神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜【完】

新羽梅衣

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一番星は泡沫を泳ぐ

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 ……狡い男だ。
 僕ばかり甘やかされて、たくさんのものを貰っている。

 モヤモヤと考え込んでいるとつい長湯になって、律が待っているんだったと慌てて浴室を出た。若干逆上せ気味だ。

 いつも借りているバスタオルで体を拭いてから気がつく。ぼーっとしていたせいで、部屋に服を置きっぱなしにしてきてしまった。

 下着は脱衣所にしまっていたから穿いたけれど、どうしようと悩む。

 すると、邪な心が僕に囁いた。この姿のまま、律の前に出れば流石に手を出してくれるんじゃないか。……律にその気があればの話だけど。

 肩からかけたバスタオルをぎゅっと皺になるほど握りしめる。何もしなくていいと言われたけれど、律にしてもらってばかりな自分から卒業したかった。

 ぽたり、少し伸びた前髪から雫が落ちる。
 数分考え込んで、ようやく決心した。
 ゆっくりとドアを開いて、躊躇いがちに一歩を踏み出す。

 バスタオルをかけているし、暖房もついているとはいえ、肌寒くて鳥肌が立つ。それでも歩くスピードを速めることができないのは、躊躇いがあるから。

 少し悩んでリビングのドアを静かに開ける。僕に気が付かなければいいのに、なんてめちゃくちゃなことを思ってしまう。

 だけど、律はすぐに物音に気がついてこちらを振り返る。バスタオルを羽織って、下着しか穿いていない僕を確認した律は驚きに目を見張った。


 「……服、忘れていったんだね。気づかなくてごめん、すぐ用意するから」


 ごくりと生唾を飲み込んだ律は動揺を隠すようにすぐに笑顔を貼り付けると、ソファから立ち上がった。そして寝室に向かおうと、僕を見ないようにして足早に隣を通り過ぎていく。

 あ、失敗した。
 すぐにそう悟って、絶望する。

 変態だと嫌われたのかもしれない。ぐしゃぐしゃに心が崩れていく。ぼたぼたと涙が溢れてくるけれど、拭う気にもならない。

 律と想いが通じ合ってから、自分でも知らなかった僕がどんどん顔を出す。悩んで傷ついても、そんな自分を消せなくて、やり場のない状況に苦しんでる。

 ふらと足から力が抜けて立っていられない。その場にへにゃへにゃとしゃがみこんだ。頭からバスタオルを被ってしまえば、世界を遮断したように思えていくら泣いても許される気がした。


 「あったよ、紡……、紡?」


 背後から声をかけられるけれど、何も反応できない。肩が勝手に震えてる。僕の異変に気がついて、駆け寄ってくる気配がした。

 ぼろぼろと大粒の涙を零すのを確認した律は目を丸くした。


 「紡、どうしたの」
 「……っ」


 あまりにも優しい声色で名前を呼ぶから、声にならない嗚咽が漏れた。


 「ど、したら、いいの」
 「ん?」
 「……りつは、ぼくと、したくない?」


 嗚呼、言っちゃった。泣きすぎて目が痛い。自暴自棄にも似た気持ちで口を開けば、八つ当たりのようになってしまって、すぐに後悔が顔を出す。

 はっきりとセックスしたいとは言えなくて、曖昧に濁した言葉の意味を正確に理解した律は、浮かべていたよそ行きの柔和な笑みを消す。そして瞳に青い炎を燃やして、ぐずぐずと鼻を鳴らす僕に問いかけた。


 「……俺でいいの?」
 「律じゃなきゃ、やだよ」


 縋るように律の服の裾をきゅっと掴んだ。ぎらぎらと更に炎が燃え上がる。

 答えを聞いた律はそれ以上何も言わずに簡単に僕の体を抱え上げると、寝室のベッドに優しく下ろした。


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