神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜【完】

新羽梅衣

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夢を見るのは貴方のとなりで

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 ドームの一番上、所謂天井席。特別に用意してもらったその場所から僕らはステージを見下ろしていた。

 一番遠い場所だけど、ここなら他のファンの席を潰すことにはならないだろうとほっとした。そういうところを気にすると律は分かって、この場所にしてくれたのかもしれない。

 開演時間になり、会場内が暗転する。その瞬間、いよいよ始まると察した観客から声が上がって、一斉に立ち上がる音がした。

 画面越しに何十回何百回と観てきた光景が、今、目の前に広がっている。律のイメージカラーである青色のペンライトの海がとても綺麗で、僕はこの景色を忘れることはないだろうと思った。

 じーんと感動しながらオープニング映像を見終われば、いよいよスターの登場。キラキラの衣装を身に纏った律が空を飛んで現れる。スパンコールの煌めきが眩しくて、マントを翻す姿に惚れ惚れする。

 五万人の黄色い歓声を一身に浴びて、メインステージに堂々と降り立つ姿はまさにスーパーアイドル。


 「メリークリスマス」


 巨大モニターにアップで抜かれて、ウインクを飛ばしながらファンサービスする律。甘いキャラメルボイスがドームに響き渡ると、会場内は更に温度が上がる。

 せっかく用意したペンライトを振る余裕なんて全くなくて、律の一挙一動を見逃さないように目で追いかけることしかできなかった。

 キラキラの衣装、クリスマスらしい演出、ステージの構成、セットリスト、衣装替えの間に流される映像。その全てが律を輝かせるために用意された最高のもの。妥協なんて許されない、律のプライドがそこにはあった。飽きることなんて一切なくて、誰もが東雲律の虜になってしまう。
 
 曲が終わる度に終わりが近づいているのだと思うと寂しくて、MCの時間がやってくるともう折り返しまで来てしまったのだと悲しくなった。

 もっともっと、律のステージを見ていたい。
 心からそう思うのに、律との間にある距離を遠く感じて切なくなる。

 それでも楽しい二時間半はあっという間に過ぎ去って、アンコールが始まった。

 二日間に渡ったクリスマスコンサートを締めくくる最後の曲は、来年発売される新曲「僕の光へ」だ。律にしては珍しいアップチューンで、聴いた人全てを優しく勇気づけてくれる応援ソング。

 僕はこの光景を忘れないように最後まで目に焼き付けようと、ぐるりと花道を一周する律の姿を見つめ続けていた。

 バックステージでパフォーマンスするときや、フロートに乗って外周を一周するときもあったけど、律が近くに来るのはスタンド席の人にとって最後のチャンス。みんなペンライトをぶんぶん振って、律にアピールするのに必死だ。

 客席に手を振ったり、団扇に書かれた文字に答えながら歩いていた律がバックステージの中央で足を止める。

 ちょうど、目の前だ。
 世界で一番かっこよくて、いつだって輝いている、眩しすぎるひと。

 そんな大好きな人が「君は僕の光だ」とサビを歌いながら、天井席を見上げて指を差す。


 「……愛してる」


 サビ終わりに柔らかい笑みを浮かべた律はそう言うと、再び足を動かし始めた。

 一呼吸置いた後、会場が揺れる。間違いなく、今日一番の盛り上がりだった。
 
 今は遠い場所にいるけれど、自意識過剰ではなく、僕に向けた言葉だと伝わった。こみ上げてくるものを抑えきれず、ぐしゃりと顔を歪ませる。


 「……遠いね」
 「今は、だろ」


 ぽんぽんと優しく背中を叩いてくれる奏。最後まで見ていたいのに、視界がじんわりと滲んでぼやけてしまう。瞬きをすれば、涙がこぼれ落ちた。

 五万人を熱狂の渦に巻き込んでしまうスーパーアイドル。そんな貴方に夢を見てしまったんだ。

 ――一度でいいから、彼の隣に立って歌いたい。
 あの頃抱いた夢はずっと、心の奥底で眠ってる。

 今はまだ見合った人間になれていないし、自信もない僕だけど。夢を叶えるなら貴方の隣がいい。手を振ってステージの裏に下がる律を見つめながら、静かに火が点るのを感じていた。


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