相手はあの東雲律だ。経験豊富、百戦錬磨なのは分かってる。
たとえスキャンダルが無かったとしても、彼のような魅力的な男を周りが放っておくわけがない。
律なら選び放題だし、どうせ抱くなら僕みたいなちんちくりんじゃなくて、綺麗な女性の方がいいよね。男同士って面倒だし。
それなら仕方ないと納得できる。律の隣にいられるだけで十分幸せだから、無理して抱いてもらうつもりはない。
ただ、僕ばかりが律とセックスしたいみたいで恥ずかしくて、ほんの少し寂しいだけ。
好きな人と繋がりたい。律に触れたいし、触れられたい。こんなこと、律と付き合うまでは考えることすら烏滸がましかったのに。僕なんかがそんな風に思うのはやっぱり悪いことなのかな。
独りよがりは嫌われる。
律に無理強いしたくない。
「律にもいろいろ考えてることがあるんだよ」
「うーん……」
「大事にされてるじゃん」
そう言われると何も返せない。
優しい律が僕の過去を気遣ってくれているかもしれないから。
「てか、そういうのは俺じゃなくてちゃんと本人に言えよ」
「でも……」
「大丈夫だから」
「…………検討する」
「はぁ、幼馴染のそんな話聞きたくないって」
少し耳が赤くなった奏を見て、僕はなんだかホッとした。先に大人になってしまったように感じていたけれど、そんなことはなかったかも。
「失礼なこと考えてる暇あったら、早くエントリーシート書けよ」
「……はい」
奏が付き合ってくれているうちにまずは目の前の敵をなんとか完成させないと。僕は顔を顰めながらペンを手に取った。
律には言えるわけないだろ。そんなことを思う。彼の優しさで抱いてもらうのは違うから。
もどかしくてたまらない。めんどくさいことを自覚しているけど、彼に求められて、同じ気持ちで同じ熱さで繋がりたかった。
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